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第12回大阪アジアン映画祭 [アジア総合]

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第12回大阪アジアン映画祭 (3/3~3/12)

観たい作品の上映時間が被ってしまって満足のいくセレクトにならなかったけど、個人的ベスト5は、『インターチェンジ』『世界の残酷』『暗くなるまでには』『隠されていたこと』『バードショット』。


【2017年3月8日(水)】
昨日は大阪アジアン映画祭で、アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督『暗くなるまでには』、魏徳聖監督『52Hz I LoveYou』、黄進監督『一念無明』を観てきた。
やっぱり、来てしまいました。


『暗くなるまでには』アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督

女性監督は70年代の学生運動の元活動家の映画をとろうとしている。映画に関わる人々から連鎖し、浮かびあがるタイ社会。現在の政治状況に影を落とす血の水曜日事件(タマサート大虐殺事件)の表象の可能性を問う。寂しげにそしてクールに聞こえる古いルークトゥンの歌声。

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『52Hz I Love You』魏徳聖監督

バレンタインデーに起こる悲喜こもごも。まさかのミュージカル仕立てだった。きっと誰か書いてると思うけど、「ラ・ラ・台湾」という感じなのかな。音楽が良かったので最後まで完走できた。

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『一念無明』黄進監督

躁鬱病を患い入院していた元金融アナリストが、トラックの運転手の父親の元に。彼らには死んだ母親に対するわだかまりがあった。感情吐露のセリフが少々くどく感じる部分もあるけど、俳優人の妙味と、香港の落ち着いた街並みが良かった。重い内容だが質感は好みだ。
(→『誰がための日々』のタイトルで劇場公開された)

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【2017年3月09日(木)】
昨日はマレーシア・デーで、シンポジウム、エイドリアン・ティ監督『負け犬の大いなる煩悩』、何宇恆監督『ミセスK』、サンジェイ・クマール・ペルマル監督『世界の残酷』を観て来た。


『負け犬の大いなる煩悩』エイドリアン・ティ監督

同級生の結婚式で泥酔した林一白は、1999年へ高校時代へタイムスリップ。人生やり直して売れっ子シンガーソングライターになるが、大切なものに気づく。大陸映画のリメイクだが、抱腹絶倒のコメディだった。ソックリさんたち、陶喆の曲が懐かしく、心くすぐられた。

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『ミセスK』何宇恆監督

医師の夫(伍百)と1人娘と優雅に暮らすミセスK(恵英紅)。彼女が過去に関わったマカオでのカジノ強盗の因縁から、ある日、娘が誘拐されてしまう。うーむ。任達華との腐れ縁的背景は良いけど、表層のアクションが…。『キル・ビル』への目配せとか、凡庸な香港映画に見えてしまう。
裏プログラムの『私は藩金蓮じゃない』と散々迷った末に観ただけあって、がっかり感。

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『世界の残酷』サンジェイ・クマール・ペルマル監督 ☆

'91年マレーシア北部。ラジニの映画が好きなタミル系少年アポイは、教師や父親に厳しく折檻されながらも夢想することをやめない。ヤクザ組織に所属する叔父(通称メキシコ)ともう1人の叔父に惹かれているが…。抑圧されるタミルの歴史と暴力が生み出される心の魔に迫った秀作。

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【2017年3月10日(金)】
デイン・イスカンダル・サイード監督『インターチェンジ』、マリオ・コルネオ監督『黙示録の子』、TIFFで見逃したミカエル・レッド監督『バード・ショット』を観て来た。『インターチェンジ』、素晴らしかった。これだけで来た甲斐があった。

『インターチェンジ』デイン・イスカンダル・サイード監督 ☆

別枠で書きました。

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『黙示録の子』マリオ・コルネオ監督

サーフィンインストラクターのフォードは、自分が『地獄の黙示録』で撮影に来たコッポラ監督の間にできた子供だと幼い頃から母親に聴かされていた。恋人フィオナときままな生活を送っている。幼なじみのリッチはかつて兄弟のように仲が良かったが、今ではフィアンセのセリーヌを連れ、資産家で地元名士の父親の跡を継ごうとしていた。主人公の出自をめぐる物語だが、心情の吐露は少なくドライで、フィッツジェラルドの小説のような佇まい。サーフィンのメッカ・バレルのビーチ周辺の風景が心地良い。

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『バード・ショット』ミカエル・レッド監督

父ディエゴと暮らしている少女マヤは、父から猟銃の撃ち方を教わっているものの、上手く獲物を仕留めることができないでいる。ある日、立ち入り禁止区域に足を踏み入れたマヤは、その場所がフィリピンワシの保護区であること知らずに絶滅危惧種のフィリピンワシを撃ってしまう。一方、警察官のメンドーサとドミンゴは、農民を乗せて消えたマニラ行きバスの行方を追っていた。事件の手がかりを掴みかけたところに、上司から妨害があり、フィリピンワシを撃った犯人を捜せと配置転換させられる。2つの事象が背後にある闇を浮かびあがらせる。ラストシーンは実に映画的だが、全体としてもっとスリリングな展開にしてもいい気がする。

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【2017年3月11日9(土)】
今日はブラッドレイ・リュー監督『墓場にて唄う』、デレク・ツァン監督『七月と安生』、ビジェイ・シャヤパル監督『隠されていたこと』、これからUpi監督『うちのおバカ社長』+受賞式。


『墓場にて唄う』ブラッドレイ・リュー監督

伝説のロック歌手ジョーイのものまね歌手として生きる68歳のぺぺ。バーなどで歌いながら細々と暮らすが、ある日、マネージャーからジョーイの復活ライブの前座の仕事を持ちかけられる。ぺぺは自分がこれまでやらなかったラヴソングを書こうとするが…。
モノマネ歌手を伝説のロック歌手本人が演じるという二役の妙技。マネージャーにラヴ・ディアス監督、息子役に元Eraserhedsのエリーの布陣。フィリピンロックファンは堪らないはず。夢と現実、老いと死。燃える霊柩車が印象に残る。

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『七月と安生』デレク・ツァン監督

上海に住む李安生のもとに、ある日、映画会社からネット小説『七月と安生』を映画化したいので、作者の林七月の行方を問う連絡が入る。安生が初めて七月と出会ったのは13歳の時。正反対の性格に惹かれ合い、やがて親友となっていく。安生は流浪の旅へ、七月は大学へ進学。しかし二人の友情は、七月の同級生・蘇家明の登場によって崩れ始める。ありがちな物語展開だなと思うものの、ラストは静かに泣かせられるのは力量か。旅のシークエンスと安生役の周冬雨(酒井若菜似)がやけに印象に残った。

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『隠されていたこと』ビジェイ・シャヤパル監督 ☆

コルタカに引っ越してきたタミルの男マノーハルとその母親らしき車椅子の女。男は露天で本を売る仕事をもち(かつて小説を書いていた)、母親の面倒を観てくれる家政婦を捜してる、と隣に住む女性ショーバに相談すると、私が、と立候補する。彼女もチェンナイ出身のタミル人。ショーバの夫ショカールは仕事仲間の若い女ディヴィヤと関係を持ち、実は夫婦間は冷えきっている。マノーハルとショーバは次第に惹かれ合って行くが、マノーハルは踏みこめず身を引きギクシャクする。男の過去が露になり、そしてショーバの決断を促す。ドラマ、ミステリとしても秀逸。コルカタを舞台にしてるところも良い。ディヴィヤの女性像はやはりカーリー神の投影だろう。
(→Netflixで配信 https://www.netflix.com/jp/title/70155788)

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『うちのおバカ社長』Upi監督

クアラルンプールに転居したディアナは、夫ディカの紹介である会社に就職するが、人の話を聞かず、ワンマンの不条理社長に振り回されストレスで爆発寸前。しかし、夫のアドバイスで社長と対決姿勢で挑む。社長役のレザ・ラハディアンの芸達者ぶりに笑う。ただストーリーがイマ一つでもう少し凝ってくれたらと思う。

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【受賞結果】
●グランプリ
『一念無明』ウォン・ジョン(黃進)監督
●来るべき才能賞
フィッシュ・リウ(廖子妤)『姉妹関係』女優
●スペシャル・メンション
『暗くなるまでには』アノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督
●JAPAN CUTS Award
『恋とさよならとハワイ』まつむらしんご監督
●ABC賞
『七月と安生』デレク・ツァン(曾國祥)監督
●薬師真珠賞
イザ・カルサド 『至福』女優
●観客賞
『29+1』キーレン・パン(彭秀慧)監督

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