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象は静かに座っている [中国]

大象席地而坐.jpg

『象は静かに坐っている』[大象席地而坐]胡波(フー・ボー)監督

河北省・石家荘。友人カイ(黎凯)を庇い、殺人の汚名を着せられたブー(韋布)は満州里を目指し逃避行を試みる。ブーと彼に関わる行き場のない絶望を抱えた4人(韋布ブー、于城カン、黄玲リン、王金〜老人)の一日を描く群像劇。1シーン1 カット、背中を追うカメラ、登場人物のすれ違う動線、DOFのさじ加減、会話の噛み合せ等、非常に練られた演出だ。

中国社会の負の連鎖と出口の見えない閉塞感が執拗な繰り返しで、見事に表現されていた。夕闇迫る中の決定的なシーン、バスのライトに照らされ羽根蹴りをする美し過ぎるラスト。満州里にいるサーカスの象が意味することとは?友人のキャラや「不信」のテーマに『牯嶺街〜』を見いだすのは容易だが、29歳の新人監督がそれを超えようともがいた痕跡は忘れまい。(胡波監督の書いた原作小説は台湾が舞台だったと聞く)



もはや伝説的な映画になってしまった。
胡波監督は本作の完成前に自死する。ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞、 金馬奨では作品賞・脚色賞・観客賞をトリプル受賞するが、監督がその結果を知ることはなかった。彼がなぜ死を選んだのか本当の理由はわからないが、実に、実に惜しい才能を亡くしたと思う。

この傑作がビターズ・エンドで配給されると知ってとても喜んだのだが、もうひとつ興味深いニュースを目にしていた。プロデューサーであるあの王小帅(ワン・シャオシュワイ)監督との確執を報じた記事だ。
王監督は胡波監督とトラブルになり、彼を追いつめたと噂されている。僕は王小帅監督作品も好きなので、このトラブルの話を読んだ時は複雑な思いだった。
ビターズ・エンドは王小帅監督の新作『地久天長』も購入したという。王小帅監督の『ルアンの歌』('98)も配給してるので、この事実は特に驚くことではないし、『象』の購入もその下地があってこそなのかもしれない。
ひょっとしたら王小帅監督から事の真相を聴ける機会があるのだろうか。




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