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インターチェンジ [マレーシア]


Interchange Official Malaysia Trailer


●『インターチェンジ』l[IINTERCHANGE]デイン・イスカンダル・サイード監督

第12回大阪アジアン映画祭で最も印象的だったのは、デイン・サイード監督の『インターチェンジ』だった。
連続猟奇殺人事件の手がかりが、骨董品でもある古い写真のガラス乾板で、そこからアジアの古層に分け入って行く様は、観ていてゾクゾクする展開だった。あまり話題にのぼらなかったのが不思議だが、例えば、諸星大二郎のマンガ世界が好きな人は絶対に楽しめると思う。
実は観てからだいぶ歳月が経って書いているので、かなり記憶も怪しいのだが、何とかあらすじと気づいた点を書き留めてみる。

関連記事→『Bunohan』https://e-train.blog.so-net.ne.jp/2013-05-29





サバ州出身の法医系カメラマン・アダム(イーディル・プトラ)は刑事マン(シャヘイジー・サム)の依頼で連続猟奇殺人事件の捜査に関わる一方で、隣のビルに越して来たボルネオ出身のシャーマン・イヴァ(プリシア・ナスティオン}に惹かれていく。(アダムは無機質な自室から向かいのイヴァの部屋を盗撮しているのだが、まるでヒッチコックの『裏窓』のような導入だ。そして『鳥』のイメージへ。)
殺人現場に残された古い写真のガラス乾板に触れるとめまいを起こすアダム。ダウンタウンの写真館、サニという女主人の骨董品店をめぐり、そのガラス乾板が1915年に出版された『中央ボルネオを通って』という本の中におさめられてている写真の原板で、50年以上前に絶滅したとされるティンガン族の人々を写したものだとわかる。(ちなみにティンガン族は実在した部族ではなく監督の創作である)

写真館に出入りしていたイヴァはアダムに接触して言う。「<私たち>は長寿の部族なの。呪いのせいかしらね」「私は100歳、あの本に載ってる部族で囚われの身なの」アダムの意識は100年前のボルネオのダヨンという土地へ。そこでアダムは目撃する。ティンガン族の人々が入域者のカメラによって写真を撮られると、人々は鳥(オナガチョウ)になり、大判カメラの上にへばりつく。とても奇妙で幻想的なシーンだ。

一方、ベリアンと言われるフードをかぶった謎の男(ニコラス・サプトラ)は、そのガラス乾板を集めていた。それは「儀式」に必要だったのだ。殺されていった人物はどうやらティンガン族の関係者のようだった。骨董店の女主人サニは次に殺されるのは自分だと、マン刑事に伝えていた。アダムはイヴァ、サニとともにあるビルの一室に集まる。そこでベリヤンが異形の鳥に変身する姿を目撃する。「これはお前の物語だ」とベリヤンはアダムに言う。
刑事マンにその場を踏み込まれ、逃げる一行。刑事はベリヤンに銃弾を放つが、彼は死なず、すぐ蘇る。イヴァはアダムに言う「呪いをかけられていたの。私たちは写真に魂を抜かれると信じていたの。実際、抜かれたわ」

アダムが警察の保管室から押収されたガラス乾板を持ち出したことに気づき、アダムの部屋を訪れたマン刑事は、そこで彼が盗撮したイヴァの写真を見る。
アダムとイヴァは地下水道をつたって郊外の森の中へ逃げる。イヴァはナイフ状のものをアダムに手渡す。「全てが変わった。でも私たちは昔のまま」とイヴァ。「家に帰りたい」とアダム。
「私たちを許して。私たちのせいでこの世界に囚われた…。」ベリアンは鳥になっていて、イヴァと抱き合う。そこへマン刑事が銃を構え、近づいてくる。
アダムとイヴァは絶命し、彼らの魂は鳥になったベリアンとともに昇天していく。



冒頭に変死体が見つかる「エデン」というライブハウスが登場し、アダムとイヴァの名前からもわかる通り、失楽園という現代から楽園へ回帰しようとする少数部族の神話的物語として描いてるようだ。現代人からすると、写真によって魂を奪われ、死ぬことができないヴァンパイアともいう言い方もできる。「写真こそ人類の黒魔術だ」というセリフがあったと思うが、そこには少数部族を絶滅に追いやった文明批判があるとともに(実際、写真は未知への土地への欲望を駆り立てたり、プロパガンダ機能を持っていた)、イメージに閉じ込められた魂=現代のイコンである映画、をも自省的に捉えているのがユニークだ。「鳥」というのは古来から魂・生命の象徴とされてきた。幻想シーンでカメラにへばりついた鳥たちが、写真に撮られたティンガン族の人々の魂を示しているのが面白い。ニコラス・サプトラ演じるベリアンという鳥の怪物は、そういった生命を采配する自然神のような存在だろう。




Through Central Borneo: An Account of Two Years' Travel in the Land of the Head-Hunters between the Years 1913 and 1917 (Cambridge Library Collection - Travel and Exploration in Asia)

Through Central Borneo: An Account of Two Years' Travel in the Land of the Head-Hunters between the Years 1913 and 1917 (Cambridge Library Collection - Travel and Exploration in Asia)

  • 作者: Carl Lumholtz
  • 出版社/メーカー: Cambridge University Press
  • 発売日: 2012/04/26
  • メディア: ペーパーバック


劇中にも登場したノルウェーの探検家で民俗学者のカール・ルムホルツ (1851–1922) による1920年に出版された『中央ボルネオを通って』。2冊組の大著らしい。ルムホルツはカニバリズムやメキシコ研究で有名らしいが、彼の最後の遠征が1913~17年の4年間に渡るボルネオ島の調査だったという。主に首狩り族に関するものだったらしい。写真もイラストもふんだんにのってるようだ。


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