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31st TIFF [アジア総合]

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第31回東京国際映画祭 10.25(木)– 11.3(土)

アジア映画に関してはすごく観たいと思っていた作品がラインナップされず、肩すかし。バイガジンと陳果(フルーツ・チャン)が救いだった。ワールド規模でみたら、ランティモス、キュアロン、レイガダスなどラテンアメリカ勢の旬な監督が充実していた。(『ローマ』は瞬殺で売り切れ、チケットとれず→のちに劇場公開で観た)

31st TIFF個人的ベスト10は『ザ・リバー』『詩人』『ホワイト・クロウ』『三人の夫』『悪魔の季節』『武術の孤児』『堕ちた希望』『われらの時代』『女王陛下のお気に入り』あたり。





【2018年10月25日(木)】
新宿K’sシネマでランジャン・パリット監督『イン・カメラ』。トークはパスして六本木へ移動。TIFF1本目、グエン・グアン・ズン監督『輝ける日々に』(『サニー』ベトナム版)を観て来た。


●『輝ける日々に』グエン・クアン・ズン監督
CROSSCUT ASIA #05


【2018年10月26日(木)】
今日も六本木で31st TIFF 2日目。『墜ちた希望』(イタリア・コンペ)、『プロジェクト・グーテンベルク』(香港)、『海だけが知っている』(台湾)、『武術の孤児』(中国)を観た。どれもなかなか良かった。


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●『堕ちた希望』エドアルド・デ・アンジェリス監督

マリアは乳児売買組織で代理母たちの管理している。ある妊婦が逃げ出すと血眼で探していたが、マリア自身の妊娠が発覚すると心境の変化が…。ナポリ郊外の無法地帯で「忘れられた人々」の聖書の物語が紡がれる。独特の世界観、アフリカンコミュニティ〜音楽の絡みが良い。賞に絡むか留保。 https://pic.twitter.com/8PzvD8sNQK


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●『プロジェクト・グーテンベルク』フェリックス・チョン[莊文強]監督

贋作画家としてくすぶっていたレイは”画家”と呼ばれる男にニセ札作りのメンバーにスカウトされ…。流石にネタバレできないけど、周潤發(チョウ・ユンファ)の貫禄の演技と二丁拳銃にただただシビレる。ちょっと胸熱。10年前に脚本は出来ていたと語る監督。 https://pic.twitter.com/oivikG5k0h


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●『海だけが知っている』ツイ・ヨンフイ[崔永徽]監督

蘭嶼。小学生のマナウェイは祖母と一緒に住んでいる。高雄に出稼ぎに行っている父親が帰ってくるのを心待ちにしている。新任教師の指導でタオ族の踊りを学ぶことに。『美麗時光』に似たシーンもあったり、結構泣かされる。祖母役も印象的。蘭嶼の場所を説明する主演ジョン君。 https://pic.twitter.com/kKa4ixljkw


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●『武術の孤児』ホアン・ホアン[黄璜]監督

河南省・少林寺近くにある 止戈武術学校。叔父のツテで国語教師の職に就いた陸有鴻(羽生善治似)は、校風に戸惑いながら脱走を繰り返しいじめにあっている生徒ツイシャンを気にかけるが…。緩い笑いと美的センスがツボにハマる。色々風刺めいてる感じもする。 https://pic.twitter.com/jdF4QEXKyg


【2018年10月27日(土)】
今日も31st TIFF 3日目。『世界の優しき無関心』(カザフスタン)、『詩人』(中国・コンペ)、『母との距離』(フィリピン)、ガリン・ヌグロホ監督『めくるめく愛の詩』(インドネシア)を観て来た。『詩人』は賞に絡むかもしれないですね。(→絡まず)


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●『世界の優しき無関心』アディルハン・イェルジャノフ監督

死んだ父親の借金のため身売りに出された良家の娘サルタナット(マンディ満ちる似)と使用人クアンドゥクは、直面する現実に抗うが…。画が非常に凝っていて、乱闘シーンの見せ方とか新鮮。花の性的な隠喩からラストの生命の樹まで、カザフの神話的要素もありそう。


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●『詩人』リウ・ハオ(劉浩)監督

褐家山の炭鉱で働く詩人の李五と妻の陳蕙は仲睦まじい夫婦。しかし張目という革命家詩人が上司に赴任してから、夫婦の関係は壊れていく。窓枠を多用した精緻な画面と炭鉱の雄大な風景。硬質なドラマに宿る情念と毛糸のパンツ。移り変わる時代の中でボタンをかけ違えた男女の切ない愛を描く。


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●『母との距離』ペルシ・インタラン監督

リサは別居中の夫に促されて、5年ぶりに子供たちのところへ戻ってくる。しかし大学生の長女はそれを受け入れることができない。長女の恋が始まろうとした時、母親リサの過去が語られる。静かで冷ややかなトーン。LGBTQ関連も。監督と迫真の演技を見せた長女役の女優さん。 https://pic.twitter.com/MD0d60YIct


【2018年10月28日(日)】
31st TIFF 4日目。バイガジン監督『ザ・リバー』(カザフスタン・コンペ)、オムニバス『十年 Ten Years Thailand』(タイ)、『世界はリズムで満ちている』(インド)、陳果(フルーツ・チャン)監督『三人の夫』。今年の一本は今のところ『ザ・リバー』かな。


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●『ザ・リバー』エミール・バイガジン監督

社会から隔絶された荒野に住むアスラン、イェルラン、トルラン、ムラト、ケンジェの五兄弟と両親。夏の暑い時期、厳格な父親のいいつける仕事をこなす一方、近くにある川で水遊びをする。ある日、街からいとこのカナットがタブレット機器と共に現れると、兄弟の間に波紋がひろがる。
ウェーバーやホックニー、あるいは植田正治の写真を思わせる少年たちの身体と大自然の風景。シンプルながら力強く美しい画に圧倒された。カナットはマレビト信仰的な存在に見えるが、ロシア語話者でもあり、寓意の想像が広がる。QAのバイガジン監督、ロックスターに見えた。 https://pic.twitter.com/CKyBOYXkkC


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●『十年 Ten Years Thailand』オムニバス
アーティット・アッサラット、ウィシット・サーサナティヤン、チュラヤーンノン・シリポン、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督

ギャラリー展示に難癖つける軍・警察と恋の行方「サンセット」(アッサラット)。猫人間の支配する世界「キャットピア」(ササナティアン)。女性リーダーが洗脳支配する「プラネタリウム」。元軍人サリット・タナラットの像が立つ公園に集う「Song of the city」(アピチャポン)


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●『世界はリズムで満ちている』ラージーヴ・メーナン監督

観る前はドキュメンタリーかと思っていたが、ドラマだった。虚実皮膜的な部分もあるけど。
ビジャイ・ファンのピーターは、あるきっかけでカルナティック音楽に目覚め、ムリダンガムを習うため弟子入りする。しかし、兄弟子の嫉妬に会い、一度は演奏家の道を絶たれてしまう。ダリットへの偏見・差別が描かれている。シタール習った時のこと思い出しながら観た。


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●『三人の夫』フルーツ・チャン(陳果)監督

メガネ男は猛烈なアタックの末、船上で娼婦として暮らす小妹と結婚するが、彼女には既に老大(実父で赤子の親)と老二という2人の夫がいて…。盧停の人魚伝説を絡め、香港という地の混血性を表しているのか。小妹役 クロエ・ヤーマンの存在感凄く、まるでジュゴン。蔡明亮『西瓜』今村『赤い橋〜』も想起。 https://pic.twitter.com/rZbJvjLlVF


【2018年10月29日(月)】
31st TIFF 5 日目。『音楽とともに生きて』(カンボジア)、『Brother of the year』(タイ)、『はじめての別れ』(新疆ウイグル/中国)、『テルアビブ・オン・ファイア』(イスラエル・コンペ)。『テルアビブ〜』のQAゲストが劇中の意外な人物で会場が湧いた。粋な計らいだと思う。体調絶不調で風邪ひいた。


●『音楽とともに生きて』ヴィサル・ソック、ケイリー・ソー監督
CROSSCUT ASIA #05

●『ブラザー・オブ・ザ・イヤー』ウィッタヤー・トーンユーヨン監督
CROSSCUT ASIA #05


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●『はじめての別れ』リナ・ワン[王丽娜]監督

新疆ウイグル自治区シャヤール。病気の母親の面倒を見ながら牧羊などの仕事をこなす少年アイサと幼なじみのカリビヌールと弟。彼らの家庭事情や暮らしぶりを中国社会の厳しい現実の中に描く。ドキュメンタリーかと見紛う子供たちの演技が良い。龍印つきなので想像力も必要なのかな https://pic.twitter.com/jjSEEMTWjt


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●『テルアビブ・オン・ファイア』サメフ・ゾアビ監督

メロドラマのスタッフに就いたアラブ人のサリムは、通勤途中にある検問所のイスラエル軍人に目をつけられ…。脚本作りの苦労話を描くコメディだが、イスラエルとパレスチナの状況を見事に盛り込んでいるのが秀逸。思わぬ顚末に笑った。フムス料理の背景なども面白い https://pic.twitter.com/90SMZnocHQ


【2018年10月30日(火)】
31st TIFF 6日目。レイフ・ファインズ監督『ホワイト・クロウ』(イギリス・コンペ)、『シレンズ・コール<』(トルコ・コンペ)、ラヴ・ディアス監督『悪魔の季節}』。これで峠は越えたのか?


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●『ホワイト・クロウ』レイフ・ファインズ監督

1961年、キーロフ・バレエ団・戦後初の西側公演の一員としてパリにやってきたルドルフ・ヌレエフ。彼が亡命に至るまでの半生を描く。芸術の至高を求め、周囲との軋轢を厭わない若き天才ダンサーを抑制の効いた演出でみせる秀作。秘められた性、緊迫の亡命劇の描き方も良かった。


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●『シレンズ・コール』ラミン・マタン監督

タフシンは大事な会合をすっぽかし、バーでシレン(ギリシャ神話に出てくるサイレーンと同名)という女と出会う。その事で妻の義父の企業から追われ、携帯もカードも使えなくなる。彼はシレンに助けを求めようとするが…。再開発の進むイスタンブールでトルコ行進曲の不協和音。


●『悪魔の季節』ラヴ・ディアス監督
CROSSCUT ASIA #05


【2018年10月31日(水)】
31st TIFF 7日目(水曜日)。『トレイシー』(香港)、『ソン・ランの響き』(ベトナム)、『大いなる闇の日々』(カナダ・コンペ)、『まったく同じ3人の他人』>(アメリカ)。


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●『トレイシー』ジュン・リー[李駿碩]監督

眼鏡店を営む51歳の佟大雄は妻子に恵まれて暮らしている。ある日、かつて親友で初めて愛した男・高正が亡くなった知らせを受ける。ロンドンから正の恋人が散骨しに香港へ。彼に促され、佟大雄はずっと押し殺していたものを解放する。トランスジェンダーの心のひだを丁寧に描いた良作。


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●『ソン・ランの響き』レオン・レ監督

80年代後期のホーチミン市。高利貸の取り立て屋ズンは、債務先のカイオルン劇団の俳優リン・フンがチンピラに絡まれたのを助けたことから、友情が芽生える。色香のある街の風景とのズンの弾くソンランの音色。ファミコン対戦。『ミーチャウとチョン・トゥー』の演目は大入りに。
切ない結末だが、きれいにまとまってアッサリしてる感もあるので、もう少し裏社会の怪しさや、ホモソーシャル感、あるいは同性愛感あっても良かった。


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●『大いなる闇の日々』マキシム・ジルー監督

第二次対戦中。チャップリンのモノマネ芸人フィリップは、謎のグループに連れ回され不条理な虐待を受ける。チャップリンがハリウッドを追い出された経緯を思いださせる。米国200年の暴力装置は今なお健在で、ラッキーストライクを売る口うるさい若い男はドナルドTに見えた。


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●『まったく同じ3人の他人』ティム・ウォードル監督

ドキュメンタリー。大学の入学時に自分とそっくりな顔がいると教えられたボビーは存在を知らなかった双児のエディと19年振りに再会する。これが話題になると、さらにデイヴが。彼らは三つ子で、生後別々の家庭の養子になっていた。だが、その裏には闇が隠されていた。意外な展開に唸った。


【2018年11月01日(木)】
31st TIFF 8日目。(個人的最終日)。オムニバス『それぞれの道のり』(フィリピン)、レイカダス監督『我らの時代』(メキシコ)、『ヒズ・マスター・ボイス』(ハンガリー)、ランティモス監督『女王陛下のお気に入り』。疲れ果てた。


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●『それぞれの道のり』
ブリランテ・メンドーサ、ラヴ・ディアス、キドラット・タヒミック監督

炭坑労働者3人が森の中を旅する中で起きた出来事「Hugaw」(ディアス)。ミンダナオ島スミラオの農民が土地返還のため50日間1700キロのデモ行進をする「Defocado」(メンドーサ)。息子家族とともに愛車シャンバラヤ号に乗ってダバオへ「Lakan Ni Kabunyan 」(タヒミック)。
いつも通りイフガオ族のふんどし姿のタヒミック監督と息子ガブニャンさん、そしてメンドーサ審査員長のトークの様子。 https://pic.twitter.com/q7GtcKsPGC


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●『われらの時代』カルロス・レイガダス

詩人であり牧場経営をするファン(レイガダス監督本人)は妻エステルの不貞に理解を示しながらも葛藤する。ジョセフ・コンラッドの引用、人間とバッファローの群れ・オス同士の闘争が対比される。前作のマジックリアリズム?的な方法は影を潜め、『日はまた昇る』なんかを想起した。


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●『ヒズ・マスターズ・ボイス』パールフィ・ジョルジ監督

ハンガリーに住むペーテルと弟は米国のXファイル番組の中に共産主義時代に失踪した父親を発見。ついに父親とその家族に再会を果たすが、人体消失〜大量破壊兵器に携わっているのではないかとの疑念に、父親は否定する。宇宙からの接触に関する研究をしていたと言う。
しかし、まもなく父親は何者かに暗殺されてしまう。東西冷戦時代にパラレルに存在する二つの家族と宇宙の類似した人物たち。スタニスワス・レム『天の声』の翻案。まだ飲み込めてない所あるが、ミステリー展開とデジタルアート表現を楽しんだ。


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●『女王陛下のお気に入り』ヨルゴス・ランティモス

ルイ14世の仏国と戦争中の英国。気まぐれなアン王女を操るレディ・サラの所へサラの従妹で没落したアビゲイルが召使いとしてやってくる。彼女は生き残りをかけた野心があって…。ランティモスにしてはかなりエンタメしてるけど、政治・権力闘争を描く点は一貫してるのかな。アルベルト・セラ監督『ルイ14世の死』と合わせて観たい。JPレオーが名演だった。(→劇場公開)

【受賞結果】
●東京グランプリ/東京都知事賞
『アマンダ』 監督: ミカエル・アース
●審査委員特別賞
『氷の季節』 監督: マイケル・ノアー
●最優秀監督賞
エドアルド・デ・アンジェリス監督(『堕ちた希望』)
●最優秀女優賞
ピーナ・トゥルコ(『堕ちた希望』)
●最優秀男優賞
イェスパー・クリステンセン(『氷の季節』)
●最優秀芸術貢献賞
『ホワイト・クロウ』 レイフ・ファインズ監督
●最優秀脚本賞 Presented by WOWOW
『アマンダ』 監督: ミカエル・アース
●観客賞
『半世界』  監督: 阪本順治
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