変魚路 [日本]
昨日は渋谷で沖縄表象の映画を2本。
高嶺剛監督18年ぶりの新作『変魚路』と三上智恵監督『標的の島〜風(かじ)かたか』の試写。表現のベクトルは違うけど、いずれも今年のベスト10に入りそうな素晴らしい作品で、特に『標的の島〜』は冷静になるまでちょっと時間が必要だった。
石川文洋を旅する [日本]
アイヌ影絵 [日本]
浅草アートスクエアで『アイヌ影絵プロジェクト ポロ・オイナ〜超人アイヌラックル伝』を観た。
新作歌舞伎ならぬ新作影絵で、ラーマーヤナではなく、アイヌカムイの超人伝説を題材にした大掛かりな作品だ。
場内は満席で、桟敷席もギュウギュウ詰め。その期待の高さが伺い知れる。インドネシアの「ワヤン・クリ」はじめ東南アジアではポピュラーなスタイルが、黒潮に乗って、北海道や東北の北方に行き着き、アイヌ民族の神様の物語を映し出す試みは、全く新しいように見えて、とても自然な流れのようにも思える。
花と兵隊 [日本]
コタンの口笛 [日本]
神保町シアターで開催中の『没後四十年 成瀬巳喜男の世界』のプログラムにあった『コタンの口笛』(1959)を観た。
最近『日本語が亡びるとき』なんて本が売れたみたいですが、アイヌ語は「日本国内で」まさに亡びつつある言語である。ウィキによれば、1996年の推定で、アイヌ約15,000人のうち、アイヌ語を流暢に話せる人(Active speakers)は15人しかいなかったらしい。以前、アイヌ文化研究者で参議院議員でもあった故・萱野茂が、既に彼が子供の時分にアイヌ語を話す人は少なかった、と言っているのをTVで見た事がある。
映画は50年代のアイヌ集落の様子を描いている。
無国籍 [日本]
少し前に、BSのハイビジョン特集で『無国籍〜ワタシの国はどこですか』というドキュメンタリーを観た。在日韓国人の番組ディレクターと、国立民族博物館の准教授である陳天璽が、日本国内における「無国籍」者の現状をレポートするものだった。
ミャンマーの迫害から逃れてきたモスリム系のロヒンギャ族の人々。日本社会にとけ込めず心を病んでしまったベトナム戦争難民。タイで生まれ育ったというベトナム難民Ⅱ世は、タイ、ベトナム両国からその出生証明を拒否されている。オーバーステイのフィリピン女性から生まれた子供達・・・。国家とは何か?国と個人との関係とは?興味のある人は、削除される前に見ておいた方がいいです。
勝間和代じゃないです。
てだのふぁ [日本]
http://okinawa-kawasaki.com/
長年住んでいるのに、川崎市には戦前から沖縄出身者が多く住んでいるという事実を知らなかった。(おとなりの横浜・鶴見区に通称”沖縄ストリート”なるものが存在するのは知っていたけれども)
大正4年、富士瓦斯紡績工場の発足で、沖縄から女工がたくさん集められたのがはじまりで大正13年には沖縄県人会が発足。以来、沖縄とは深い関わりをもち、現在400人ほどの会員がいるという。
綺麗な色の染織物、壷屋焼き、螺鈿の入った漆器、宮古台風被害の支援のお礼として送られた石敢當、新井白石の『南島志』、沖縄の歌を集めた『おもろさうし』などの展示があった。また沖縄に影響された川崎市在住の芸術家たち、濱田庄司、佐藤惣之助、岡本太郎などのコーナーもあった。
その関連イベントで沖縄映画の上映があった。『ウンタマギルー』『ホテル・ハイビスカス』は既に見た事があるので、灰谷健次郎原作の映画『太陽の子〜てだのふぁ』(1980年/浦山桐郎監督)を観る事にした。児童映画と思って軽い気持ちで観ていたのだが、内容の詰まった2時間20分の大作だった。
ゴダイゴ [日本]
“Holy & Bright" Godiego (1979)
5月4日、シルクロードの終着点、東大寺・廬舎那仏前で結成30周年記念ライヴを皮切りに本格的再始動を果たした日米音楽同盟5人組。
http://www.universal-music.co.jp/godiego/(ユニヴァーサル移籍後オフィシャル)
http://columbia.jp/~godiego/(コロムビア)
彼らの作品は有名な一連のヒット曲を含め、特に70年代の作品に光るものがあるが、人気が急落した80年代以降も、素晴しい作品を残している。
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アジアという視点で忘れてはいけないのが、『カトマンドゥー』というアルバム。
シルクロードをテーマに制作されたアルバムで、従来のクロスオーバーサウンドにさらに民族音楽的要素も加わえながら、実験的で、なおかつポップな仕上がりをしている。発売前に、ネパールのカトマンズの王立競技場で6万人動員のコンサートを開いており、その様子がライナーの写真に使われている。
『中国・後醍醐』は1980年、中国・天津で行われたライブを収録した物で、観客は全員が人民服を着た中国人。熱烈歓迎ながらも冷ややかな反応も感じられ、当時、メディアミックスの先駆け的バンドで資本主義の権化みたいなバンドが、社会主義国人民と対峙する様は想像するだけでシュールな構図だ。
もはや説明不要の『西遊記』はドラマのサントラでありオリジナルアルバムで、ミリオンセラーを記録。堺正章主演のドラマはイギリスを始め旧英国領でも放送されカルトな人気があるそうで、UK盤も発売された。最近でもSkeewiffとJungle BrothersなどのUKアーティストに音源がサンプリングされてニュースにもなっている。
このアルバムは78年の作品で、後に続くシルクロードブームも含め、日本における戦後最初のアジアブームを作ったのではないか、と今にして思う。
そんな華やかなブームの裏で、靖国神社にA級戦犯が合祀されたのも78年という年だった。それから30年近くたった昨年、靖国問題が懸念され、日中の衝突が顕在化する一方で、フジテレビが西遊記をリメイクしたのには、何か因果があるのだろうか?(笑)
英語詞へのこだわり、米国人二人のメンバー、ミッキー吉野のバークリー仕込みの音楽志向を考えると、彼らのブームの背景には、当時の日本人のアメリカンポップカルチャーへの純粋な憧憬があり、欧米と同じポップカルチャーを共有できるという自負が見え隠れする。その後YMOが一世を風靡し、世界的な視野の下で独自の日本的なアイデンティティーを模索し始めるようになる。それに取って代わるようにして、日米音楽同盟は急速に人気を失い始めるのだった.....。
鳩間島音楽祭 [日本]
5月の始めに、石垣島を中心に八重山諸島に行ってきた。
たまたま音楽祭が開かれるということを地元に住む友人から聞いて、覗いてみたくなった。
石垣島からフェリーで一時間のところに鳩間島はあった。
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南国の音楽祭というイメージから、レゲエ・サン・スプラッシュのような大規模な野外ライヴをなぜか勝手に想像してしまったのだが、行ってみると、その規模は幼稚園の運動会。(笑)
それでも人口が50人(!)にも満たない島に1000人近くの人が訪れたのだから、一大ビッグイベントにちがいない。
振る舞い酒の泡盛を飲みながら、赤マンボウの刺身とか、ジーマミー豆腐なんかをつまみつつ、大空の下、ほろ酔いかげんで音楽を聴くのは、気持ちがいい。
鼻水(ノーズ・ウォーター)という若手ロックバンドから、馬頭琴やホーミーの倍音モンゴル音楽、ジョビンのボサノバピアノ曲もあれば、若手の八重山歌手の鳩間加奈子さん、そして鳩間島在住の民謡歌手加治工勇さんのスペシャルバンドの演奏などがあった。この三線ベースのスペシャルバンドは、演奏者が高齢なためか、どことなく「ブエナヴィスタ・ソシアル・クラブ」を思い出させるような渋さがあった。カチャーシー(モーヤー)を踊るお洒落なオジイがカッコよかった。
通りを歩けばどこからともなく三線の音が聞こえてくるこの地方。老若男女を問わず、音楽に対するスタンスがとても自然だ。最先端とか流行りの音楽から離れて、風や波の音を楽しむ滞在になった。