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27th TIFF [アジア総合]

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第27回東京国際映画祭 
10/23(tue)-31(fri) @TOHOシネマズ六本木・日本橋ほか(終了)



今年は六本木のほかに新たに日本橋に会場が設けられた。会場は素晴らしいのだが、いかんせん移動時間に30分かかるのが難点。
アジア映画のトピックとしては、今年から国際交流基金アジアセンター提供による「CROSSSCUT ASIA 」という特集が始まり「#01魅惑のタイ」と題してタイ映画特集が組まれた。(→別枠でまとめました)昨年の大幅なプログラム改変で、ファンの間でアジア映画上映が減るのでは?と危惧されたが、これでひとまず安心だろうか。

27thTIFFの個人的ベストは1.『昔のはじまり』 2.『破裂するドリアンの河の記憶』『36のシーン』3.『黄金時代』。タイ映画特集のためいつもより多めの17本の鑑賞となった。

以下、ツイッターでのまとめと加筆。


                   *
【2014年10月24日(金)】
バタバタのままTIFFに突入。今年は仕事で予定を完走できないかも。
(→ほぼ完走した)

●『メナムの残照』キッティコーン・リアウシリクン監督(タイ)
 →CROSSCUT ASIA

●『共犯』張榮吉監督(中国)

女子高生の自殺の謎を探る3人の男子高生。彼女を追いつめた別の女子を懲らしめようと企てるが、思わぬ事故が。ミステリーが明かされるにつれ浮かびあがってくるそれぞれの孤独感。カミュ「異邦人」の本。主演少年が吉田秋生の描く人物にどことなく似てる。個人的にはちょっと偽善的な匂いのする前作よりこちらの方が好み。

●『破裂するドリアンの河の記憶』エドモンド・ヨウ監督(マレーシア)☆

今在る世界を鮮やかに語ることできる数少ない作家の一人になるかもしれない。レアメタル工場建設で揺れる港町。そこで生きる高校生たちの夢と記憶の境界線上。処女長編でこの巨匠の風格。エドワード•ヤンの後継者はこの人かもしれない。(できたら別枠で書きたい)

●『壊れた心』ケビィン監督(フィリピン/Competition)★

浅野忠信演じる殺し屋は、フィリピンのスラム街で徐々に何者かに追いつめられていく。アジアのガレージサイケ、バロウズ&ギンズバーグ、コンラッド・ルークス、リノ・ブロッカ・・・怪しいカオスに血が騒ぐ。選曲も素晴らしくシビレた。ゲストで登壇した撮影監督の生ドイルがお茶目かつ五月蝿かった。
この作品、賛否あったけど、個人的には支持したい刺激的な作品。アジアのどこかで沈没していた不良中年が、いっちょ映画でも撮ってやるか!てな具合がいいし、90年代の上昇気流に乗ろうとするアジアの熱気を思い出させてくれた。音楽の選曲がタダモノでは無い感じ。サントラ出してほしい。


【2014年10月25日(土)】
TIFF2日目。

●『柔らかいステップ』(72) マウン・ワナ監督 (ミャンマー/ディスカバー亜洲電影)

劇団の太鼓奏者セインリンは踊子キンサンに恋をする。しかし美しい彼女は映画界へ・・・。二人の思いはインド映画のごとくビルマ歌謡で綴られる。監督(故人)は一年間伝統劇団に寄り添い、映画を完成させたようで、ドキュ部分はビルマ伝統芸能の貴重なアーカイブにもなりそう。監督の息子さんがQAに答えていた。

●『タン•ウォン〜願掛けのダンス』コンデート・ジャトゥランラッサミー監督(タイ)
  →CROSSCUT ASIA

●『実存を省みる枝の上の鳩』ロイ・アンダーソン監督(スウェーデン/WF)

1シーン1カットの風刺劇。統制された画面とシュールな笑いはいつも通り。ロシア軍と剣を交えようとするスウェーデン国王が騎馬で現代のバーに乗りこんでくる話が面白かった。モンティ・パイソンの系譜にあるのがよく分かる。でもベネチアグランプリとるほどだろうか?ナチスのやった動物実験など風刺したり、歴史問題に踏み込んだところが評価されたのかもしれない。


【2014年10月26日(日)】
TIFF3日目 。


●『昔のはじまり』ラヴ・ディアス監督(フィリピン/WF)☆☆

圧倒的ナラティヴの5時間半。アンゲロプロス、タルベーラ、蔡明亮が去った後、一人村に残って「映画の終わり」を見届ける人に相応しい。1970年、マルコスが戒厳令を敷く前夜、とある農村で次々と起きる事件。後半、数十年ぶりに村に戻って来る作家の視点が監督の視点と重なりそうだが、ポリフォニー的な表現は前作以上にドストエフスキー的だ。そして前作に続いて、一貫してマルコス政権のファシズムを追求しようとする監督の執念。モノクロの映像が良い距離感と芸術性を高めている。ラストで長回しの途中、なぜここでデイゾルヴするのか?という箇所があったが、(実は私は考え事をしていたようで気づかなかった)完璧に統制される事こそファシズムなのだ、と監督が揶揄してるようにすら思えた。今年の1本は間違いなくコレ。

【2014年10月27日(月)】
TIFF4日目。今日は徹夜あけのまま観たから気絶しまくり。


●『北北東』チャン・ビンジエン監督(中国/AF)

文革終結から間もない70年代末の東北のある村(伊春)。強姦魔を捕まえようとする警察署長・李と元漢方医・蔡婦人のチーム。キャラの躍動感が良いが、作りが『殺人の追憶』。監督は北京電影院78年入学組の美術専攻で、同期が芸謀、凱歌とい第五世代。その頃の記憶が反映されている。(遅刻した上に気絶したので、謎解きを知人に説明してもらった。劇中に出て来たフォトジェニックな橋を見落としたのが残念)

●『稲の歌』ウルボン・ラクササド監督(タイ)
  →CROSSCUT ASIA

●『メイド・イン・チャイナ』キム・ドンフ監督(韓国/AF)

脚本がギドクらしい作品にはちがいないし、俳優、演出に全く不満はないものの、使い古され消費尽くされたギドク節の常套句を見せられてるようで、全く新鮮味なかった。政治的なテーマにしても底が浅い気がする。

●『黄金時代』アン・ホイ許鞍華監督(中国・香港/WF)☆

作家・蕭紅(シャオ・ホン)が31歳で死ぬまでの波乱の生涯を描く。魯迅と並んで彼女を取り上げるということは本来なら抗日プロパガンダ映画になることを意味すると思うが、それを拒否するように史実に対し冷静であろうという態度が好感。そのせいか物語に抑揚はないが、何より俳優陣、美術、風景が絵巻物を観るように美しい。イデオロギーに利用されることを拒み、ゆえに作品は時代を超えるかもしれない。おそらく許鞍華監督の最高傑作。


【2014年10月28日(火)】
TIFF5日目(火曜日)。日本橋→六本木→日本橋のめまぐるしい移動。


●『コンクリートの雲』リー・チャータメーティクン監督(タイ)
   →CROSSCUT ASIA

●『オプーのうた~「大地のうた」その後』コウシク・ガングリ監督(インド/ディスカバー亜洲電影)

映画学校の学生オルコーは、かつてサタジット・レイ監督『大地のうた』(55)の「オプー」少年を演じたシュビルの家を訪ねる。ドイツで開催される子役賞の招待状を渡すためだ。老いたシュビルは心を閉ざしているが、青年の言葉に徐々に変化していく。「オプー三部作」の映像の断片が、シュビルの悲痛な人生に重ねられる。ちょっと盛り上げ過ぎと思うが、それでも涙腺緩みっぱなしで困った。
タバコの有害性を訴える団体の基金を得ているのか、画面の右下にsmoking kills と表示がずっとあったり、「タバコは1日一本まで」というシーンを引用したり、サブリミナル広告みたいで、その辺りすごく不快だった。

●『ミッドナイト・アフター』フルーツ・チャン陳果監督(香港/WF)★

旺角→大埔行きの赤バスがトンネルを抜けると街に異変が。原発事故か伝染病か。シュールな展開は『アンチ・ガス・チキン』を想起したが、香港映画史含みの笑える演出が満載で、D・ボウイの曲で心掴まれる。ラストの赤い雨は香港の現状と重なり、複雑な感情が込み上げてくる。
しかし、陳果監督って、こんなに技巧的な監督だったっけ?(と思ったら、知らないうちにエンタメ系作品も撮ってるんですね。)どちらかというと彭浩翔監督がとりそうな映画だと思った。


【2014年10月30日(木)】
TIFF6日目(29日・水曜日)は休観日。TIFF7日目最終日。六本木で移動時間が25分しかなく綱渡り。最後に観たナワポン・タムロンナタラリット監督『36のシーン』が思いのほか素晴らしく、幸福な余韻に浸る。


●『太陽を失って』ラッキー・クスワンディ監督(インドネシア/FA)

NY帰りのギアは同性の恋人と再会。スーリアは亡夫の浮気を知り仕返しを企てる。インドゥリはSNSで男探しに忙しい。孤独な女たちは相手を見つけてローンホテルへ集う。引き出しを開けると、コンドームとともにキブラ(メッカの方向)の矢印が。辛辣な風刺とバタビヤの夜は更けて。

●『36のシーン』ナワポン・タムロンラタナリット監督(タイ) ☆
  →CROSSCUT ASIA


(追記)
【翌2015年3月1日(日)】「第27回東京国際映画祭アンコール上映会」にて

●『ゼロ地帯の子供たち』アミールフセイン・アシュガリ監督(イラン/FA)★

イラク国境沿いに座礁する廃船で一人暮らす少年。そこへ言葉の通じないイラク少女兵・赤ん坊が加わり擬似家族の風体に。ある日、一人の米軍兵が現れ緊張が走る。他者を理解する試みを描いた寓意的作品。足跡と揺り籠が印象的。できればこの作品は字幕なしで注視したい。アジアの未来作品賞。



【受賞結果】
東京グランプリ:『神様なんかくそくらえ』 (監督:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ()
審査員特別賞:『ザ・レッスン/授業の代償』 (監督:クリスティナ・グロゼヴァ、ペタル・ヴァルチャノフ)
最優秀監督賞:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ (『神様なんかくそくらえ』)
最優秀女優賞:宮沢りえ (『紙の月』)
最優秀男優賞:ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ (『マイティ・エンジェル』)
最優秀芸術貢献賞:『草原の実験』 (監督:アレクサンドル・コット))
観客賞:『紙の月』 (監督:吉田大八)
WOWOW賞:『草原の実験』 (監督:アレクサンドル・コット)

•アジアの未来
作品賞:『ゼロ地帯の子どもたち』 (監督:アミールフセイン・アシュガリ)
国際交流基金アジアセンター特別賞:ソト・クォーリーカー (『遺されたフィルム』監督)
•日本映画スプラッシュ
作品賞:『百円の恋』 (監督:武正晴)
スペシャル・メンション:『滝を見にいく』 (監督:沖田修一)

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