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25th TIFF [アジア総合]

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第25回東京国際映画祭 2012年10月20日(土)~10月28日(日)@ 六本木ヒルズほか
ツイッターまとめ。 

                 *

【10月20日(土)】
川崎市民ミュージアムで長谷部安春監督『縄張はもらった』(68)と『みな殺しの拳銃』(67)。合間に宍戸錠&佐藤利明氏の絶妙なトークショー。スターはこうも観客を楽しませるものなのか。いつもはポツポツなのに、場内満席。
これから六本木に向かいます。チケットトラブルが心配なのでプリントアウトしたものを持参。(今年からチケットボードによるインターネット販売開始)


●『テセウスの船』アーナンダ・ガンジー監督(インド)

臓器移植を題材に人間のモラル、根源的な存在を問うインディアン・ニューウェイヴというべき作品かもしれない。「テセウスの船」というパラドックスを引用するところもうまい。
盲目の写真家が角膜移植後に得たもの。動物実験で作られた薬剤・移植を拒否する肝硬変の僧侶の信念。貧困者から盗みとった腎臓を移植されたのではないかと疑念する男。ムンバイを舞台に、3つのパートで描く。最後、主人公たちは博物館での映画上映で一同に会するが、『ブンミおじさんの森』を想起。
サタジット・レイやアラヴィンダンの後継者がそろそろ現れていい、と思っているのですが、この監督や、ドキュ畑だけれども、現在公開中の傑作『ビラルの世界』のソーラヴ・サランギ監督が、案外その線に上がってくるのかも。サランギ監督はおそらくベンガル人なので、レイ監督直系の後継者かも。


【10月21日(日)】
日曜日、TIFF2日目は中国デー。『牛乳先生』『二冬』で知られる楊瑾(ヤン・ジン)監督『ホメられないかも』。コンペで、北京芸術村を舞台にした奥原浩志監督『黒い四角』。


●『ホメられないかも』楊瑾監督(中国)

成績優秀の楊晉とビリの方の小波は親友同士。小波は叔母の家から小学校に通っていて、夏休みに山西省・運城の実家に帰省するので、楊晉も同行することに。近村には祖母も住んでいる。だが、滞在はトホホな事ばかり。やがて二人兄弟のはずの小波に姉がいることが発覚。
とぼけた笑いと子供2人が主演のためか、劉城達監督『ポケットの花』(07)を想起。監督の小3の体験が元になっていて舞台は95~7年頃の設定。天才子役たち、黄河と小清河の合流点、旅情誘う風景がいい。キャベツが転がり、合間にアニメの空想シーンが挿入される。黒猫と楊戩の第三の目。


●『黒い四角』奥原浩志監督(日本・中国)

北京芸術村で日本人と同棲する売れない画家チャオピンは、ある日、黒い四角が空を飛んでるのを発見、追いかけると、そこから全裸の男が現れる。男は記憶を失っているようだが、次第に彼の謎が過去に繋がっていることが判明。現代と40年代の2部構成。
主演男優が、陸川監督『南京!南京!』の日本兵役の中泉英雄なので、その連動感を感じずにはいられない。その意図はないのかもしれないが、これは陸川監督が投げたボールを返球するような作品かも。日本兵が日中のハーフという設定は、両者を慮る叡知も感じるが、掘り下げ足りない感じもする。
(2014年5月17日「黒四角」で公開予定)


【10月22日(月)】
月曜日、TIFF3日目。朝一のプログラムで、3時間くらいしか寝られず。フランス生まれのカンボジア系、ダヴィ・チョウ監督の『ゴールデン・スランバー』。インドネシアの重鎮ガリン・ヌグロホ監督『目隠し』。台湾の張榮吉監督『光にふれる』。


●ダヴィ・チョウ監督の『ゴールデン・スランバー』(フランス・カンボジア)

内戦で失われてしまったカンボジア映画史を、人々の記憶から発掘し甦らせる試み。カンボジアで映画が隆盛したのは内戦が勃発してから70~75年だったという事実に驚く。人々は街から出られなかっため、映画館に娯楽を求めたという。
この作品でインタビューに答えてるのはリー・ブン・イム監督、イヴォン・ヘム監督、リー・ユウ・スリアン監督、女優のディ・サヴェットなど。特にスリアン監督の苦難の人生に心揺さぶられた。今回のアジアの風の目玉はおそらく滅多に観られない貴重なカンボジア映画。日曜日が楽しみだ。
(詳しくは→ゴールデン・スランバーズに書きました)


●『目隠し』ガリン・ヌグロホ監督(インドネシア)

失踪した娘アイニの行方を探す母親。「NII」という実在の原理主義集団に所属するリマという少女。学費が払えず寄宿学校に通うことができなくなったジャビルは、貧困の苦しみから自爆テロの勧誘に心動かされる。原理主義勢力台頭の背景を精緻な表現で見せる秀作。
ヌグロホ監督は、作風もいろいろあって(三角関係を好んで描く)、個人的には、けっこう当たりハズレのある監督だけど、これは文句なし。監督の作品で、涙腺が緩んだのも初めてのことだ。


●張榮吉監督『光にふれる』(台湾)

出品人が王家衛とな?視覚障害の天才少年ピアニストが、大学に入り親元を離れ自立をめざす。一方、ダンサー志望のチエは、彼氏に裏切られ、失望。そんな中、二人は出会い、夢を語らう・・・・?正直、私は全く乗れない映画だった。今年一番のハズした映画になってしまった。
(2014年2月8日・日本公開)


【10月23日(火)】
TIFF4日目。インドネシア華人のエドウィン監督の長編デビュー作『空を飛びたい盲目のブタ』(08)。これは相当に面白い作品。ブラックな笑いあり、S・ワンダーの曲を合唱したりで、一見飄々とした感じだが、見終わると、華人のおかれた境遇をかなり自虐的に描いた作品だとわかる。


●『空を飛びたい盲目のブタ』エドウィン監督(インドネシア)
(別枠で描きました→エドウィン)


【10月24日(水)】
TIFF5日目。昨日に引き続き今日もインドネシア映画一色。エドウィン監督の最新作『動物園からのポストカード』。ヌグロホ監督の歴史大河ドラマ『スギヤ』。コンペ部門でリリ・リザ監督の『ティモール島アダンプア39℃』。インドネシア映画の豊饒を感じる作品群だった。
『動物園からのポストカード』のQAのあと、インドネシア映画のシンポジウムがあったんだけど、『スギヤ』と被って泣く泣く移動。


●『動物園からのポストカード』エドウィン監督(インドネシア)
(別枠で書きました→エドウィン)
エドウィン監督、すごく面白い。今回の収穫。短編もあるようなので是非観てみたい。


●『スギヤ』ガリン・ヌグロホ監督(インドネシア)

インドネシア独立に尽力したカトリック司教スギヤプラナタの日本軍政期を含む40-49年までの足取りを辿る。少数派の視点で描いている所が特筆すべき点。華人の少女と司教が海辺で国家について語らうシーンが象徴的。普通の歴史ドラマかと思ったが、随所に監督らしさが。
残虐な行為をするオランダ兵の内面も精緻に描いていて、ゲリラ探しで男を殺した後、赤ん坊を抱き上げるシーンが印象に残る。残念なのは敗戦後、日本軍と独立派の衝突で、「通りゃんせ」を唱う所。日本人の役者が参加しているのだから、何とかならなかったのか?舞台はスマラン〜ジョグジャ。


●『ティモール島アタンブア39℃』リリ・リザ監督(インドネシア)

飲んだくれの父親と暮らすジョアオは、東ティモール側に住む母親の声を録音したテープを繰り返し聴いている。一方、思いを寄せる少女ニキーアが近所に戻って来ているのを知り接近。彼らの過去に何があったのか、ミステリー仕立てで展開する。
東ティモールの独立で、インドネシア側に移住したり、難民として避難して来た人々の物語。映像が素晴らしく、ドキュ映像も交えアタンブアの熱が伝わってくるようだ。青春ドラマとしても切ない。ただ、緊張感あるミステリーとして引っ張ったわりに、種明かしがあっさり目。でもこれは些細なことかも。
国境の街・アタンブアから、主人公ジョアオがニキーアの行方を探しに行ったのが西部のクパンとい街。結構な距離がある。東ティモール側の母親と二人の妹が住んでいるのがリキシャ。そういえば、『エリアナ、エリアナ』(02)も家族分断の物語だった。


【10月25日(木)】
TIFFの6・7・8日目はお休み。『未熟な犯罪者』、スクリーン7での『火の道』、『ブワカウ』を観られなかったのが心残り。別の機会がありますように。


【10月28日(日)】
TIFF最終日。現在齢80歳(宍戸錠と同じ)ティ・リム・クゥン監督の『天女伝説プー・チュク・ソー』(67)と『怪奇ヘビ男』(70)。そして森美術館で「アラブ・エクスプレス」。久しぶりの渋谷シネマライズでギャレス・エヴァンス監督『ザ・レイド』。インドネシア映画三昧の一週間だった。


●『天女伝説プー・チュク・ソー』(67)ティ・リム・クゥン監督(カンボジア)
●『怪奇ヘビ男』(70)ティ・リム・クゥン監督(カンボジア)
(別枠で書きました→天女と蛇男)



【受賞結果】
◎サクラ グランプリ 『もうひとりの息子』 ロレーヌ・レヴ監督
◎最優秀監督賞    ロレーヌ・レヴ監督
◎審査員特別賞   『未熟な犯罪者』 カン・イグァン監督
◎最優秀女優賞    ネスリハン・アタギュル (『天と地の間のどこか』)
◎最優秀女優賞    ソ・ヨンジュ (『未熟な犯罪者』)
◎最優秀芸術貢献賞  テセウスの船  撮影監督/パンカジ・クマール
◎観客賞       フラッシュバックメモリーズ 3D

◎最優秀アジア映画賞  『沈黙の夜』レイス・チェリッキ 監督
◎アジア映画賞スペシャル・メンション 『ブワカウ』 ジュン・ロブレス・ラナ 監督
                   『兵士、その後』アソカ・ハンダガマ 監督
                   『老人ホームを飛びだして 』チャン・ヤン 監督
◎TIFF特別賞     レイモンド・チョウ
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サンフランシスコ人

2/23 『みな殺しの拳銃』をサンフランシスコの映画館で上映します...

http://www.roxie.com/ai1ec_event/nippon-nights-massacre-gun/?instance_id=17237
by サンフランシスコ人 (2017-01-11 07:55) 

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