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アラブ・エクスプレス [アラブ・パレスチナ]

『アラブ・エクスプレス展 アラブ美術の今を知る』@森美術館
2012年6月6日(土)-10月28日(日)



「アラブ」にはおおまかに3つの意味があるという。「遊牧民」「アラビア半島出身者」「アラブ民族」。アラビア半島にいた民と彼らの話す言葉にとって、決定的な転機なったのが7世紀のイスラームの成立。アラブはイスラームとともに外部へと広がっていった。

アラブの多様性を探る展示なのだとは思うが、経験値がないせいか、微妙な差異がわからず、ただただ「イスラムっぽい」造形に惹かれてしまう。しかし、展示を通してはっきりと伝わってくるのは、各国の政治的状況だ。祖国ではなく国外で活動する作家が多いのに気づく。展示の中には、2011年のエジプト1.25革命中、カイロ市内・タリハール広場のデモに参加中、狙撃され死亡したアハマド・バシオーニの生前の記録映像もあった。また、英仏の都合によって引かれた国境線が、いかにその地域に齟齬をもたらしたか考えさせられる。アラブの映画大国・エジプト映画にまつわる映像展示もあった。





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『ブラック・ファウンテン』(2008)
マハ・ムスタハ(61年、イラク・バグダッド生まれ。マルメ、トロント在住)

マハ・ムスタハの『ブラック・ファウンテン』という展示は、誰もがすぐに石油(原油)を思い浮かべるはず。1991年、湾岸戦争でクウェートの油田地帯が爆破され、周辺国に黒い雨が降ったという衝撃的な経験した作家は、原油というのは富を生み出すと同時に、紛争の種になりうるもの、自然を脅かすものだ、と認識する。絶え間なく噴出する黒い水は、石油であると同時に次々と現れる社会問題を暗示しているようだ。

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『私の父が建てた家(昔むかし)』(2010)
サーディク・クワイシュ・アル・フラジー(イラク・バグダッド生まれ、オランダ在住)

国外移住後、はじめて実家に戻ったとき、壁にかかっていた父親のスーツを観て甦った無数の記憶。アニメーション。


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『マグネティズムⅢ/Ⅳ』(2012)
アハマド・マーテル(79年、サウジアラビア・タブーク生まれ、アブハ在住)

磁石と砂鉄の様子があたかもメッカのカアバ神殿への巡礼を想起させる。磁石と、求心力の強い宗教の類似点を提示している。


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『カイロの町の労働者』シリーズ(2006)
オーサマ・エッスィード(71年、シリア・ダマスカス生まれ。米国在住)

木村べん的なタッチの写真。

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『(より)新しい中東』(2007)
オライブ・トゥーカーン(77年、米国生まれ)

パレスチナの地図(中心)だけ固定されていて、周りの国は自由に動かせるという地図。各国の国境線には米国の退役将校ラルフ・ピーターズが安定した中東世界を構想したという「新国境」が重ね合わせられている。


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『アイムソーリー』(2008)
アーデル・アービディーン(73年、バグダッド生まれ、フィンランド・ヘルシンキ在住)

2004年、イラク戦争中に米国に旅行した作家は、出会う人から口々に「アイム・ソーリー」と言われた。それが米軍の出兵に対してなのか、イラク人の悲惨な境遇に対してなのか、真意が判然としなかったという経験を作品化したもの。


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『リ・マッピング』(2010)
エプティサーム・アブドゥルアジーズ(75年、アラブ首長国連邦・シャルジャ生まれ。ドバイ在住。)

アラブ周辺国の経済成長と芸術の受容度を表す立体地図。美術館やギャラリーの数が指標になってるようだ。


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『リッダ空港』(2007-09)
エミリー・ジャーシル(70年生まれ、パレスチナ自治区・ベツレヘム生まれ。レバノン・ベイルート在住)

英国領パレスチナに実在した「リッダ空港」を主題にした短編映像と模型(写真)で構成された作品。「リッダ空港」は、1948年にイスラエルの手に渡り、「ロッド国際空港」と改名。70年代には、イスラエル首相の名前を冠にした「ベン・グリオン国際空港」となる。パレスチナの喪失の記憶を表している。


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