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TIFF2011 (後篇) [アジア総合]

                       
そういえば、今に始まったわけではないですが、前売りチケットが発券手数料を105円取るようになって,実質的な値上げになりました。何とかしてくれないでしょうか。平日昼間割引とか、10枚つづり割引チケットとか考えてほしい。

さて、後篇です。

                   *                      
【10月26日(水)】
映画館のA・B・C列の席は、原発と同様必要ないと強く思ったTIFF5日目(26日)。中国映画の『ここ、よそ』、韓国映画『U.F.O』の2本。六本木TOHOで。


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●『ここ、よそ』(这里、那里)卢晟監督 ☆

内モンゴルのハイラル付近の山間部、上海、パリ(ノルマンディも)を舞台に描かれる華人の人間模様。3つの場所の人々はつながりがありそうだが、不確か。携帯で話している相手が観客が思っている人物とは違う可能性を秘めている。現代人の繋がっているようでいて、実はそうでもない孤独な様子がうまく描かれている。監督は“誰かを想うこと”が映画のテーマだと説明。
監督は王兵やジャンクー監督映画のカメラを担当していただけあって、絵が素晴らしい。『孔雀―我が家の風景―』『無声風鈴』の呂玉來の寡黙な演技も光る。小夏役に『中国娘』も。あっさりしてる感じもするけど、賞に絡むかも。(結局絡まず)

●『U.F.O.』コン・グイヒョン監督

男子高校生4人が,UFOが出没するというソウル近郊の山を訪れるが、ある女子高生と遭遇し、思わぬ展開になる。冒頭「語りえないことについては、沈黙するほかない」という哲学者ウィトゲンシュタインの言葉。ちょっとテンポが悪いのと、4人の結びつきや背景が希薄なのが残念。
ABC列の席だったのが災いしてか、映画の主人公同様、少し記憶飛んだ。だから自分が把握しているより、もっと哲学的な話しかもしれないですが。QAに登壇した主演の兄貴(ヒョン)が水も滴るイケメンだった。



【10月27日(木)】
TIFF6日目(27日)。フィリピン映画『クリスマス・イブ』、オムニバス映画『香港四重奏+香港四重奏2』(以上、日比谷シャンテ)、インドネシア映画『カリファーの決断』(六本木TOHOシネマズ)の3本。


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●『クリスマス・イブ』。ジェフリー・ジェトゥリアン監督 ☆

生誕劇の行列・教会のミサから帰ってみると、部屋の中が荒らされ泥棒が入ったことに気づく中流家庭のアギナルド一家。一見幸せそうな家族に隠されていた事実が次々と露になる。(父親に多額の借金があるとか、長女はアメリカ人の夫と離婚寸前だとか、長男(弟)がゲイだとか。)翌日、教会の礼拝で、長男の視線の先を追うカメラ。"A"「アテネオ」の青いスタジアムジャンパーを着た見知らぬ男が、泥棒を働いたことを匂わせるオチ。傑作『クブラドール』(06)の監督だってことに今頃気づいた。納得のクオリティ。


●『香港四重奏』

邱礼涛『生炒糯米飯』:かつて5cで食べられた糯米炒飯を懐かしむ。羅卓瑤『赤地』:「ラ・ジュテ」風の近未来的作品。麥曦茵『偏偏』:若い男と女が電話で駆け引きしながら街を練り歩く。陳果『黄色拖鞋』:売れない女優だった母親。行方知らずの父親を香港映画(史)の中に捜す。この中ではフルーツ・チャンの作品が面白かった。アニメ?画も独特。

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●『香港四重奏Ⅱ』

メンドーサ『パープル』:妻を亡くした老人、花を贈る比少年。何宇恆『機密漏れ』:マレーシアから派遣されたと思っていた合同捜査班が実は。蛇のかぶり物。アピチャッポン『Mホテル』:水槽の中にいるような?關錦鵬『上河図』:ツアーバスの中はさながら「清明上河図」のよう。


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●『カリファーの決断』。ヌルマン・ハキム監督 ☆

進学を諦め美容室で働くカリファー。生活費に事欠く家族のために、貿易商の男に嫁ぐ。結婚生活はまんざらでもない様子。夫は厳格なモスリムの規律を課すが、ほとんど家に帰らず。原理主義の台頭がインドネシア社会に与えた影響を精緻に描く興味深い作品。
監督のQA。本国ではニカーブの着脱が検閲で問題になり10%がカット。急進派からは観るのをボイコットするよう運動があった。カリファーとは“導く人”という意味で、中東では男性にしか使えない名前なのだそう。カリファー役の美しい主演女優マーシャ・ティモシーはキリスト教徒。

                   *

【10月28日(金)】
TIFF7日目(28日)。大江健三郎原作のカンボジア映画『飼育』、キアロスタミのワークショップで学んだ監督のイラン映画『嘆き』の2本。(六本木TOHO)


●『飼育』リティ・パニュ監督 ☆

72年クメール・ルージュ支配地域の村。ロン・ノル政権側に寝返った父親をもつ少年ポンは墜落した米軍の黒人兵を捕まえたことで手柄を立てオンカー(組織)の中で頭角を表して行く。大島渚版も去年観たけど、こっちの方が苛酷な状況な分だけ面白いと思った。
黒人兵はまず枯れた井戸に入れられるが、カンボジアゆえの大雨で溺れそうになる。その後、村の檻へ。オンカーに洗脳されつつある少年たちに監視される。束の間の交遊があり、糸電話のシーンの少年たちの表情が素晴らしい。(この辺にリティ監督独特のドキュの手法が感じられる)一方、当時の米軍側が撮ったと思われる爆撃のドキュ映像も大迫力で挿入されている。

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●『嘆き』モルテーザ・ファルシャバフ監督。 ☆

聾唖の夫婦が、甥っ子を車に乗せてテヘランへ向かう。事故現場で大破した車。少年にどうやって両親の死を話すか悩む夫婦。しかし甥は手話を解し会話は筒抜けだった。前半は手話の口論が賑やかに感じるが、終半は本当の沈黙が訪れる。この辺りのシークエンスが素晴しい。
ファーストシーンは暗闇。甥っ子の両親が喧嘩をして出て行く時、車のライトが部屋内を照らし、甥っ子が目を開けて寝ている姿が、サーっと映し出される。遠景の車での会話手法はヤスミン監督の『ラブン』(2003)を思い出す。少年が木のある所でトイレ休憩に行きたがる理由が後で判明するような所も、実にヤスミン的だと思った。(キアロスタミ的と言った方がいいのか?)この映画、決して斬新だとは思わないけど、巧みな映画である事は確か。賞に絡むかと思ったが、絡まず。

【10月29日(土)】
TIFF最終日。といっても関連企画で、東京都写真美術館でショートショートフィルムフェスティバル&アジア『FOCUS ON ASIA』のA・B・Cプログラムを3本。
目当ては『3.11 a sense of home films』だったが、何を考えてるのか、3分割にして3プログラムに振り分けて上映。やっぱりこれは変だ。集中力を下げる。
この日、ざっと数えて31本の短編を観た事になる。

プログラムA

・『663114』平林勇監督
66年に一度地上に出て来て羽化するセミが、大地震と原発事故で放射能の影響を受け、次の子孫はとんでもない奇形になって生まれてくると言った内容。ちょっとゲンナリ。

・『パープルマン』キム・タクフン、ユ・ジニョン、リュ・ジノ、パク・ ソンホ
脱北者のヒョクのはゆで卵をたらふく食える幸せを噛み締めるが、様々な苦労に直面する。本人も最後に登場する。

・『××な男2人と美少女』陳良侯監督
バスの中で女子高生の体操着の短パンを盗んだ中年男、それを取り戻そうとする男子高校生(王柏傑)。「變態!」の一言以外セリフなしの似非サイレント。

・『スマイルバス』パク・サンジョン監督


プログラムB

・『スーパースター』
・『中国野菜』
・『ふたつのウーテル』


プログラムC

・『口ゲンカの行方』
・『rain town』

・『波乱万丈』パク・チャヌク&パク・チャンギョン監督 ☆
iPhoneのカメラで撮ったとは思えない33分の短編。画に独特の風味がある。男が釣りをしていると、女性の死体をつり上げる。その死体は別のチャンネルに通じていて・・・。巫堂(ムーダン)の世界観がよく分かる。導入部のオオブプロジェクトの曲がすばらしい。





『3.11 a sense of home films』☆
河瀬直美監督 (『朱花の月』『光男の栗』も良かった) の呼びかけで、ビクトル・エリセ、アピチャッポンほか、錚々たる世界の作家が参加。被災地に捧げられた短編集。中でも賈樟柯の一編が、映画に対する誠実さが感じられて心動かされた。







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