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反思六四 [中国]



ロウ・イエ監督の最新作『スプリング・フィーバー』がカンヌ国際映画祭で脚本賞を獲ったそうだ。
『天安門、恋人たち』(2006年)で、中国当局から5年間の製作禁止を言い渡されていた監督ですが、どうやらそれを無視し、今回の映画を撮り上げたようだ。その内容は、いまだ中国国内ではタブー視される同性愛を扱っていると言う。今回の受賞はまた波紋を広げそうだが、こうやって殻を破ろうとする作家が、中国の検閲制度を、中国社会を変えていくのでしょう。




天安門、恋人たち [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • メディア: DVD


吉林省朝鮮自治区は図們に住む少女、余紅(ユーホン)は恋人と別れて(どうやら彼女自身は漢族で、恋人は朝鮮族のようである)北京にある北清大学へ入学する。(北清とは中国トップレベルといわれる北京大学と清華大学の頭文字を頂いたようだ)そこで周偉(チョウ・ウェイ)という男と運命的な出会いをする。民主化運動の盛り上がりと平行して、彼らの恋も燃え上がり、狭い寮のベッドで激しく体を重ね合わせる。彼女は愛しすぎるあまり自分をコントロール出来ず、二人は衝突が絶えない。そして天安門事件を頂点に、彼らの恋も終わりを告げる。余紅は故郷の恋人に連れられ、一旦は地元に戻るが、国内各地を転々とする。一方、周偉は仲間と一緒に東西の壁の崩れたベルリンへ渡る。10年後、二人は喪失感を埋めるために再会する。

原題は『頤和園』という。かつては有名な逸話のある西太后の避暑地であり、毛沢東時代にはエリート養成所があった所。現在は公園になっていて観光地としても有名な場所だ。美しい夕景の昆明湖と彼らのシルエットが、二人の憩いのひと時として、わずかながら挿入される。たぶん、北京大や、清華大などの学生たちも、恋や政治をそこで語り合ったのだろう。
しかし、この映画には、言葉によって政治的な議論をするシーンはほとんどなく、10分に1度は濡れ場を作らなければならない約束事があるように、セックスシーンが頻繁に出てくる。性の衝動=政治的な自由への渇望、はたまた、それは民主化運動の隠喩として描かれているのだと思う。



この映画を見て思い出すのは、呉文光監督のドキュメンタリー『北京流浪』『四海我家』だ。この作品は、故・佐藤真監督と呉監督の対談という形で公共放送でも放映されたことがあるので、観た人も多いのではないかと思う。北京の芸術村に集まっていた6人のアーティストが、天安門事件以降、創作の自由を求めて海外に移住した行方(94年頃だったか?)を追ったものだ。呉文光監督は、その後の続編を制作しているという話も聞く。

もうひとつは、昨年、芥川賞を獲った楊逸の小説『時が滲む朝』。
こちらは、陝西省に実在する秦都大学が舞台で、二人の男子学生が、まるで流行感冒のように民主化運動に染まっていく姿が描かれている。地方の学生を含め、中国全土で学生運動が熱を帯びていたことがよくわかる。天安門事件後、些細なことで放校処分になった二人は、一人は日本へ、一人は中国に留まり、事件のトラウマを抱えながら、現実に向き合っていく。『天安門、恋人たち』と同じく、事件後の10年間を描く点では、モチーフの扱い方がよく似ている。


時が滲む朝

時が滲む朝

  • 作者: 楊 逸
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 単行本



たまたま聴いていたラジオ番組に、天安門事件のスクープ写真を撮ったカメラマンの今枝弘一さんが出演していた。彼が当時を思い出して語るエピソードの中に、天安門広場に集まったデモの集団の中は、糞尿と汗の匂いが立ちこめていた、というものがあった。何万人という若者たちがそこに何日も陣取っていて、ところ構わず道路に垂れ流していたためだった。そんな糞尿と汗のリアリティが、これらの作品から感じ取れるのではないだろうか。




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六四天安門事件の一年後に出版された『民主中国 D.C. Japan 第一巻』(1990)。
表紙は学生リーダーの一人でウイグル族出身のウアルカイシ。当時、民主化運動のアイドルとか言われていたような気がする。中国当局に指名手配されている亡命者の一人。
今月3日、在住先の台北からマカオ行政特別区に飛び、出頭しようとしたが入管で足止めされ、そのまま台北に強制送還された。ウアルカイシは捨て身の覚悟で行動したようだが、中国当局は事を荒立てるのを避けた形になった。

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