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私のマジック [シンガポール]

mymagic.JPG
Bosco Francis @ 21th TIFF 2008



昨年の東京国際映画祭にて、ボスコ・フランシスさんの写真。
せっかくポーズをとってくれたのに、カメラの調子が悪くて決定的瞬間を逃し、横顔になってしまった。エリック・クー監督作品の秀作『私のマジック』で主演を演じた人で、本業はマジシャン。ティーチインでは財布から炎があがるマジックを披露し、会場を湧かせていた。

映画は、過去に妻を失い、酒に溺れていたマジシャンが、生活のため、息子のために再び危険な舞台にあがり、再起をかけるという物語。マジシャンといっても、ポール・モーリアの音楽がBGMに流れるような代物ではなくて、電球を食べたり、剃刀を食べたり、皮膚に串を刺したり、びっくり人間大集合系の曲芸に近いもの。(子供の頃、土井まさるのTVジョッキーを見ていたら、蛍光灯を食べる人が出ていて、豆腐みたいな味がすると言っていたのを思い出した)
マジシャンは、さらに金を稼ぐために、中華系のヤクザ風と契約をし、サディステックな暴力を全身で受ける人間サンドバッグ?的な仕事を引き受ける。痛々しい残虐なシーンに何度も画面から顔を背けてしまう。それをSMプレイといっていいものなのか疑問だが、中華系に虐げられ、抑圧されるインド系・タミル人のおかれた政治的な状況を仄めかしているのだろう想像した。




アニルの亡霊

アニルの亡霊

  • 作者: マイケル オンダーチェ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/10/31
  • メディア: 単行本



スリランカの内戦が終結した、との報道。政府軍がタミル・イラームの議長を殺害、組織を殲滅したという。長いけど、少し歴史背景のおさらい。

ウィキペディアによると、スリランカの民族構成は、人口の約74%がシンハラ人、約13%は古くから住んでいる「スリランカ・タミル人」、約5%がイギリス植民地時代にプランテーションへの労働力として移住させられてきた「インド・タミル人」だという。植民地時代、シンハラ人(主に仏教徒)はイギリスの支配に対立・抵抗を続けたのに対し、比較的従順だったタミル人(主にヒンドゥー教徒)がイギリス政府に重用されていた。

イギリス植民地時代は、むしろ優遇政策を受けていたタミル人だったが、多数派であるシンハラ人が政権を担うと、彼らに対し差別的な政策をとる。抵抗するタミル人の一部は、1972年、タミル・イラーム解放のトラ(LTTE)というゲリラ組織を結成する。1983年、ついに内戦が勃発。以来散発的な戦闘をずっと繰り返して来た。
内戦の全貌は、その死者数とともに実は良くわかっていない。シンハラ人政府内の政治闘争による殺し合い、LTTE内の闘争による粛正など、泥沼化しているようだ。マイケル・オンダーチェの『アニルの亡霊』という小説には、国連から派遣された法医学者を通して、その辺りの深い闇が描かれていたと思う。

旧マラヤ連邦にいるインド・タミル人の多くも、戦前イギリスによって強制移住させられた人々がルーツになっている。子孫たちも含め、その単純労働ゆえに貧困層が多い。その辺の実態は、ディパーク・クマーラン・メナーン監督の『砂利の道』(2005)に描かれていた。近年、マレーシアではタミル系住民によって旧宗主国イギリスを訴える裁判が起こされ、棄却の措置に暴動も起きている。また、タミル人ディアスポラは世界中に散らばっており、 彼らの資金がLTTEに流れているという話もある。スリランカ国内を含めたインド・タミル人マイノリティの問題は、そう簡単に解決しそうにない。






ボスコ・フランシスは実はタミル語が堪能というわけではなく、娼婦役の女優からタミル語を指導してもらいながら、撮影に望んだという。(普段は英語で話し、タミル語よりは福建が語が得意らしい)この事実は、エリック・クー監督が、タミル語に意識的で、単なる「父と子の物語」以上のものをそこに込めようとしていたことが伺える。欲を言えば、シンガポール・タミル人の歴史をもう少しわかりやすく語ってもよかったのではないか。そうすれば、時間的、地理的な広がりを持てたし、評価もさらに上がったのではないだろうか。

『ムトゥ踊るマハラジャ』(1995)『お水よお水』(1981)などに代表されるタミル語映画のヒーローはちょっと小太りのオッサンと相場が決まっていて、ボスコ・フランシスの体型はその伝統に十分に適っているのではあるけれど。



タミル人を扱ったスリランカ映画
『満月の日の死』Death on a full Moon Day プラサンナ・ヴィターナゲー監督(1997)
『マイ・ムーン』This Is My Moon アソカ・ハンダガマ監督(2000)



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