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世界でいちばん幸せな場所 [ベトナム]

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未DVD化


ホーチミン市の郊外に住む10歳の少女トゥイ。両親を亡くし、叔父さんの家に引き取られ、竹材工場で働いている。夢みがちなトゥイは今日も工場で失敗をし、叔父さんに「お前はここ以外では暮らせないんだぞ!」と怒鳴られる。
トゥイはお気に入りのバービー人形をリュックに詰め、貯めたお金を握りしめ家出する。辿りついた街で知り合ったのは、裕福そうだが影のあるフライトアテンダントのラン、婚約者にふられたばかりの動物園の飼育係のハイだった。


  
                    *

主人公のトゥイを観ていたら、数年前、ホーチミンで出会ったピーナッツ売りの女の子たちを思い出した。ビア・ホイという地ビールが飲める屋台に行くと、たいてい彼女たちは現れ、ピーナッツを「買え」とせがむのである。「買ってください」ではなく、「買え」という態度なのだ。軽く無視していると、今度はいきなり平手打ちをしてくる。逞しいと言えば綺麗に聞こえるのだが、それを通り越して凶暴なのだった。トゥイにもそんな踏んづけても立ち上がってくる強さがある。(映画の中で、花売りやポストカード売りがセーラー服のような『制服』を着て売り歩くシーンがあるのだが、最近の流行りなのだろうか??ルーズソックスを履いていなくてよかった。)

 トゥイはストリートチルドレンとして生活する中、二人の大人に会う。フライトアテンダントのランは美人で裕福だが、どうやらただならぬ事情があるようだし、市の動物園で飼育係として生活するハイは、婚約者には振られるわ、かわいがっていたゾウと離ればなれにならなければならないわで、散々な目にあっている。本来はより弱者で守られるべき存在のトゥイが、子供ながらの純真さと勝ち気さで、訳ありの二人を引き合わせる。そして、彼らの頬を平手打ちをするかのように勇気づける。トゥイが私設に預けられ、そして怖い叔父さんの家に再び連れて行かれるシーンは涙を誘う。だが、もちろんそれでめげてしまうトゥイではないのだ。

監督はホーチミン生まれのアメリカ育ち。手持ちカメラの映像が多く、画面は揺れながら被写体を追いかける。それが大都会ホーチミンの喧騒と臨場感をよく伝えている。語り口はかなりクールだが、三人の疑似家族みたいな絆がじわりと浮き上がってくる。 (★★★☆)

初出「旅シネ」より
『世界でいちばん幸せな場所』Owl and the sparrow
2007年/アメリカ+ベトナム
監督・脚本:ステファン・ゴーガー
出演:ファム・ティ・ハン、カット・リー、レー・テー・ルー
配給:エス・ピー・オー
上映時間:98分
公開:8月2日(土)、シネマート六本木にてロードショー
公式サイト:http://www.cinemart.co.jp/shiawase/

2007年ロサンゼルス映画祭 観客賞(最優秀作品賞)受賞
2007年サンフランシスコ国際アジアン・アメリカン映画祭 観客賞受賞
2007年ハートランド映画祭 クリスタルハ-ト賞受賞
2007年ハワイ国際映画祭 最優秀アジア映画賞受賞
2007年デンバー国際映画祭 新人監督賞受賞
2007年ビッグ・アップル映画祭 最優秀作品賞受賞
2007年サンディエゴ・アジアン映画祭 観客賞受賞
2007年ダラス・アジアン映画祭 最優秀作品賞受賞

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