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浮気雲→西瓜 [台湾]


Shaokan at Tokyo international film festival. 29 Oct, 2005
映画の中の主人公のように大汗をかきながら(笑)
殺到するファンのサインに応じるシャオカン。




蔡明亮監督の最新作、『浮気雲』(原題:天辺一朶雲)はとんでもない”怪作”だった。
(→『西瓜』というタイトルで日本公開決定。)

前作『さらば,龍門客桟』(原題:不散)では、閉館される映画館を舞台に映画への熱い想いを抑えた演出でみせてくれたのだが、今回は、何と、日本のアダルト・ビデオ〜ピンク映画に対し、艶やかにそして破天荒にオマージュを捧げている。

台北では雨が降らず、水不足の危機に瀕している。水道からは水が出ず、ミネラル・ウオーターとスイカの水分でしのぐ日々。主人公の女(陳湘琪)は、物質的にも精神的にも、性的にも乾いている。また、彼女は落としてしまったスーツケースの鍵を探している。
ある日、昔つき合っていた(?)シャオカンと偶然再会し、彼女の部屋に招く。無くした鍵をめり込んだアスファルトの中から拾ってくれたのも彼だった。彼女は彼に期待を抱く。
シャオカンは今回はアダルトビデオ男優になって生計をたてている。実は偶然にも彼女が住む同じマンションでヴィデオの撮影が行われていたのだった。ついに彼女はシャオカンの職業を知る事になるのだが....。

「まだ時計売りの仕事してるの?」という女のセリフが出てくるので、『ふたつの時、ふたりの時間』の続編を思わせるが、干ばつの設定や、ミュージカルやドラッグクイーンを思わせる歌とダンスがあることから、雨が降り止まない水浸しの季節を描いた傑作コメディ、『HOLE』と対になった作品とも解釈できる。
日本からはAV女優、夜桜すももが参加。スイカのようにたわわな肢体を見せながら、気を失ったまま意識の戻らないAV女優役を演じている。『愛情万歳』でボーリングのボールとして使われていたスイカが、今回はジンマシンのようにたくさん出てくるのだが、それは欲望の象徴としてとして解釈していいのだろう。

蔡明亮の映画は基本的に「孤独と戯れる」映画だと思う。あるいは一人遊びを肯定的に捉える映画。
長回しの中に聴こえて来る『ヴーン』という空調の音や町の静寂の音。普段は歩き慣れているのに、永遠に続くのではないかと思ってしまう道のり。孤独な時に聴こえて来る音や時間の流れを、映画の中に真空パックする。
今回も孤独な人間たちのすれ違いの物語。想いは決して交わる事がない。それは悲劇だけど、同時に喜劇でもある。

驚嘆のラストシーンは、解釈のわかれるところかもいれない。蔡明亮映画の中では『河』と並んで最も過激なラストではないかと思う。そんな映倫スレスレ、R-15指定は決定的なこの映画は、ベルリン映画祭で芸術貢献賞とアルフレッド・バウアー賞を受賞した。



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