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2014年度映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2014年度の映画ベストテンです。

                   



1 昔のはじまり(ラヴ・ディアス監督/フィリピン)
  とある農村で次々と起こる事件に戸惑う村人たち。1972年、マルコスがフィリピン全土に戒厳令を敷く頃を描く。『北(ノルテ)~歴史の終わり』に引き続き、フィリピンにおけるファシズムを追求した作品。豊かで荒々しい自然の風景とモノクロ映像、圧倒的ナラティブの5時間30分。東京国際映画祭にて。

2 収容病棟(王兵監督/中国)

3 GF☆BF(楊雅吉監督/台湾)
 1985 年戒厳令下から現代までの激動の台湾社会を背景に民主化運動に関わる3人の男女を描く。主人公たちと同世代の自分には他人事とは思えず、その青春の終わりが切なく胸に迫る。台湾映画=青春映画と相場が決まっていたのであるが、その終焉を告げられているようにも見えて感慨深い。台湾は成熟期を迎えているのか もしれない。

4 アデル、ブルーは熱い色(アブデラティフ・ケシシュ監督/フランス)
 自分の性に違和感を持っていた高校生アデルは青髪の美大生エマと恋に落ちる。一見、同性愛を劇的に描いているけど、その背景にあるフランス社会を緻密に描いているのが出色。

5 破裂するドリアンの河の記憶(エドモンド・ヨウ監督/マレーシア)
 レアアース工場建設で揺れる港町。そこで生きる高校生たちの夢と記憶の境界線上。テロを扱うかなり過激な描写もあるが、今在る世界を鮮やかに語る手腕に驚かされる。『タイガー・ファクトリー』(’10)のエドモンド・ヨウ&ウー・ミンジン(今回はプロデューサー)のコンビ作は今後も注目だ。東京国際映画祭にて。

6 36のシーン(ナワポン・タムロンラタナリット監督/タイ)
  映画のロケハン係の女子サーイと美術係の男子ウムが現場で出会ってからの歳月を記憶の断片のような36のシーンで表現する。36枚撮りフィルム写真の特性 をアイデアに、1シーン1カットの映像に置き変えたという実験的手法。時の移ろいや、相手を想う事が浮かび上がって来る。東京国際映画祭にて。

7 黄金時代(許鞍華監督/中国・香港)
  作家・蕭紅(シャオ・ホン)が31歳で死ぬまでの波乱の生涯を描く。魯迅と並んで彼女を取り上げるということは本来なら抗日プロパガンダ映画になることを意味するが、それを拒否するように史実に対し冷静であろうという態度が好感。何より俳優陣、美術、風景が絵巻物を観るように美しい。東京国際映画祭にて。

8 インサイド・ルーウィン・デイビス(ジョエル&イーサン・コーエン監督/アメリカ)
 ボブ・デイランが登場する前の60年代。芽の出ないフォークシンガーの紆余曲折の旅。どんづまり人生に乾杯。

9 イロイロ ぬくもりの記憶(アンソニー・チェン監督/シンガポール)
 97年アジア通貨危機を背景にギクシャクする一家。そこへやってきたフィリピン人メイドテレサが新風を巻き起こす。彼女が故郷へ帰って行くまでを少年目線で描く。生き生きした人物描写が良い。

10 郊遊 <ピクニック>(蔡明亮監督/台湾)


次点.(入れ替え可能作品。こちらも傑作ぞろい)
 新しき世界(パク・フンジョン監督/韓国)
 毒戦(ジョニー・トー監督/中国・香港)
 罪の手ざわり(賈樟柯監督/中国)
 トム・アット・ザ・ファーム(グザヴィエ・ドラン監督/カナダ)
 数立方メートルの愛(ジャムシド・マームディ監督/イラン・アフガニスタン)


個人的見解に過ぎないが、昨年は僕のアジア映画鑑賞にとって一つの区切りの年だったように思う。僕がアジア映画に没入するきっかけにもなったツァイ・ミン リャンが長編作から引退したこと、戦前からの日中映画交流史ともいえる山口淑子(李香蘭)が逝去したこと、そして中国でも絶大な人気があり昭和という時代を象徴する俳優・高倉健が逝去したことは、否が応でもその意味を訴えかけて来る。昔『日本侠客伝』を劇場で観た際、高倉健の着流し姿とその肉体に衝撃を受 けたことを思い出す。その格好良さは、大仰に言うと民族的な何かだったのではないだろうかとアジアのテーブルの上で考えている。また、台湾に続き香港でも全く新しい世代による民主化運動が起きた事は、新しい時代の萌芽を予感させる。

初出「旅シネ」


2015年度映画ベストテン
2013年度映画ベストテン


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