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2012年映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2012年度の映画ベストテンです。




1 ピエタ(キム・ギドク監督/韓国)
借金苦の町工場経営者から暴力的な取り立てをする若い男。天涯孤独だと思っていた男に、母親だという女が現れる・・・。監督曰く、資本主義について描いたそ うだが、現在の疲弊した経済システムの暴力性と魂の救済をキム・ギドク節で描いている。現代のイコンともいうべき傑作。フィルメックスにて。

2 果てなき路(モンテ・ヘルマン監督/アメリカ)
ノー ス・カロライナで起きた実際の事件を題材に映画を撮ろうとしている若手監督とそのクルー。事件の謎と、彼らが撮っている映画自体が、浸食し合い、(観客が 観ている)映画のリアリティに影響を及ぼしてくるという劇中劇映画。その映画的冒険に眩惑された。複雑な構造だが、ミステリーとしても面白いし、見応えがある。映画という虚構が生み出すリアリティという点で、柳町光男監督『カミュなんて知らない』(‘05)をちょっと思い出した。

3 ハハハ(ホン・サンス監督/韓国)
落語の与太話のようでいて、しかし着地点は見事な「男女6人夏物語」。呑んでいないのに、ほろ酔い気分にさせてくれる。(ちょっとHな気分にもネ!)統営(トンヨン)の風景も良かった。フィルメックスで観た『三人のアンヌ』も面白い。

4 ニーチェの馬(タル・ベーラ監督/ハンガリー=フランス=スイス=ドイツ)
震災の年にフィルメックスで観たときは、「勝手に世界を終わらせるな!」と怒りさえ感じた作品だが、この映画の存在感はやはり無視できない。東北の被災者と比ぶべくもないが、311の夜、我が家も停電のためローソクで過ごした。この先、いったいどうなるのだろうか・・・?映画のラストがその時の不安を思い出 させる。

5 別離(アスガー・ファルハディ監督/イラン)
歯車が噛み合なくなった二組の夫婦とその対立から、イラン社会に立ちはだかる現実をまざまざと見せつけられた。緊張感が全くとぎれない脚本と演出に手に汗握る。

6 ポエトリー アグネスの詩(イ・チャンドン監督/韓国)
毎度のことながら、人間の深淵さを見つめるその手法に感心する。

7 桐島、部活やめるってよ(吉田大八監督/日本)
体育部、文化部、帰宅部の人間模様を笑いと繊細さで見事に活写。自分の高校時代を見るような既視感。当時、8ミリカメラで、ある部のプロモーション・フィルムを作ったことを思い出した。これ観て自分のやりたかったこと、原点を思い起こした人も多いはず。

8 動物園からのポストカード(エドウィン監督/インドネシア)
父親に捨てられ、サンクチュアリのような動物園で育った少女は、カーボーイハットのマジシャンと外の世界へ。「自由」とか「帰属」とか哲学的思索が興味深い 作品。監督はマイノリティーである中華系で、自虐的視点で描いた『空を飛びたい盲目のブタ』(‘08)も驚きに満ちた作品だった。インドネシア・ニュー・ ウェイブの真打ち登場、と形容したくなる。東京国際映画祭の特集『インドネシア・エクスプレス』は、近年のインドネシア映画の豊饒を感じさせてくれる好企 画だった。ガリン・ヌグロホ監督の『目隠し』やリリ・リザ監督の『アタンブア39℃』も社会の暗部をえぐる秀作だった。

9 人生はビギナーズ(マイク・ミルズ監督/アメリカ)
マイク・ミルズは映画監督より先にグラフィック・デザイナーとして知られているが、以前、彼のお父さん(75歳でゲイであることをカムアウトし、ガンで亡く なった)の話を雑誌で読んだ事があった。その実話を下敷きにしているせいか、説得力があって、作り手の想いが胸に迫ってくる。

10 裏切りのサーカス(トーマス・アルフレッドソン監督/イギリス・フランス)
『ぼくのエリ』の監督だけあって、クールで緻密な演出が光る。今後も目が離せない監督になりそう。しかし、ゲイリー・オールドマンは、このまま老け役でやっていくのだろうか?

次点. 怪奇ヘビ男(ティ・リム・クゥン監督/カンボジア)
1970年に制作され、東南アジアで大ヒットしたという作品。ヘビの子供を身ごもった女の三代記。エロ・グロ・ナンセンスてんこ盛りのファンタジー・ホラーだが、 その豊かな映画表現に驚かされる。東京国際映画祭・アジアの風「ディスカバー亜州電影~伝説のホラー&ファンタ王国カンボジア」のプログラムより。ダ ヴィ・チョウ監督の『ゴールデン・スランバーズ』は、内戦で失われてしまったカンボジア映画史を、人々の記憶から蘇らせることを試みたドキュメンタリー で、こちらも素晴らしかった。

そのほか印象に残ったもの。入れ替え可能作品。
『15:The Movie』(ロイストン・タン監督/シンガポール)
『サンドキャッスル』(ブー・ジュンフォン監督/シンガポール)
『記憶が私を見る』(宋方監督/中国)
『私には言いたい事がある』(応亮監督/中国)
『テセウスの船』(アーナンド・ガーンディー監督/インド)
『スケッチ・オブ・ミャーク』(大西功一監督/日本)
『私が、生きる肌』(ペドロ・アルモドバル監督/スペイン)
『籠の中の乙女』(ヨルゴス・ランティモス監督/ギリシャ)
『ルート・アイリッシュ』(ケン・ローチ監督/イギリス)
『孤島の王』(マリウス・ホルスト監督/ノルウェーほか)
『ドライヴ』(ニコラス・ウィンディング・レフン監督/アメリカ)


昨年は、日活100周年、大映70周年、ということも あって、日本映画の旧作にやはり靡いてしまったのですが、足繁く通ったというよりはつまみ食い程度。かろうじて観た公開新作は、いずれもレベルの高い作品 が例年以上に多かった気がする。去年は案外、映画の当たり年だったのかもしれないですね。ただ、作品数が多く、公開期間が短いせいか、見逃す事も多く、そ のスピードについていけてない。僕の所には、観たい試写状もあまり来ないようで、え?そんなのやってたの?と後から気づく事もしばしば。アジア映画はそれ なりに注視してるんですが、5月に「SINTOK・シンガポール映画祭」に通い、例年通り「東京国際映画祭」「フィルメックス」に通ったくらい。今年は、 観るだけでなく、ある映画祭をお手伝いすることになるかも。

 
2013年度映画ベストテン
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