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第13回フィルメックス [アジア総合]

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第13回フィルメックス@有楽町 。11月23日(金)- 12月2日(日)。
(関連企画に木下惠介生誕100年、イスラエル映画傑作選など)

ホン・サンス、ゴバディ、アピチャッポン、マフマルバフ、ギドク、ギタイ、王兵と、今回もすごい顔ぶれだった。以下、ツイッターメモまとめ。

                   *   

【11月23日(金)】
『フフフ』も『次の朝は早番』も『教授と細野そして幸宏』も観てないけど、『三人のアンヌ隊員』を観た。東京フィルメックス初日のメモ。


●『三人のアンヌ』ホン・サンス監督(韓国)

もしも、茅項(モハン)海岸にイザベル・ユペール似のフランス人女性がいたら・・・3パターン。(ドリフの大爆笑を思い出す)ライフガードくんがいい味出してた。


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●『メコンホテル』アピチャッポン監督(タイ)

新作は新たな次元へ行くのかと思いきや『プリミティヴ〜ブンミおじさん』を踏襲・補完するような作品。ノンカイのメコン川の畔に建つホテルで映画を撮ろうとしている監督。目に見える現実/映画という虚像と、不可視の記憶や魂を並列する、虚実ないまぜの映像。
冒頭に監督自身が現れ、ギター奏者のChai Bhatanaと会話。おなじみのトンやジェンら俳優陣が世間話をしているかと思ったら、何者かに憑依されたかのようにセリフを紡ぐ。イサーン地方に伝わる妖怪ピー・ポープ、ラオスに帰りたがっているエメラルド仏の涙だという洪水のニュース。
マサトという日本人名は3.11の死者たちを強く想起させる。「次は馬、その次はフィリピン人の男の子に転生するよ」などの言葉。夕闇せまるメコン川。そこに浮かぶ流木に、転生を待つ魂を重ね合わせる。メ・コンのコンとはサンスクリット語でガンガ(インドのガンジス川)を指すらしい。


●『ティエダンのラブソング』郝杰監督(中国)

「二人台」の役者を父にもつ鉄蛋。文化大革命を経て成人すると、父の相方のメイの長女と恋におちる。が、彼女は蒙古族の男に嫁いでしまい、大失恋。全く気のない次女と結婚させられるが、ある日、村へやってきた劇団に加わり旅に出て、役者として成長して行く。
「二人台」は内蒙古自治区、山西・陝西・河北の北部で見られる伝統的な演劇。文革の時は禁止された。全編にその演目曲が流れ、劇団に合流して来たメイの三女はテレサ・テンを唱うミュージカル仕様。カメラワークとか女形とか、陳凱歌の作品を思い出した。1作目より飛躍的に素晴らしい画面構成に酔う。


【11月30日(金)】
一週間ぶりのフィルメックスで3本のプログラム。オムニバスの『チョンジュ・プロジェクト2012』、賈樟柯プロデュースの『記憶が私を見る』、キム・ギドク監督『ピエタ』。


●[チョンジュ・プロジェクト2012]

○『黄色い最期の光』ヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督 (スリランカ)

ダーウィンの進化論と輪廻転生を融合させた論文を書いた無名教師・父レジナルドについて回想する奇想譚。死期近づく父と森に入った少年は、成人して野生児になっている。森の中で生き残りの恐竜と遭遇。ラスト太陽が収縮していく(あるいは膨張か?)表現が面白い

○『グレート・シネマ・パーティー』ラヤ・マーティン監督 (フィリピン)

冒頭、太平洋戦争時、マニラ湾での日米の戦闘映像。突然男が出て来て「タルコフスキーもパザンも来るシネマパーティーの始まりだよ!」と人を食ったセリフ。監督とその仲間たちは、コレヒドール島で戦跡をめぐるツアーをしている。
米伊合作「サイクロン」をはじめ、たくさんの比映画ロケ地になった邸宅。レオン、エディ・ロメロ監督、アニータ・リンダ、スーザン・ロセス、エディ・グチェレスの俳優の名前。そしてガーデン・パーティ。暗闇にシューゲイザー系サウンドが延々続く。花火でストロボ風に映し出されるパーティー客。

○『私には言いたい事がある』応亮(イン・リャン)監督(中国)

上海の閘北派出所分局に押し入り、警察官6名を包丁で殺害したという楊佳事件を、写真、フィクション劇で描く実録もの。事を大きくしたくない当局によって、北京の安康医院(公安組織下の精神病院)に軟禁されていた母親の視点で描く。
息子は陥れられたのだ、という母親。多くの不審点。届けられた献花。当局を直接批判する告発の映画。監督の身の上が心配だ。母親が精神病院にいた143日の不在を示す、部屋の日めくりカレンダー。それをむしり取る不快音が耳に残る。事件は手続きを無視したスピード判決と死刑執行で片付けられた。


●『記憶が私を見る』宋方監督(中国)

ありそうでなかった家族ポートレートの映画。ソン・ファン(監督自身)は南京の実家(集合住宅)に帰郷する。両親の若かりし頃や、兄夫婦の子育て、生涯独身だった大叔父や、祖母の介護の話など、家族の歴史を日常会話の中に落とし込むセミドキュメント風の作品。
家族が川の字で寝る姿に、中国だなあ、アジアだなあ、と思わせる。ニワトリが素手で掴めない現代中国娘は、独身の負い目と、両親の老いを感じている。QAで話題にならなかったが、監督の本当の家族が、彼ら自身を演じているようだ。映画ではないが、シリーズ写真「浅田家」を思い出す。


●『ピエタ』キム・ギドク監督(韓国)

借金苦の町工場経営者から暴力的な取り立てをする若い男。返済めどのない者にはわざと事故を起こし不具者にさせ保険金を請求させる。そんな非道な男の前に、母親だと言う女が現れる。自分が孤児だと思っていた男に変化が現れ始める。資本主義についての映画。
久しぶりに観るギドク作品のせいか新鮮に感じられた。監督の3本指に入りそうな傑作。作家性は以前と変わらないが、丁寧に伏線を張っていたり、次々どんでん返しがあったり。一つのピエタ像からもう一つ別の像が現れたときはヤラレタ感。最近の映画に足りない熱い情動。ヴェネチア・グランプリも納得。しかし、共喰いならぬ玉喰いには驚いた。


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【12月1日(土)】
土曜日、フィルメックス参加最終日。クロージング作品のバフマン・ゴバディ監督『サイの季節』とサミュエル・フラー監督『東京暗黒街・竹の家』(55)。


●『サイの季節』バフマン・ゴバディ監督(イラン出身)

クルド人詩人のサヘル・ファザン(スンニ派バネー出身)と妻ミナ(シーア派)。彼らの運転手であるアクバルは、ミナに片想い。勢いで告白してしまう。怒ったミナの父(政府高官)はアクバルを痛めつけ解雇。しかし、79年のイラン革命によって立場が逆転する。
サヘルとミナは反イラン活動を行っていたという理由で投獄される。アクバルは軍人という立場を利用して、顔を隠しミナを犯す。月日はたち、ミナは二人の子供を獄中出産し、解放されるが、夫が死亡し異教徒の共同墓地に埋葬されたと聴かされる。そこへ現れたアクバルと仕方なく所帯を持つ事に。
2010年冬、イスタンブール。初老の男が自分の妻子を探していた。サヘルは生きていた。サヘルは偶然から、自分の娘と思われる少女と邂逅。ミナは祖国から逃れて欧州をめざしていたが立ち往生、刺青の彫師として生計をたてている事を知ると、彼女の元を訪ね、顔を隠し、背中に文字を掘らせる。
「国境に生きる者だけが新たな祖国を創る」。サヘルより先にミナを追いかけてきたアクバルをおびき寄せ、サヘルは心中という形で車に乗ったまま海へ。彼らの暗黒の歴史を葬り去るために・・・。重厚で凝った画面、詩人の世界観に圧倒されるものの、少し力み過ぎの演出という感じもする。
表題の「サイ」のほか、「誰も知らない猫」や、「空を飛ばない亀」、「酔っぱらった馬」も登場するので、監督の集大成的な意味合いの作品でもあるのだろうか?監督の友人で、27年間投獄されていたというクルド詩人Sadegh Karmangarをモデルに創られた。マーティン・スコセッシ製作。
(2014年6月公開予定)


●『東京暗黒街・竹の家』(’55)サミュエル・フラー監督(アメリカ)

東京でパチンコ利権をむさぼり、強盗を繰り返す米国ギャング団。そこへシスコから来たというならず者、エディ・スパニアが加わることに。実は、彼は潜入捜査官だった。日本人マリコ(山口淑子)の助けを借りて、ギャング団を追いつめていく。
クライマックスは、数多の日本映画のロケ場になった浅草松屋の屋上とスカイクルーザー。この時代の東京のカラー映像は貴重。ロケの映像と、ハリウッドで撮ったと思われる美術やセットの落差が微妙。ギャング団が襲撃のときにお揃いのPコートを着用。改めて観るとストーリー展開が良い。



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【第13回東京フィルメックス受賞結果】
◎最優秀作品賞『エピローグ』(アミール・マノール)
◎審査員特別賞『記憶が私を見る』(ソン・ファン)
◎観客賞『ピエタ(原題)』(キム・ギドク)
◎功労賞:ベヘルーズ・ヴォスギー
◎学生審査員賞『あたしは世界なんかじゃないから』(高橋 泉)



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