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ヴィザージュ [台湾]






ツァイ・ミンリャン監督の記念すべき9作目の作品『ヴィザージュ』(英題;face 原題: 瞼)は、あのルーブル美術館に収蔵されるために制作されたという。ルーブルが映画を美術品として収蔵するのは初めてのことで、200人の監督候補から選ばれたらしい。ポンピドゥーではなく、ルーブルなのが意外だけど、これはツァイ監督が名実共に、映画芸術の頂点に立ったことを表す出来事なんだろう。

今回のシャオカンの役どころは映画監督。どうやらトリュフォー自身が監督役として出演した『アメリカの夜〜映画に愛をこめて』をベースにしているように思われる。あの映画の舞台になった撮影スタジオを「ルーブル美術館」に置き換えてみると、判りにくいストーリーも少し納得が行く。シャオカンが撮ろうとしてる映画は戯曲『サロメ』。シャオカンがバスタブに横たわりビニールシートを体に敷き、そこにくねくねした踊りをする女がトマトピューレ缶をぶちまけて、頭だけ出したシャオカンにキスするシーンがあったが、あれが王女サロメがヨハネの生首にキスをするシーンだと思う。ここが映画の最大の見せ場になるのではないか。



QAで監督は、ジャン=ピエール・レオー(アントワーヌ)と李康生(シャオカン)の「顔」を並べたかったといっていた。ジャンヌ・モロー、ファニー・アルダンなど、縁のある俳優たちが登場し、全編にわたりトリュフォー映画のエッセンスが散りばめられているように見える。
あくまで推測なのですが、例えば、こんな具合。

・シャオカンの母親の葬式のシーン。台湾の道教式の葬式では「ジ−ジャ」とよばれる紙細工を天国への供え物として焼く習慣があり、その炎の場面がありましたが、これは紙(書物)が焼ける温度=『華氏451』を暗示していそうだ。
・死んだ母親の供え物をムシャムシャ、ポリポリと食べるファニー・アルダン。シャオカンの隣に添い寝する姿も。幽霊になった母親(陸弈静)は雲呑食べながら嫉妬の涙を流す。ファニー・アルダンの住む部屋の見えるアパルトマンと、その隣に薄汚れた窓のないビル(ルーブル美術館の側面なのか、シャオカンのアパルトマンなのかわからない)を映したショット。これはまさしく『隣の女』ではないか。
・美術絵画のたくさん出てくるトリュフォー映画といえば、若い作家志望の画商(J=P.レオー)とイギリス人姉妹の三角関係を描いた『恋のエチュード』。黒いガムテープで鏡や窓を覆っていく赤毛の女は視力の悪くなっていく妹、暗闇の中でライターの火で抱き合う男女は、姉の方か?(『アデルの恋の物語』の可能性も)闇を作っていく行為=アメリカの夜と呼ばれる疑似夜景。トリュフォーはロウソクの灯火で撮影した監督としても有名でそのニュアンスもありそう。
・重い衣装を纏った女優が螺旋階段を降りて、地下へ降りていくシーン。これはナチス占領下の劇場の地下室でユダヤ人の夫を匿った女優と劇団員を描いた『終電車』か。
・下水道のシーン。赤い服を着た女をシャオカンが追う。『アデルの恋の物語』のアデルの父親のビクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』からか。キャメラマンの影のシーンは『ヒッチコック映画術』か。
・シャオカンがJ=P.レオーと映画談義するシーンは、『大人は判ってくれない』のアントワーヌ少年のアドリヴ風のインタビューを連想させる。李康生はミゾグチを本当に知らないのかも。『大人は判ってくれない』の海辺のシーンのパラパラアニメも出て来た。
・最高に良い味を出していた鹿ですが、これは『アメリカの夜』に準えると子猫を撮るシーンとも重なりそうだが、やはり野生の鹿を手なずけたということで『野生の少年』がハマるんじゃないだろうか。

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