SSブログ

20周年 [台湾]



今年20周年(!)を迎える東京国際映画祭ですが、初日は、エドワード・ヤンの追悼上映『光陰的故事』('82)から始める事にした。

この映画、台湾ニューウェイブの萌芽ともいうべき映画で、4人の監督によるオムニバス形式。それぞれ小学生、中学生、大学生、若夫婦を主人公にし、監督たちが育った時代を綴り、そのまま戦後の台湾の歩みを体現させているような構成。(そういえば侯孝賢の悲情城市に赤ん坊=台湾が生まれる有名なシーンがありました)
そのオムニバスの2話目「指望」がヤン監督の作品で、これがまあ他の監督のとは別格の出来ばえ。風格が、質感が違う。傑作なわけです。ビートルズがテレビがら流れてくる時代、初潮を迎えたばかりの女の子が家に間借りした大学生に初めて恋心を抱くという話。主人公姉妹が男子大学生の裸をまじまじと眺めるシーンはこちらがひるんでしまうほどひどく艶かしい。また、ヤン監督自身を思わせるような、背の低い眼鏡の少年(当時、中高生は学科に軍事訓練があった時代で、カーキ色の制服を着ている)が登場し、乗れない自転車を一生懸命練習するという挿話がある。「自転車は乗る事が出来るようになったけど、行きたいところがわからないんだ」という政治的なニュアンスを持った言葉をしゃべらせている。

そして今日は『タイペイ・ストーリー』('85)を観る。上映前には蓮實重彦氏による追悼の言葉があり、数々のエピソードを披露してくれた。レスリー・チャン主演で「アサシネーション」という映画を撮ろうとしていたこと、チャンの死でそれが頓挫したこと。ポーランドの映画祭の審査で、氏が『恐怖分子』を熱烈に押したが適わなかった事、また東京国際映画祭の最終日に、「クーリンチェ少年殺人事件』の審査員特別賞受賞の際、学生を総動員してオベーションを行ったことなど・・・。そして最後に侯孝賢監督作の『冬冬の夏休み』のラストシーンに登場するヤン監督の映像を流し追悼の言葉を締めた。

侯孝賢(若いし,演技もうまい)演じる隆(ロン)はかつて少年野球のエースで、世界大会に出るほどのヒーローだった。彼の幼なじみでガールフレンドもある貞(チン)は上司とただならぬ関係になっており、仕事を辞めることに。隆と貞、二人の男女の微妙な関係を軸に、彼らのとりまく環境、台北の街が描かれる。貞の父親の借金をなんとかしてやろうと奮闘する隆だが、東京で別の女と密通していたことが貞にばれ、二人でアメリカへ移住しようという夢も絶望的な泥沼の状況。なんとかやり直そうとする中で悲劇が待ち構えている。
街に光るフジフィルムや、NECのけばけばしい電飾看板。銀座という名のカラオケバー。ティナやライオネルやマイケル、ケニー(ロギンス)の音楽が流れるあの時代。東京はバブルに突入し、その経済波及が台北にも及んでいる様子。変化から取り残されそうな昔気質な男と、自由を獲得して行く女。ラストシーンでゴミとして捨てられたテレビから流れてくる映像が切ない。

91年に東京国際映画祭に出品された『クーリンチェ少年殺人事件』は当時の中国政権の圧力によって、台湾からの出品を許されず,アメリカ映画扱いの出品だったそうである。今回は諸事情と、各国の回顧上映でフィルムが手配できなかったそうだが、日増しに無性に『クーリンチェ〜』が観たくなって来た。4時間バージョンで。
代わりに、キム・ギドクのチャン・チェンでも観ようかと思ったが、前売りチケットは既にソールドアウトなのだった・・・・。

ちなみに記憶が曖昧なのですが、初めて東京映画祭に参加したのは第一回目の協賛企画「フェデリコ・フェリーニ映画祭」(87年)だったようだ。先日、そのパンフレットが出てきた。そうそう、1987年という年は38年続いた台湾の戒厳令が解かれた年でもありました。

台北(たいぺい)ストーリー (新しい台湾の文学)

台北(たいぺい)ストーリー (新しい台湾の文学)

  • 作者: 白 先勇, 朱 天文, 張 系国
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 1999/06
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

愛の初體驗高麗葬 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。