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シット・テーク! [タイ]

シット・テーク

シット・テーク

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ピーエスシー
  • 発売日: 2005/09/07
  • メディア: CD



『Chit-tak!』というのはタイの若手作家プラプダー・ユンの長編小説のタイトルで、小説の中で頻繁に使われている造語でもあり、「くそったれ!」の意味があるそうだ。

19日、つけっぱなしの深夜放送から流れてきたニュース速報の「軍事クーデター」の文字。まさか21世紀に入って東南アジア民主化の優等生タイ王国でクーデターだなんて。最近のバンコクの先進性みたいなものを周りに吹聴していた者にとってはまさに『シット・テーク!』な気分だった。

戦後、過去18回ものクーデターが起きていて、「いつものタイのお家芸だ」とタイ通の間では楽観する意見が多い。だが、91年のクーデターの際はやはり無血だったのに、翌年の民政移行期に軍部・警察とデモ隊の衝突が起きて44人の死者が出たことも忘れてはならないだろう。実はこれからが正念場なわけだ。

国民の80%が今回の事件を支持するという世論調査が出ているので、多分大きな問題は起きないとは思うものの、国際的な信用を失い、97年制定したばかりの民主憲法を反故にしてしまったのは非常に残念。15年前に逆戻りしてしまった、という欧米メディアの批判は、さらにこの事件が他の東南アジアの国のクーデターを引き起こしてしまうのではないかとも憂慮している。(たぶん、フィリピンやインドネシアの)

「楽観」の大きな要素は現プミポン国王への国民の信頼感があるからであって、高齢の国王がもし崩御された後もこのような事を繰り返すのなら、この国の未来は深刻なものになる。その理由は、後継者問題。後継者と目される人の評判は著しく芳しくないと聴いている。

上のCDは『Chit-tak!』という小説のサウンドトラックというコンセプトで制作されたもので、Smallroomの中心人物Jay(Penguin villa)とプラプダー・ユンによって結成されたユニットBUAHIMAによる作品。最近のバンコクカルチャーを象徴する重要な作品のひとつだと思う。とても軍事クーデターが起きるような国で生み出された音には思えない。

小説の舞台は2666年の未来で、タイは南北に分断されているという設定。
今回のクーデターの深層には、都市部の中間層と農民層との政治的な対立が挙げられているが、この国を分ける階層の違い、富める物とそうでないもの。変化を望むもの,望まないもの。そんな根深い諸問題が、見え隠れする。

タクシン政権は同族グループ会社への利益誘導とか、批判的なメディアに対して規制をしたりと、都市部では全く不人気だったが、低金利による融資制度や、借金返済猶予策などの農業行政改革を行い、貧困に喘ぐ農民の大きな支持を受けた。実はそれまで”プロジェクト”という形でタイの農業制度を整備して来たのはプミポン国王を中心とする勢力だったことはあまり知られていない。通貨危機後、強引ともいえる手法でタイ経済を立て直して行った新保守派タクシン政権だったが、既得権益を踏みにじられた旧保守勢力によって巻き返しをくらったというのが事件の概要だろうか。







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