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石けり遊び [中国]

A Wishful Way
跳房子/Hopscotch(2002)

Modernsky


跳房子(ティアオファンズ、英語名=Hopscotch)の処女作にして傑作。

ポスト「フェイ・ウォン」の呼び声も高い、田原(テイアン・ユアン)を含む武漢出身の3人組。
全曲英語詞のアコースティックを基調にしたギターポップにもかかわらず、どこか大陸的な感じがする。例えば「soldier」という曲。田原の透明感あふれ、しかもキュートさとセクシーさを兼ね備えている声は、都会的というよりは大平原などの自然が似合う。東洋的とも西域民族系ともとれるメロディライン、うねるギター音。親しい人と別れ、土煙を上げるトラックに揺られながら、辺境の地に送られる若い中国兵士の連隊が目に浮かぶようだ。

また、表題曲の「a wishful way」は中国各地のローカルラジオ局のランキングで英語の曲にも関わらず数週間に渡り1位を獲得した実績を持つ。これは中国では前代未聞のことらしい。世界に通じる名曲だと思う。
彼らの出身地、武漢(ウーハン)は内陸部へ流れる長江の基点とも言える都市で、戦前は日露独英仏の租借地でもあり、雰囲気ある建築物も残っている所。また、経済発展著しい沿岸部と内陸部を分ける分岐点でもある。そう考えると、この音に妙に説得力を感じてしまう。



田原はティアオファンズで作詞、作曲、Vo, Keyを担当しながら、小説も書き、女優もこなすという逸材。 このアルバムを製作した2001年は、驚くべきことに16歳(!)だったという。ということは、現在20歳。早熟の天才といってもいだろう。ルックスとカリスマ性を兼ね備え、大衆性も獲得できる彼女は新世代中国ポップカルチャーの切り札かもしれない。
このアルバムを出した翌年、スウェードの北京公演の前座を勤めた後、バンドは活動休止状態に入る。田原が大学に進学のため、学業に専念したことと関係しているようだ。(現在は北京言語大学在籍)また、最近はテイアオファンズ名義ではなくソロ活動が目立っているが、契約の問題も絡んでるらしい。

田原の小説『斑馬森林』(英題:Zebra woods)
2002年発表。
2005年、『流砂』という小説を発表の予定だが、、、。


『胡蝶〜羽化する官能』(2004)
監督:ヤンヤンマク
出演:ジョシー・ホー、田原、エリック・コット
そんな彼女が、香港の新鋭・ヤンヤンマクの長編第2作、『胡蝶』(butterfly)(2004)に出演した。

過去に女性を愛したことがあるレズビアン的経験を持ちながら、何不自由の無い生活をしている一児の主婦。そんな30代の女性が田原演じる若い女と出会い、封印していた感情を抑えられなくなる。1997年、香港返還を目前に高まる民主化要求運動。4.5天安門事件で囚われの身となった魏京生釈放を訴えるデモの様子を報じるTV映像。彼女の母も、中国の政治混乱から香港に逃げて来た経験を持っていた。政治的な自由と、セクシュアリティの解放への渇望と葛藤が交互に、等価に語られる。そして、ついに、そのバービー人形のように端正な顔立ちをした主婦(ジョシー・ホーが演じているのだが、残念ながら存在感に説得力が感じられない)は自らの殻をやぶり、全てを捨て(子供を置いて!)、彼女の元へ走るのだった。

上のCDジャケットの田原は、ダッフルコートが似合いそうな「エエとこのお嬢さん」という感じだが、この映画の中の彼女は、あまり洗練されているとは言えない、ある意味粗野だが健康的な女の子に映った。劇中、ギターを弾き語りするシーンもある。監督も彼女の歌に惚れ込んで、映画に起用したようだ。

そして、今年の東京国際映画祭出品作の中国映画『呪い』(2005)にも主演している。
中国では珍しいホラー、という言う触れ込みがあったが、どうやらミステリー・ラブ・ロマンスらしい。ポスターは健康的な肢体を露にしているのだが、なんだかテイアオファンズの世界観から遠く離れた場所に行ってしまっている感じもする。主題歌も彼女が歌ってるとのことだが、テイアオファンズ名義なのか今のところ、不明。
見てないのにこういう意見をのべるのよくないのだけれど、ポスターから感じた印象で言わせてもらうと、借金苦にでも追われているのか、極悪マネジメント会社に幽閉されているのか、仕事を選ばず働かされている雰囲気がしなくもない。(笑)

『呪い』(2005)
監督:李虹、
出演:フランシ・ン、田原


ティアオファンズは元々は劉利敏(リウ・リミン(g、b)を中心に結成されたバンドで、もう一人のメンバー李濤(リー・タオ)(g、b)との変則的なバンドだったらしい。2001年にヴォーカリストとして、田原が加入し、1ヶ月足らずでこの傑作を作り上げたようだ。クレジットを見ると、大半に田原の作詞、作曲が絡んでおり、やはり彼女抜きにはこの作品が生まれなかったことがわかる。しかし、この素朴でバランスのいいアレンジは捨てがたい。
田原にはティアオファンズとして活躍してほしいと切に願わずにいられない。

参考文献: Chinese Rock database Indie pop noodle
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