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2009年度映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2009年度映画ベストテンです。






1 玄海灘は知っている(キム・ギヨン監督/韓国)
 1961年の作品だが、復元された形では本邦初公開。太平洋戦争末期、名古屋で訓練を受ける朝鮮人学徒兵と日本人女性の恋愛を軸に描く青春戦争映画。全編朝鮮語なので、日本兵による虐待のシーンは逆に朝鮮の軍隊に入ったような錯覚に。名古屋空襲の事実が漏れないように情報統制が敷かれていたという事実も盛り込んであり、日本映画が描いてこなかったもうひとつの視点・歴史がここにある。死体の山から主人公が蘇るシーンは圧巻だ。東京国際映画祭にて。

2 春風沈酔の夜(ロウ・イエ監督/中国)
 南京を舞台に、ゲイのカップル(一方は既婚者)の周辺を描く。肉体関係で繋がっている一固まりの群衆の「関係性」が、ある事がきっかけで次第に個性を発揮してバラバラになって行く様子を淡々と描く。カメラの揺れが書画の筆使いのようだ。東京フィルメックスにて。

3 タレンタイム(ヤスミン・アフマド監督/マレーシア)
 急逝した女性監督の集大成ともいえる渾身の一作。タレンタイムという学芸会に出場するマレー系、中華系、ユーロ=アジアン(混血)系、そして舞台にすら上がれないインド系の高校生たちの家庭背景を描きながらマレーシア国家を表象する。東京国際映画祭にて。

4 チェンジリング(クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
 「グラン・トリノ」を批判したいけど、長くなりそうなのでやめておこう。

5 母なる証明(ポン・ジュノ監督/韓国)
 映画的文法をすべて習得してしまったかのような巧みさだ。今回も韓国人の「顔」を活写。

6 ペルシャ猫を誰も知らない(バフマン・ゴバディ監督/イラン)
 非合法のインディーバンドがロンドンでライブを開くために、パスポートやヴィザを取得しようと奔走するが、悲劇の顛末に。6月の暴動の背景を示唆するような内容。テヘランのアンダーグラウンドミュージックの紹介もあり、とても興味深い。しかし、この映画を撮った事でゴバディ監督はイランにいられなくなってしまった。東京フィルメックスにて。

7 アバンチュールはパリで(ホン・サンス監督/韓国)
 パリでぶらぶらしたくなる。

8 時の彼方へ(エリア・スレイマン監督/イスラエル・パレスチナ)
 キリスト教系パレスチナ人のスレイマン監督の自伝的映画。家族の歴史とイスラエル・パレスチナ現代史をアイロニーとブラックユーモアを交えて描く。東京国際映画祭にて。

9 ジャライノール(ジャオ・イエ監督/中国)
 『馬烏甲』の監督の2作目。内モンゴルのジャライノールの炭坑で蒸気機関車の運転士をしている初老の男と若い同僚。初老の男が退職していくのを、ひたすらに追いかけ見送る若者。前作とは違って陰影のある力強い風景と人々の表情が素晴しい。中国インディペンデント映画祭にて。『グッド・キャット』『小蛾の行方』も無視できない作品だ。

10 九月に降る風(トム・リン監督/台湾)
 清々しくもリアルな青春群像劇。台湾映画=青春映画の方程式を堅持。

次点、入れ替え可能作品
心の魔(ホー・ユーハン監督/マレーシア)
ミルク(ガス・ヴァン・サント監督/アメリカ)
リミッツ・オブ・コントロール(ジム・ジャームッシュ監督/アメリカ)
ヴィザージュ(ツァイ・ミンリャン監督/台湾=フランス)
愛のむきだし(園温子監督/日本)
フィルメックスで観た「息もできない」も素晴らしかったが、来年公開が決まっているので除外。


2009年も旧作鑑賞とアジア映画に明け暮れた一年だった。
念願叶って見る事ができた「無垢の詩人G.アラヴィンダン」、ちと重かった「北朝鮮映画週間」、久しぶりにスクリーンで観た「成瀬巳喜男の世界」、エリック・クーを中心に新鋭たちの隆盛がめざましい「シンガポール映画祭」、一日のみ参加した「アジア・クイア映画祭」、「ジャン=ピエール・メルヴィル特集」、「ヴィタリー・カネフスキー監督特集」、毎年恒例となりそうな「中国インディペンデント映画祭」など、特集企画も充実していた。今年は「絶対コレだ!」という映画はなかったけど、良質な映画が団栗の背比べ状態で並んでいて、いつもながら選ぶのに苦慮した。

 
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