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細い目 [マレーシア]

今週末から開催される第19回東京国際映画祭
「アジアの風」部門では『マレーシア映画新潮』と題して、『細い目』のヤスミン・アハマド監督の全作品を含むマレーシア映画が特集上映されるようだ。
    

昨年の同映画祭で観た2本のマレーシア映画は、プログラマーのセンスを感じさせるものがあった。以下はそのメモ。『細い目』は今年も上映される予定。


"Sepet"  directed by Yasmin Ahmad

○『細い目』(2004)ヤスミン・アハマド監督

主人公のマレー系の女の子は金城武の大ファンで、いわゆる”中華明星迷”。一方、露天でVCDを売る中華系の少年は、裏社会の少し危ない連中とつきあいがある。そんな二人はひょんなことから知り合い、恋に落ちる。

 マレーシアを旅すると、マレー系と中華系が(ときどきインド系も)入り交じる事なく、一定の節度を持って住み分けをしているような印象を受ける。劇中では民族間の距離感とか、民族の違う二人が恋することの様々な障壁を描いている。
印象的なのは、女性監督ならではの、二人の母親の描き方。またマレー系の中流家庭の明るい家庭像は幾分誇張がありそうだけど、夫婦間のピロウ・トークなんかもコミカルに見せたりする。モスリムのイメージを覆すようなおおらかな表現だ。

そして物語は香港ノワールの枠組みを借りて、意外な結末を迎えることに。観客は声を立てて笑ったかと思うとすすり泣きをはじめたり、ヤスミン監督のストーリー・テリングの巧みさにハマっているのがわかる。
ただ、セリフ過多なところがあって、もっと淡々としてくれた方が自分好みなのだが、これもまたヤスミン監督の持ち味なのだろう。

"Sepet" is Malay for "single eyelid" but pejoratively it means "slit eyes".From this provocative title the film penetrates stereotypes of race and narrative to explore the complexities of a multiracial society that has institutionalized the superiority of the Malay race and Islamic religion.
(48th SF International Film Festival )





"Monday morning glory"  film by Ming Jin Woo


○『マンデー・モーニング・グローリー』(2005)ウー・ミンジン監督作品

東南アジアのあるナイトクラブでで爆弾テロを起こした集団と、彼らを追う警察の話。
9.11後のバリ島の爆弾テロをなぞらえていると思われるが、監督曰く、テロ実行の「シミュレーション」をしてみるとどうなるのか、というテーマで制作したものだという。
テロリストの若者が、恋人と逢瀬を忍ぶシーンもあるのだが、なぜか感情移入できない。彼らを検挙した捜査官(中華系)たちにも感情移入できない。つまり、どちらかへの共感も反発もなく映画は終わる。確かにに「シミュレーション」をやっているだけで(それも僕らの想像を超えない範囲内で)、残念ながら映画的な高揚感は得られなかった。

実はこのミン・ジン・ウー監督は中華系で、マレーシアでこの映画を作ることの難しさ、彼らの民族間の距離感や身の置き方が図らずも映画に出てしまってるのではないかと思う。
実際、マレー系モスリムの人々は9.11のテロには寛容な意見が多いそうで、なぜこういう映画を撮るのか非難めいた意見もあったという。タイトルは警察官から観た犯人を検挙したという「栄光」という意味でつけられたもので、これまたアイロニーととればいいのか、監督が警察側に立っているのかも、いまひとつはっきりしない。
テロリストの若者たちにシンパシーを感じるのか、あるいは徹底的にテロという暴力を否定するのか、そういう視点があまりにも希薄だった。

以前観たマレーシア映画のほとんどは、マレー系民族内で完結していた。
マレー系の女流監督と中華系の監督がマレーシアの民族間のセンシティヴな部分を描いているという点で、とても興味深い2作品だった。


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