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シチズン・ドッグ [タイ]

東京国際映画祭で、ウイシット・サーサナティアン監督の第2作目、『シチズン・ドッグ』を観た。

ちょっと抜けたところがある田舎の青年が大都会バンコクに働きに出て来る。そして、やはり田舎から出て来た潔癖性で思い込みの激しい掃除婦の女の子に恋をする、、、。筋書きはいたって普通だが、これが相当にヘンな世界観の中で展開される。『シチズン・ドッグ』のタイトルから『市民ケーン』なんかを想像していたのだけれども、主人公が白日夢を観ているような感覚があることからダニー・ケイ主演の『虹をつかむ男』に近いものがあると思った。

 前作の『怪盗ブラック・タイガー』同様、蜷川美花やアルモドヴァルもびっくりの合成着色料のような色彩感覚。そしてさらに磨きのかかったユーモア。今回、監督がこだわったのは文学の修辞法でいうところの「比喩表現」と「強調法」を徹底的に映像化することだったんだろうと思う。どういうことかというと、「山のようなペットボトルのゴミ」という表現があったら、ビルより高い富士山のようなペットボトルのゴミの山が出現し、「死人のように青白い顔だね」というセリフがあったら、昨日まで生きていた人間が、今日は死んだ事になっている、、、、というような。まるで、修辞法によって物語を紡いでいるようだ。


Jean from 'Sliva bastards' at Soi music festival ,Tokyo, 2004

主演は昨年のソイ・ミュージク・フェスティバルで「サライバ・バスターズ」というロックバンドのフロントマンとして来日した、ジーンことMahasmut Boonyaraksh。(キアヌ・リーブスにちょっと似ていると思う。)既にこの映画の存在を知っていたので、「君は俳優なんでしょ?」と訪ねたところ、「僕はミュージシャン。映画は頼まれたから出演しただけだよ」という答えが返ってきたのが印象的だった。
(サライババスターズはフランツ・フィルディナンドに成り損ねてしまったような、あるいは、NYパンクのtelevision的アプローチをしているバンド。一度聴いたら、クセになってしまう不思議な魅力がある)

全編にモダンドッグの曲、「...kon」のカバー曲がフィーチャーされている。そして主人公の名前はPodという設定。ということは、タイトルの『シチズン・ドッグ』はバンド名『モダンドッグ』の文字りなのだろうか??ちなみに原題はMa Nakornで”都会の犬”という意味。
また、抑揚のないクールなナレーションはペンエーグ・ラッタナルアン監督によるものだった。



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モンキーカネコ

『ミッドナイト・マイ・ラブ』も秀作でした。

タクシー運転手と風俗嬢のプラトニックな恋愛物語、なのですが、これが完璧なくらい良く出来ていました。そして泣けました。
by モンキーカネコ (2005-10-29 01:18) 

164ぃ

はじめまして、お邪魔します。
私も同じ会場で観てました。SalivaBastardいいですよお。その後前年に引き続きSOIにいきMDアクトも楽しめました。
by 164ぃ (2005-11-13 07:37) 

モンキーカネコ

164ぃさん、書き込みありがとうございます。

Saliva Bastard早くCD出ないですかねえ。
バンコクではノート君のパーティー「Dude sweet」にFutonと一緒に出演するようです。
by モンキーカネコ (2005-11-14 00:00) 

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