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香港特別芸術区 [香港特区]

香港 特別藝術区 ~香港アート&カルチャーガイド

香港 特別藝術区 ~香港アート&カルチャーガイド

  • 作者: 中西 多香
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2004/12/23
  • メディア: 単行本





1997年の英国から中国への香港返還は、歓迎されるべき喜ばしい出来事のはずだった。歴史的に、大アジア主義的に観れば、あの屈辱的なアヘン戦争で割譲された植民地が本来のしかるべき場所に戻ったのだから。だが、それ以上に不安を煽ったのは政治体制の異なる中国政府の強力な中央集権のスタイルと不確かさだった。金のある人々は海外へ脱出し、香港は急速に魅力を失ったようにみえた。

SARSという不幸な出来事も重なった。ジャッキー・チェンがユーミンと共に出演した香港観光協会のCMだって、古めかしく映った。この本によれば、1993年には248本作られていた香港映画は、2003年には77本に激減。レスリー・チャンの死は象徴的だった。香港映画は韓国映画に取って代わられてしまった。

だが、香港で生きて死ぬ事を決意した新しい世代は、その不安と逆境をバネにして、新しい物を産み出そうと動き出した。拝金主義に走りがちな香港カルチャーは、量より質で勝負するようになった。
例えば、音楽で言えば、インディーバンドのThe Pancakes のDejayが地道にやってきたことが徐々に実を結びつつあるし、映画だってフルーツチャンやヤンヤンマク、ジョニー・トーなどの新しい才能が古い世代と取って代わり、「インファナルアフェア」のようなとびきりの秀作だって再び作られるようになった。実のところ、製作本数は減っても、一本の興行収入は増えているのだそうだ。

この本はそんな香港の新しい潮流を余すことなく伝えてくれる。
マイケル・チョンやマイケル・ラウは知っていても、香港の作家主義的なマンガ家の動向は全く知らなかったし、点でしかなかったアーティストたちの背景をきちんと線で結びつけ説明してくれる様は鮮やかだ。そしてドブネズミのように美しい香港の街並を写したフォトグラフ。あの九龍砦は消失してしまったが、まだその残り香は所々残っている。

中国政府は1997年から50年間の間、香港の資本主義制度と生活様式を守ると約束した。
50年後の2046年を見据えて、過去のノスタルジイと未来への不安を描いたウォン・カーワイの『2046』には作品的には失望を感じたけれども、中国本土に少しずつ吸収され、ある種の緊張感を保ちながら、新たな魅力を放ちつつある香港を感じさせてくれる。

  


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