pixel toy [香港特区]
愛・科学〜Science of love~ Pixel Toy (2005) |
ピチカートV、Spank Happyを通過した今となっては、どうよ? と疑問を持ちながら、購入からはや半年以上が経ってしまった。でも、キャッチーなメロディ、耳に残るシンセワークはなかなかなものだし、全体的にキッチュでチープな感じがどこか香港ぽさを表してるなあ、と、久しぶりに訪れた香港の東方188商場周辺を歩き回ったのを思い出しながら聴いていマス。
逹明一派のメンバー、黄耀明(アンソニー・ウォン)をはじめとするインディーレーベル「人山人海」(people mountain people sea)から、昨年デビュー。作曲を手がける何山(ホーサン)と、ボーカル&作詞の胡詠絲(ウー・ウィンシー)の2人によるエレポップユニット。アニエスbのサポートも受けているようだ。
http://www.pixeltoy.org/
4曲のPV+14曲のオーディオトラックを収録。VCDプレーヤーでないとPVは再生されないので注意が必要。 「喘一口氣」は、男性スキンケア製品のプロモーションに使われたそうだ。一度聴くと、パティ パティ パティ...っていうフレーズが頭から離れず、いつの間にか口ずさんでいる自分がいる。(笑)広東語曲のほか、英語の「Good Morning」「Good Evening」、北京語の「説説看」収録。
説説看/Pixel Toy(2005)
ウィン・シャ [香港特区]
A part of 『attraction distraction 』 poster by Wing Shya
森アーツセンターギャラリーで開催中の『Wing Shya Exhibision』を覗いてきました。
ウィン・シャはウォン・カーワイ映画のスチールで有名な人物ですが、映画のスチールというのはどちらかというと撮影監督のクリストファー・ドイルに依るところが大きいのでは?と懐疑的でした。でも、それは大きな間違いだったことが彼の作品の全貌をみてわかりました。もちろん、彼らの多大な影響はあると思いますが、『2046』のスチールなんぞは、映画のフレーミングより、ずっと良い感じがしました。
そのほか、松浦亜弥を含むアジアのスターたちのポートレイトやファッション写真もいいのですが、中国の少林や桂林を舞台にした素朴さとエロスを両面持った写真は物語性もあって、とても印象的でした。アジアン・クールに痺れました。
http://www.wingshya.jp/
http://www.wingshya.com/
パイナップルパン王子 [香港特区]
Mucdull, Prince de la bun.
香港で大人気のキャラクター、「マクダル」をご存知だろうか。
1997年、「春田花花幼稚園 マクダルとマクマグ」というタイトルでTVアニメシリーズが始まり、爆発的な人気を集めて以来、最も支持されている香港産の「ブタ」キャラである。
その劇場版オリジナル映画、第2弾「マクダル・パイナップルパン王子」が今日から日本で公開される。
注目なのは、アンディ・ラウなどの大物スターはもちろん、チェット・ラムやジャン・ラムなどのサブカル系アーティストも声優として参加していること。なんとDejay, a.k.a The Pancakesは声優とともに主題歌も担当しており、この曲で2004年度香港電影金像奨最優秀主題歌賞を受賞している。
ブライアン・ツェー(物語)、アリス・マク(絵)の原作者による絵本も発売中。
オクチュンの憂鬱 [香港特区]
stealstealground stealstealground(2005) |
香港からこういう音が生まれてくるとは、思いもよらなかった。
いくつかの特徴を挙げてみる。
1.アー・ウィンとペニーレーン という名前の兄妹によるデュオ
2.アシッド・フォーク系
3.ヴィンセント・ギャロがクロディーヌ・ロンジェをプロデュースしたような音
4.オノ・ヨーコにインスパイアされた曲、エリオット・スミスに捧げられた曲、を含む全曲英語詞。
5.stealstealground = secretly
ユニット名は偸偸儿的(こっそりと)の発音が偸偸儿「地」と同じ発音から来たもの。(「偸」は「盗」の意味。)
6.サバービアの憂鬱
そこはかとない狂気が孕んでいる。
近親相姦の果てに、悩んだ兄妹がオクチュン(屋邨…香港の公団住宅ビル)の屋上から投身しそうな音楽、といったら誇張しすぎだろうか。(笑)
でも傑作の予感。
香港でイベント [香港特区]
i wonder why my favorite boy leaves me an EP the Marshmallow Kisses(2004) |
6曲目、どこかで聴いた事があるなあ、と思ったら、雑誌「米国音楽」のサンプラーCDに入っていた曲だった。男女のデュオで、アコーステックを基調にちょっと気の利いた電子音。キュートな7曲。The Pancakesにも通じるものがある。
そして新世代の「二楼書店」として注目を集める阿麥書房がコンパイルしたアルバムにも2曲参加している。こちらはラウンジ系色が強い。
看不見的城位市漫遊〜inbvisible cities journy 阿麥書房vol1 シーマン・ホーがジャケットのイラストで参加している。 |
香港特別芸術区 [香港特区]
1997年の英国から中国への香港返還は、歓迎されるべき喜ばしい出来事のはずだった。歴史的に、大アジア主義的に観れば、あの屈辱的なアヘン戦争で割譲された植民地が本来のしかるべき場所に戻ったのだから。だが、それ以上に不安を煽ったのは政治体制の異なる中国政府の強力な中央集権のスタイルと不確かさだった。金のある人々は海外へ脱出し、香港は急速に魅力を失ったようにみえた。
SARSという不幸な出来事も重なった。ジャッキー・チェンがユーミンと共に出演した香港観光協会のCMだって、古めかしく映った。この本によれば、1993年には248本作られていた香港映画は、2003年には77本に激減。レスリー・チャンの死は象徴的だった。香港映画は韓国映画に取って代わられてしまった。
だが、香港で生きて死ぬ事を決意した新しい世代は、その不安と逆境をバネにして、新しい物を産み出そうと動き出した。拝金主義に走りがちな香港カルチャーは、量より質で勝負するようになった。
例えば、音楽で言えば、インディーバンドのThe Pancakes のDejayが地道にやってきたことが徐々に実を結びつつあるし、映画だってフルーツチャンやヤンヤンマク、ジョニー・トーなどの新しい才能が古い世代と取って代わり、「インファナルアフェア」のようなとびきりの秀作だって再び作られるようになった。実のところ、製作本数は減っても、一本の興行収入は増えているのだそうだ。
この本はそんな香港の新しい潮流を余すことなく伝えてくれる。
マイケル・チョンやマイケル・ラウは知っていても、香港の作家主義的なマンガ家の動向は全く知らなかったし、点でしかなかったアーティストたちの背景をきちんと線で結びつけ説明してくれる様は鮮やかだ。そしてドブネズミのように美しい香港の街並を写したフォトグラフ。あの九龍砦は消失してしまったが、まだその残り香は所々残っている。
中国政府は1997年から50年間の間、香港の資本主義制度と生活様式を守ると約束した。
50年後の2046年を見据えて、過去のノスタルジイと未来への不安を描いたウォン・カーワイの『2046』には作品的には失望を感じたけれども、中国本土に少しずつ吸収され、ある種の緊張感を保ちながら、新たな魅力を放ちつつある香港を感じさせてくれる。