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2017年度ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2017年度の映画ベストテンです。





1.『大仏+』(ホアン・シンヤオ黄信堯監督/台湾)
廃品回収業の肚財は、大仏を作る制作会社の夜間警備員・菜埔と夜な夜な社長のベンツに付いてる車載カメラの映像を観ながら妄想を膨らませている。ある日、2人は映像の中に重大な発見をする。富裕層と最下層の人間の悲哀を台湾閩南語のとぼけた掛け合いで語る。オフビートな笑いとモノクロ映像(部分的にカラー)が素晴らしい。東京国際映画祭にて。

2.『ブラインド・マッサージ』(ロウ・イエ婁燁監督/中国)
南京で働く盲人マッサージ士たちの性愛を赤裸々に描く。いつものロウ・イエ節が炸裂なのだが、見えない盲者の世界と映画を観る側・健常者の世界がスクリーン上でぶつかり合うような驚くべき化学反応があり、作品を別のステージへ。

3.『パターソン』(ジム・ジャームッシュ監督/アメリカ)
ニュー・ジャージー州・パターソン市でバスの運転手として働くパターソンは、パターン(図柄)好きな妻と愛犬マーヴィンに囲まれて、ワン・パターンな日常生活の中から詩を紡ぎだす。慎ましくも手作り感溢れる生活の隅々が美しい。

4.『ハートストーン』(グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン監督/アイスランド)
 『ムーンライト』(バリー・ジェンキンス監督/アメリカ)
毎年のLGBT映画枠というわけではないけれど、今年はどうしても1本に絞れないので2つ挙げることに。どちらも至高の純愛映画だと思う。

5.『立ち去った女』(ラヴ・ディアス監督/フィリピン)
冤罪によって30年投獄されていた女ホラシアは、彼女を陥れた元恋人に復讐するために故郷へ戻るが…。美しいモノクロ映像の中、パロット売りのせむし男とトランスジェンダーの大女との夜の徘徊が彼女を癒してゆく。

6.『見えるもの、見えざるもの』(カミラ・アンディニ監督/インドネシア)
 『殺人者マルリナ』(モーリー・スリヤ監督/インドネシア)
フィルメックスでインドネシア勢が(しかも2人とも女性監督)2作同時グランプリを受賞したことは、大きな事件だ。それぞれバリ島、スンバ島の民間伝承からヒントを得た詩的な物語が展開する。

7.『夜空はいつでも最高密度の青空だ』(石井裕也監督/日本)
最果タヒの原作は読んだことはないのですが、昨年は『パターソン』や『ネルーダ』、上映されていないが『ソロ、ソリチュード』(インドネシア)なんていう映画もあるなど”詩人”映画が多かった印象。オザケンじゃないけど、意思は言葉を変え言葉は世界を変えていく、そんな映画だと思う。

8.『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(ケネス・ロナーガン監督/アメリカ)
音楽の使い方や設定などベタなところはあるけど、どこか粗野で無骨な感じが逆に心揺さぶられた。家族の崩壊を描いてるが、わずかに残る甥との絆を糧に男は生きてゆく。嗚咽を禁じえなかった。

9.『ブレードランナー2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/アメリカ)
前作を踏襲した世界観、映像美に酔いしれる。デッカードは人間であってほしい派だが、人間とは何か?根源的な問いがAI時代に突入した現在にも響く。SF感溢れる初体験のIMAX 3Dで。

10.『バンコクナイツ』(富田克也監督/日本)
元自衛隊員の小沢はバンコク・タニヤ通りで懇意のホステス・ラックと再会し、彼女の故郷イサーン地方へ。タイ駐在日本人の生態と彼女たちを生み出す背景に迫った力作。他者を描くことの無防備さを感じるところもあるが、その熱量に圧倒されるばかり。劇中の音楽モーラムの歌詞が胸を打つ。

次点(入れ替え可能作品)
『Art through our eyes』(アピチャッポンほか5人の監督によるオムニバス/シンガポール)
『哭声/コクソン』(ナ・ホンジン監督/韓国)
『スヴェタ』(ジャンナ・イサバエヴァ監督/カザフスタン)
『グレイン』(セミフ・カプランオール監督/トルコ)
『石頭』(チャオ・シアン監督/中国)
『サムイの歌』(ペンエーグ・ラッタナルアン監督/タイ)
『インターチェンジ』(デイン・サイード監督/マレーシア)
『エヴォルーション』( ルシール・アザリロヴィック監督/フランス)
『変魚路』(高嶺剛監督/沖縄・日本)
『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』(パブロ・ラライン監督/チリ)
『ありがとう、トニ・エルドマン』(マーレン・アデ監督/ドイツ・オーストリア)

 自分にとって昨年一番のトピックと言えば『牯嶺街少年殺人事件』(1991年作・4Kレストア・デジタルリマスター版)25年ぶりの上映だった。幾度となくビデオで観ていたのだが、初見のような新鮮な味わいで完全にノックアウトされてしまった。少年の視点から主人公の父親の視点で観ている自分に時の流れを感じつつ、監督の意図したものがようやく理解できた感じがする。この天下の大傑作を観たせいか、他の映画が色褪せて見えてしまい、しばらく映画への興味を失うという日々が続いた。(それゆえ試写の重要作も4本ほど見逃してしまう。)本来ならこの作品がダントツで1位になるのですが、やはり今の映画を尊重すべきと思うので選択肢から外した。『タレンタイム』も過去2009年度にランキングしているのでこちらも除外した。PFFで観た日本映画『わたしたちの家』『赤色彗星倶楽部』も良かったが今年公開が決まってるので見送ることに。イベントとしては「カラフル!インドネシア」、「大阪アジアン映画祭」、「サンシャワー:東南アジアの現代美術」での特集上映、PFF、「東京国際映画祭」、「フィルメックス」などに通った。


2018年度映画ベストテン
2016年度映画ベストテン




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