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30th TIFF [アジア総合]

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第30回東京国際映画祭 2017年10月25日(水)~ 11月3日(金・祝)


今年でなんと30回目!自分も歳をとるわけだ。
そのせいか、偶然なのかわからないけど、今年は様々な形の「お墓」を映画の中に観ました。呼ばれてる?(笑)。『超級大国民』『アンダーグラウンド』『アケラット』『ビオスコープおじさん』『他者の言葉の物語』、今回はパスしたけど『メイド・イン・ホンコン』にも終盤でお墓出てきますね。極め付けは『大仏+』。アミダブ…。

私の個人的ベスト5は『大仏+』『スヴェタ』『グレイン』『石頭』『アンダーグラウンド』あたり。そしてエドモンド・ヨウ監督、最優秀監督賞の快挙はこの年の映画祭のトピックとして記憶されるでしょう。ツイッター・メモです。



【2017年10月25日(水)】
約4ヶ月ぶりのツイートですが、今日から30thTIFFに通います。
今日はインディアン・フィルム・フェスで短編集『始まりは音から〜インド詩七篇』を観て来たので、音にまつわる映画2本立てになりそう。


●『始まりは音から〜インド詩七篇』(インディアン・フィルム・フェスティバルにて)

音をテーマにしたオムニバス。失踪した反体制ジャーナリストとその息子のすれ違いを描く「自由〜アーザード」。補聴器を始めてつけた貧しい少年「アーメル」。老死刑囚が最後に聴く「音」。”新体制”後の音のあり方を描いたSF調の「デシベル」。…この辺が秀逸だった。

●『フォーリー・アーティスト』[ 擬音 ]ワン・ワンロー(王婉柔)監督

TIFF1本目。台湾中央電影で映画に効果音をつける胡定一の40年の仕事を中心に中華映画史に迫るドキュ。引用の洪水に圧倒されるが、擬音テクをもっと観てみたかった気もする。ニューシネマの台頭・同録技術が確立するまで、別の声優によるアテが主流だったのは意外だ
北野作品で音楽を担当された大物ミュージシャンも来場されてた。

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【2017年10月27日(金)】
TIFF2日目。『セクシー・ドゥルガ』、『アリフ、プリン(セ)ス』、九把刀監督『怪怪怪怪物!』の3本を観てきた。


●『セクシー・ドゥルガ』サナル・クマール・シャシダラン監督

ケララ州。北部から来たカビールとドゥルガ(異教徒で神様の名)はヒッチで車を拾うが柄の悪い連中に当たり、半ば監禁されたように夜の闇を走行する。冒頭の土着性の強い祭の風景が圧巻。逆さまショット。車のシーンは神様を御輿に担いでる現代人の位相のような気がする。

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●『アリフ、プリン(セ)ス』[ 阿莉芙 ] ワン・ユーリン(王育麟)監督

台北で美容師として働くアリフは性転換の手術を目標にしていたが故郷の原住民族の族長を継ぐことを強いられ葛藤する。今年のレインボーリールで似たプロットの作品『迷える子羊たちの物語』を観たけど、群像劇も含めこちらの方がみせる。父親役・挿入歌の胡徳夫が印象的。


●『怪怪怪怪物!』ギデンズ・コー(九把刀)監督

いじめ、老人虐待、監禁拷問と意図のわからない展開に戸惑うも、死人より怖いのは…のテーマが透けて見え出すと俄然面白くなる。吸血鬼モノを踏襲した終盤の畳み掛け、さらにあのデパルマ作を意識した?もう一盛り上がり。あんなシーンでcharaの歌を聴くとは思わなかった。(→劇場公開)


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【2017年10月28日(土)】
TIFF3日目。『ポップ・アイ』、萬仁監督『超級大国民』('95)、SABU監督『ミスター・ロン』を観てきた。


●『ポップ・アイ』カーステン・タン監督 →CROSSCUT ASIA #04

●『超級大国民』ワン・レン(萬仁)監督

老人施設から娘家族に世話になることになった許毅生は、国家転覆の罪で16年投獄された人生を振り返る。そして自分の自白で死に追いやってしまった陳政一の墓を捜す。センチメンタルな色彩。日帝時代の映像、戦友の遺骨、警備司令部、すみませんの日語。監督の話が興味深かった。(→『スーパーシチズン』のタイトルで劇場公開)


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●『ミスター・ロン』SABU監督

高雄の殺し屋ロンは、日本に渡りターゲットに迫るが失敗。地方都市に潜伏することを余儀なくされる。そこで台湾出身の訳あり母子と出会う。スターの張震が仏頂面で日本の街角にいることのおかしみ。シャブ漬け姚以緹の妙演。緩急つけたドラマにクライマックスの切れ味。痺れた。


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【2017年10月29日(日)】
TIFF4日目。今回一番期待していたセミフ・カプランオール監督の新作『グレイン』とエドモンド・ヨウ監督2 作目『アケラット〜ロヒンギャの祈り』、『大仏+』を観てきた。


●『グレイン』セミフ・カプランオール監督 ☆

ノーヴァス・ヴィタ社の研究者エロル・エリンは、遺伝子組換え植物が枯れてしまう原因を探るうち、同社を辞め失踪したジェミル・アクマンの論考に着目。彼の行方を追う。遺伝子による選別が進む近未来のディストピア世界から現代を照射する。モノクロの映像美。芸術貢献賞候補かも。(→グランプリでした)
質感はタルコフスキー、研究者二人の対話はヘルツォーク『緑のアリが夢みるところ』を想起。「穀物か息吹か」という言葉が繰り返し出てくるが、1000年前のユヌス・エレムのエピソードで、彼は穀物を選択するが、本当は息吹(精神)を選ばなければならなかった、と監督の弁。

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●『アケラット ロヒンギャの祈り』エドモンド・ヨウ監督

タイ国境の町。海外留学を夢みて貯めていた大金を同居人に盗まれたフイリンは、ロヒンギャ族の人身売買の一員をとして働くことに。邦題にちょっと難ある気がするけど、もう少しロヒンギャの生活・個人を踏み込んで描く必要があったのでは?彼らの夢や記憶も描かないと共鳴が希薄な気もするのだが…。
観念的なパートがかなり多くあって、主人公の包帯姿には勅使河原監督の『他人の顔』を思い出すのだけど、安部公房の主題を取り入れている気がしなくもない。マレーシア少数派の華人の苦境・国外脱出の希望と、ロヒンギャ族の脱出の末の悲劇。自我と社会を見据えて、全くつながりのなかった他者との共鳴の回路を探っているようなフシもある。ロヒンギャの言葉で来世という意味の「アケラット」は、それが華人とイスラム教徒のロヒンギャの共鳴の回路だとしたら、あまりに悲しい言葉に聞こえる。疑問に思ったのは、主人公のアイドル顔の女の子ではなく、子供を亡くした主婦とか、切実感のある設定だったらもっとラストが生きてきた気がする。

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●『大仏+』ホアン・シンヤオ(黃信堯)監督

廃品回収業の肚財は、大仏を作る制作会社の夜間警備員・菜埔と夜な夜な社長のベンツに付いてる車載カメラの音声を聴きながら妄想を膨らましている。ある日、映像の中に重大な発見をする。富裕層と最下層の人間の悲哀を台湾閩南語のとぼけた掛け合いで語る。モノクロ映像も良い。秀作。

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【2017年10月28日(土)】
本日TIFF5日目。『アンダーグラウンド』、ジャンナ・イサバエヴァ監督『スヴェタ』、こちらも楽しみにしていたプラプダー・ユン監督『現れた男』、そして『迫り来る嵐』。『スヴェタ』は賞に絡むだろうと思う。

●『アンダーグラウンド』ダニエル・R・パラシオ監督

マニラにある公共墓地に住みついているバンギスと妻子。時に墓荒らしをして死者が身に付けていた貴金属を盗み、金に変え生活する。何と罰当たりな!と墓地内で行われる数々の蛮行に唖然とするが、ラストでは彼らが崇高な人々に見えてしまう。初期メンドーサを思わせる秀作。

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●『スヴェタ』ジャンナ・イサバエヴァ監督 ☆

ローン返済延滞のためマンションを差し押さえの通知を受け、さらに工場解雇の危機に瀕した聾唖の主婦スヴェタは、頼りない夫と二人の子供を守るため驚くべき行動に出る。脚本が秀逸。ダルデンヌ兄弟作と見紛う完成度、(この辺がどう評価されるか?)Gプリ・主演女優賞可能性ありそう。(→無冠に終わる。みごとにスベった)

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●『現れた男』プラープダー・ユン監督

タワーマンションに独りで暮らす女は朝出勤しようとドアを開けると、独りの男が倒れている。この部屋は自分のものだから返して欲しいと男は主張する。作家プラプダーの短編に多く登場するダブル(分身)というモチーフがここでも。ルソーの絵と国歌の挿入。存在の不確かさを描く。

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●『迫り来る嵐』ドン・ユエ(董越)監督

1997年、工場の保安課に勤める余国偉は刑事きどりで近所で起きた女性殺人事件の犯人捜しにのめり込む。後輩の劉、美容院の開店を手助けした影ある女・燕子を失い余は常軌を逸した行動に出る。97年的な小香港、歌謡曲。時代の波に取り残された男の姿。『殺人の追憶』を思い出す。


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【2017年10月30日(月)】
TIFF6日目。『殺人の権利』、『四月の終わりに霧雨が降る』、『ビオスコープおじさん』を観て来た。


●『殺人の権利』アーネル・“アルビ”・バルバローナ監督

ミンダナオ島。マボノ族のダーウィと妻ウブナイは子供たちと平穏に暮らしていたが、NPA掃討のため侵攻した政府軍に捕まり奴隷のような扱いを受ける。鉱山開発・戦闘で居場所をなくすルマドの告発。善と悪、天国と地獄を表すという二弦の楽器と口琴の音色が良い。演出不足が残念。

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●『四月の終わりに霧雨が降る』ウィットチャーノン・ソムウムチャーン監督CROSSCUT ASIA #04

●『ビオスコープおじさん』デーブ・メーデーカル監督

飛行機事故で父を失った映画作家のミニーは、刑務所から認知症のラフマト・ハーンという老人を引き取る。父はハーンのためにアフガニスタンで生き別れた娘ラビヤを捜しに行こうとしていた。ミニーは忘れかけていた幼い頃の記憶をたぐり寄せる。練られた脚本に唸る。

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【2017年10月31日(火)】
TIFF7日目。『石頭』。紆余曲折あって夜に二子玉川で『ブレードランナー2049』を観て来た。


●『石頭』チャオ・シアン(趙祥)監督

小学生の通称・石コロは、「三好学生」の表彰を受けるほどの優等生。サッカーボールを二度もパンクさせてしまった親友(通称・菜っ葉饅頭)がいじめられるのをかばうが、いっこうにやまない。お金をためてボールを買おうとするが…。子供たちの配役、脚本が秀逸。春節の花火が切ない。
出稼ぎの親が子供に電話する姿はよく中国映画に登場するが、子供が親からの電話を待つ姿は案外珍しいかもしれない。

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●『ブレードランナー2049』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督

デッカード(ハリソン・フォード)はゲスト程度の出演かと思っていたら、準主役級で、さらに緊縛水責め地獄にあっていて驚いた。前作を踏襲した細部にわたる美意識に酔いしれる3時間。前作の3バージョンおさらいして行った方が良いみたい。もう一度観に行く。


【2017年11月01日(水)】
TIFF8日目。『キリスト』、『他者の言葉の物語』を観て来た。1日(水)で私のTIFFはおしまいでした。参加したみなさん、お疲れ様でした。


●『キリスト』HF・ヤンバオ監督 →CROSSCUT ASIA #04

●『他者の言葉の物語』BW・プルバ・ヌガラ監督 →CROSSCUT ASIA #04


【受賞結果一覧】
東京グランプリ:『グレイン』(セミフ・カプランオール監督)
審査委員特別賞:『ナポリ、輝きの陰で』(シルヴィア・ルーツィ、ルカ・ベッリーノ監督)
最優秀監督賞:エドモンド・ヨウ(『アケラット-ロヒンギャの祈り』)
最優秀女優賞:アデリーヌ・デルミー(『マリリンヌ』)
再優秀男優賞:ドアン・イーホン(『迫り来る嵐』)
最優秀芸術貢献賞 :『迫り来る嵐』(ドン・ユエ監督)
最優秀脚本賞 Presented by WOWOW:『ペット安楽死請負人』(監督/脚本: テーム・ニッキ)
観客賞:『勝手にふるえてろ』(大九 明子監督)

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