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中国独立電影展2015 [中国]

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第五届東京中国独立電影展 中国インディペンデント映画祭2015 @ ポレポレ東中野 (2015.12月12日(土)〜27日(日)


隔年開催の映画祭。前回は渋谷だったけれど、再び古巣の東中野に戻っての開催。
やっぱりこっちの方がしっくり来ますね。ドーナツ食べられるし。
年の瀬押し迫ったこの時期に、年間ベストを更新してしまうような傑作に出会えて興奮する。



【2015年12月18日】
『凱里ブルース』は映画的冒険に満ちた作品で素晴らしかった。今年のベスト3候補かもしれない。『江城の夏』もかなりの秀作で主演の田原の魅力堪能。


●『凱里ブルース』畢贛(ビー・ガン)監督 ☆☆

→別枠に書きました。


●『江城の夏』(06)王超監督 ☆

武漢でホステスとして働く艶紅(田原)は田舎から出て来た父親を部屋に泊める事に。父親は行方不明の兄を探しており、同郷の老警察官の協力を得ていた。艶紅は店のボス・ホーとつき合っていたが、実はホーと兄はある事件で接点があり…。英題『Luxury Car』に納得の極上ミステリー。久しぶりの田原はどんなになってるのかと思ったら、9年前の作品だった。ホー社長が父親を観光案内したり、艶紅には誠実な所がミソ。ラストの余韻も良かった。


【2015年12月20日(日)】


●『K』Emyr ap richard+ダルハド・エルデニブラグ監督 ☆

カフカの「城」をわりと忠実に映画化。長髪の測量士に最初違和感もったが、ハネケ監督作より色気があって面白く感じられた。30sのジャズ音楽とモンゴル語の破裂音が独特の雰囲気。ウェールズ人監督と内蒙古人監督のコラボ、ジャンクーと台湾人によるプロデユースと多国籍な交流。見事な完成度。

●『冬』邢健(シン・ジェン)監督

雪深い山で一人住む孤独な老人。水槽の魚を放生し、瀕死の小鳥を助けると、子供が現れる。小鳥と戯れる一方で、焼き鳥にして食べる自然の恩恵と残酷さ。じゃがいもと吹雪は世界の終わりの数日間を描いた『ニーチェの馬』を想起したが、こちらは生命の象徴・鳥が飛び立つまでの7日間を描く。

●『詩人、出張スル』雎安奇(ジュー・アンチ)監督

02年、詩人・竪は出張と称して新疆を旅する。安宿、長距離バス、ヒッチ、そのバックパッカー的なグダグダな旅の様子と16編の詩が挿入される。天山を超え、カザフスタン国境沿いへ。サリム湖へは行くが、カナス湖は断念。娼婦と戯れる「夜の歩き方」も。虚実皮膜らしいが…


【2015年12月22日(木)】
京橋→東中野へ移動。


●『寝ても覚めても』(04)王超監督 ☆

天泉炭坑所の事故で親方を失った広生。親方を救助できなかったこと、実は親方の妻と不倫していたことに呵責を感じた彼は、性的不能になり彼女と別れる。しかし、廃坑を国から譲り受けると、一人黙々と再建し出す。そんな中、親方の幽霊と再会する。
親方の頭の弱い1人息子・阿福とロバが戻って来て、母親(不倫してた妻)が死んだと告げられる。淡々とした反復の中に空虚さと喪失感が滲む。贖罪の物語といえるが、一方で、市場経済に移行してからの成功譚、親方=師父を超える英雄譚にも見え、不思議な感触の作品。何か元ネタに準えてそうな気も。


【2015年12月24日(木)】
東中野→京橋に移動。


●『安陽の赤ちゃん』(01)王超監督

失業して金に困っていた大剛は、拉麺屋台の主人から捨て子を貰い受ける。そこには養育費200元/月を渡すという手紙が入っていた。連絡すると黒龍江省出身の艶麗という娼婦が現れた。3人はいつしか疑似家族のような関係に。そこへ子供の父親だという極道の四徳が現れて…。
大剛は自転車修理工になり、傍らには籠にいれた赤ん坊。自分の部屋を艶麗の売春に貸すが、彼女の客が乗って来た自転車にわざと穴をあけたりする。ラスト近くで二人が待ち合わせに使った清真の拉麺店が反復され、大剛が座っていない席に一杯2元の拉麺。王超監督の特徴はこの反復にあると思った。


【2015年12月25日(金)】


●『幻想曲』(14)王超監督

工場で働く父親が白血病にかかり末期宣告を受ける。高額の治療費を工面するために母親は仕事を掛け持ちし、娘はナイトクラブで働き、中学生の息子不安定になり学校へ行かなくなる。追いつめられていく家族を日常の反復の中に描く。トランペット「オー・ソレ・ミオ」。病人の父親がラジオ体操で元気に動く様子を息子が幻視する。中国のラジオ体操は毛沢東が提唱したものらしい。

●『癡(ち)』邱炯炯監督 

反右派闘争の流れで右派とみなされ1958年から80年まで強制労働所や刑務所に収容されていた四川出身の作家・張先癡の回想録。
張先癡はソルジェニーツエン『収容群島』に触発された『中国古拉格』という作品を発表しているらしい。本人のインタビューと独特のスタジオセットの舞台劇とで構成される。

16才で家出して人民解放軍に参加、涼山でのイ族解放運動に関わる。父親が国民党党員で処刑されたことから、彼自身が危険視され、南充県へ異動させられる。同じような境遇の保育士と結婚し、一児をもうける。成都の実家から末の妹も預かり育てていた。1957年整風運動が始まる。「知ることを全て話し、話すなら話つくせ」その流れで党を批判する文章を発表して、右派と見なされ、その後23年間収監される。無実を訴えた妻フージュンも新彊に下放され、息子も右派分子に。80年、名誉回復される。
「息子は現在50歳になるが、このため文盲である。でも歴史を読まなくて済む」「80年には右派認定を取り消されたわけだが、それは間違いである。このとき、私は真の右派になっていたからだ」シニカルな張先癡の言葉で終わる。


【2015年12月26日(土)】
26日は京橋のフィルムセンターで「韓国映画1934-1959 創造と開花」最終回で梁柱南(ヤン・ジュナム)監督『母情』(58)と申相玉監督『地獄花』(58)。東中野で中国独立電影展・文晏監督『トラップストリート』。これで3ヶ月に連なった怒濤のアジア映画週間終わる。


●『トラップストリート』(『水印街』)文晏監督

李秋明(吕聿来)は南京の地図製作会社で測量士として働いている。ある日、先輩と測量中に見かけた若い女(何超文)に心魅かれる。彼女を見失った場所は地図に載っていない所だった。一方、彼は友人と盗聴器を見つける副業をしている。
大雨のある日、彼は彼女を車で送るという幸運に恵まれる。車の中に彼女が忘れたUSBメモリを届けようと、書いてあった住所「203研究所」に連絡すると、彼女の上司だという男が現れ、御礼をしたいからと住所を聞かれる。
彼女との接触を続けるうち、ようやく2人は打ち解け合えるようになるが、徐々に彼の周辺で不可思議な出来事が起こるようになる。ある日、彼は何者かに拘束され、スパイ容疑をかけられる。解放されて家を帰るともぬけの殻で、実家の家族は失踪、友人たちはよそよそしくなっていく。一体彼女は何者なのか・・・。背後で何か大きな力が動いている様を描いた不条理ドラマ。

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