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CROSSCUT ASIA #02 [フィリピン]

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CROSSCUT ASIA #02 「熱風!フィリピン」
ツイッターまとめ



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ブリランテ・メンドーサ監督(右)

メンドーサ監督作品とその他の作品の格の違いを見せつけられるラインナップだった。監督の最新作『罠〜被災地に生きる』と『グランドマザー』(09)も観るべきだったと今になって後悔する。タヒミック監督を拝顔できたのは嬉しかった。


●『フォスター・チャイルド』(07)ブリランテ・メンドーサ監督 ☆☆

テルマはジョンジョンを我が子のように育てていたが、やがて養父母に渡す時が。里親オフィスのビアンカのサポートで、高級ホテルの上階へ向かう。母性と慈悲、ビジネスと経済格差。夜景の郷愁と漏れこぼれる様々な感情。神の視点をもった、まごうかたなき傑作。

●『サービス』(08)ブリランテ・メンドーサ監督 ☆☆

アンヘレス市でポルノ映画館を運営する一族。経営は火の車で、母親は夫と係争中。場内はゲイの発展場と化していている。立ち入り禁止区域が家族の生活の場だが、その境も溶解しつつある。これは是非、映画館で観るべき作品。ツァイ・ミンリャン監督『楽日』と比較したくなる。
視線の移動や、シーンの繋ぎ方が見事。劇場内の出来事を鮮やかなリレーで見せてくれる。泥棒や、ある動物が入りこむシーンは躍動感も。QAでメンドーサ監督曰く、道徳と非道徳の境を考察してみたかったとの事。

●『汝が子宮』(12)ブリランテ・メンドーサ監督

スールー諸島タウィタウィ州。子供のいない助産婦シャハレは夫バガス-アンに若い第二夫人を持たせて子作りさせる。のっけからリアルな出産シーンで原一男『極私的エロス』を軽く凌駕。結婚式の様子、牛の屠殺、隣国との軋轢(海賊?)などイスラム系住民の水上生活が興味深い。 (承前)第二夫人の出産を夫婦が協力して助産する。生まれた直後の様子が三人の今後の生活を想像させる。シャレハ役ノラ・オーノールの複雑な表情。バガス-アン役に『マニラ・光る爪』主演のベンボル・ロコ。

●『奇跡の女』(82)。イシュマエル・ベルナール監督 (ディスカバー亜洲電影)

クパンという村に住む私生児エルサは、日食の日に聖母のお告げを聞く。奇跡を起こすと評判になった彼女に人々が殺到し大混乱に。彼女を信奉する人々、女教師、信仰を疑うマニラ帰りの水商売女、エルサの挙動を追う映画監督など周辺を描きながら信仰について問う。
エルサに奇跡を起こしてもらおうと集まる人々がリアルすぎる。群像劇と最後のクライマックスが、何となくアルトマン『ナッシュビル』を思わせる。主演のノラ・オーノールは、強いて言うなら和泉雅子に似てると思った。

●『お里帰り』キッドラッド・タヒミック監督 ☆

マゼランの世界一周に同行したマラッカ出身の奴隷エンリケ目線から世界を見直す試み。『虹のアルバム』と部分的に同じフッテージ使ってる気がするけど、浮かびあがって来るのは映画作家の人生と家族の記録。ヘルツォーク『カスパー・ハウザー』見せもの原住民出演シーンも。エンディング曲はヨヨイ・ヴィレーム『マゼランの歌』。

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竹製カメラを持ったイゴロト族のふんどし姿のタヒミック監督。大地の恵みを分かち合う「カプア」の精神を説いていた。


●『バロットの大地』ポール・サンタ・アナ監督

パンパンガ州カンダハ市。父親から相続した土地を売るためにマニラから帰郷したジュン。アラヤット山を望むその土地では小作人ダート一家が慎ましくアヒル農場を運営していた。卵から作られるバロットの流通過程も詳細に描かれる。完成度高い良作だが、綺麗に纏まり過ぎてる感も


●『インビジブル』ローレンス・ファハルド監督

福岡、札幌、旭川で暮らすフィリピン人労働者3人がそれぞれ問題を抱えながら、日本人と結婚している世話焼きのリンダの所へ。偶然に居合わせた彼らをある事件が追い詰める。電話の向こうの常夏の故郷と真冬の日本の景色のコントラスト。画にもっと力がほしいが、見過ごせない作品。劇中、ベンジーという老齢の工場労働者(エドワードは恋人?)、マニュエルという年かさのいったホストが出てくるが、まさかバブル期に来日した人たちなのだろうか。映画のタイトルが我々に「見ない振りするな」と投げかけてくる。

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『インビジブル』上映後のシンポジウムの様子。左からポール・サンタ・アナ監督、ウィルソン・ティエンプロデューサー、ローレンス・ファハルド監督。


・ブリランテ・メンドーサ監督がデビューし、シネマラヤ映画祭が始まった2005年以降を第3期黄金時代と言うようになっている。その要因はどこにあるのか。
・1つは、映画祭が資金を提供するシステムに若手が集まったこと。
12/25~1月に開催される「メトロマニラ映画祭」は、海賊版を防いだり、映画人の福祉の資金集めをしている。「シネマラヤ映画祭」は、2005年から始まったが、昨年から長編への資金提供をやめ、短編のみに。そこでファハルド監督やメンドーサ監督が「シナグマニラ映画祭」を立ち上げた。5本の脚本を募り賞金を出すシステム。(そこで選ばれた作品が『インビジブル』『パロットの大地』)
・もう1つは、デジタルカメラの出現で、作りたいものが作れるようになった。フィルムだと1500万ペソかかるところが、デジタルだと50万ペソ(×2.5=125万円)で作れることが大きい。
・低予算化は地方・地域性もバラエティにしたのではないか。例えばミンダナオ一派など。
・ミンダナオ地域には映画学校が無い。ファハルディ監督はビサヤス出身で、映画教育は受けておらず、演劇やプロダクションデザイナーでVHSなどを使って映画にハマっていった経緯がある。
・『SWAP』セブ語映画。(16th FILMeXで上映)『Bambanti』は北部で撮られた。ファハルド監督の『コタド』という短編はあえてイロンゴ語という方言で撮られ、審査員賞を受賞。しかし、メインストリームはマニラの生活ばかり描いている。
・マーケットは相変わらずハリウッドが強いが、地元国内の映画の枠も増えてきた。『English only please』『運命とよばれるもの』『ヘレラル・ルナ』などインディペンデントな若手の作品が成功を収めている。

詳細:CROSSCUT ASIA#02 熱風!フィリピン シンポジウム『第3期黄金時代』とは?
http://2015.tiff-jp.net/news/ja/?p=34028



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