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賣糖歌 [中国]


李香蘭「賣糖歌」



京橋フィルムセンターにて「特集 逝ける映画人を偲んで 2013-14」のプログラムより念願叶って『萬世流芳』(42)を観て来た。

この特集で念願叶ってというのは不謹慎かもしれないが、こういう機会でないとなかなかお目にかかれないのも事実。歴史的重要作こそ、各国で知恵を出し合ってDVD化なり、定期的な上映をしてくれたら、と思う。
夜の部で『五作じいさん』(40)+『私の鶯』(44)。『五作じいさん』に李香蘭も出てるのかと思ったら出ておらず。『私の鶯』は再見だった。


『萬世流芳』(’42) (中華総合製片+中華電影+満映)
朱石麟・卜萬蒼・馬徐維邦・ 張善琨・ 楊小仲による 共同監督

林則徐(高占非)が出世して行く中で出会った巡撫の娘・静嫻(陳雲裳)と妻になった玉屏(袁美雲)。そして阿片窟に入り浸る林の友人を更正させる飴売りの娘・鳳姑(李香蘭)の話が絡む。林が湖広総督になり、広東赴任すると、密輸阿片を協力に取り締まったことで英国と戦争になる。南京条約後、左遷されるまでを描く。
林則徐の人となりが丁寧に描かれていた。学弟の藩逹年が更正して部下となり再会するシーンも印象的。静嫻は林に縁談を断られた後、愚兄に住む家を奪われながらも阿片中毒に効く薬(戒煙玉)を作る活動をしていたが、平英団のリーダーとなり戦死。(三元里事件を脚色)美術も含めすごく見応えあった。

阿片戦争から百年を記念して満映と中華電影の国策映画会社が主導して作った映画だが、中国側スタッフ・キャストは当時の最高の才能が集められ、反英・戦意高揚映画にも、抗日映画にも見える両義性を持った映画になっている。山口淑子の自伝『李香蘭 私の半生』に次のような記述がある。

「この映画のミソは『木蘭従軍』と同じように”借古諷今”にあった。日本人からみれば、阿片戦争で中国の植民地化を狙うアングロサクソンに抵抗する内容なので、”鬼畜米英”につながる戦意高揚映画。一方、中国人から見れば、外敵(日本)の侵略と闘うレジスタンス映画、つまり見る人のイデオロギーによって解釈自在の”玉虫色”のストーリーだった。これこそ川喜多(長政)さんと張善琨氏(上海新華影)が、日中双方の思惑を十分に計算し、知恵を絞り、ひねり出した絶妙なアイデアだった。」

そのせいか、物語に奥行きがあって、今見ても決して古びていない。
つまらぬことだけど、『萬世流芳』で描かれる英国人もマキノの『阿片戦争』(43)と同様ツケっ鼻だった。マキノ作は、鬼気迫るものはあったが一面的だった印象。



『私の鶯』(’44) (満映+東宝)島津保次郎監督

哈爾浜でのロケや白系ロシア人のオペラ、李香蘭の歌声だけでも十分観る価値はあるのだけど、やはり本編ドラマ部分が弱いと感じる。実の父親・隅田と育ての親・ディミトリーの間で揺れ動く満利子(李香蘭)をもっと見せてほしかった。ディミトリーとのただならぬ共依存関係とか。
大佛次郎原作、服部良一音楽。

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