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2013年度映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2013年度の映画ベストテンです。
                   


1 グランド・マスター(ウォン・カーワイ監督/中国・香港)
  クンフーの流派統一のため、南北の覇者たちが最高位をかけて闘う。浮かび上がる香港という都市。アクション好きには不評のようだが、隅々まで行き届いた ウォン・カーワイの美意識に酔いしれた。「後悔のない人生なんてつまらないものだわ」チャン・ツィーイーを最も美しく撮った作品としても記憶されそう。

2 愛を語るときに、語らないこと(モーリー・スルヤ監督/インドネシア)
 昨年のエドウィン監督に続き、インドネシア・ニューウェイブが凄い。女性監督の驚きに満ちた作品。寄宿制の盲学校を舞台に、盲目の少女たちの恋愛と夢が生々しさと斬新な語り口で紡がれる。今までにないオリジナリティに魅了される。東京国際映画祭にて。

3 静かなるマニ石(ペマ・ツェテン監督/中国)
  『オールド・ドッグ』の衝撃が記憶に新しいペマ・ツェテン監督の処女長編作。青海省黄南チベット自治州。少年僧が正月休みで寺から実家へ戻る3日間を描 く。まだまだ遊びたい盛りの少年は厳しい修業の合間に観たTVドラマ『西遊記』の孫悟空に夢中になる。少年の純粋さに胸打たれる。「ペマ・ツェテン映画祭」にて。

4 オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ(ジム・ジャームッシュ監督/アメリカ+イギリス+ドイツ)
  デトロイトとタンジールを股にかけ何世紀もの間生き続ける吸血鬼カップルの物語。アーティストと言われる類いの人々を吸血鬼に準えて半ば自虐的に語りながら、文化継承の問題にも触れる。クリストファー・マーロウを登場させながら、ポール・ボウルズを語るような重層性。文学から音楽までジャームッシュの趣味世界が横溢していている。

5 セデック・バレ(ウェイ・ダーション監督/台湾)

6 北(ノルテ)―歴史の終わり(ラヴ・ディアス監督/フィリピン)
  ドストエフスキーの『罪と罰』を南国フィリピンで翻案した4時間超の作品。主人公が罪の意識に苛まれ、狂気の世界に入っていく様は圧巻の一言。ロカルノや 山形国際ドキュメンタリー映画祭では審査員をつとめるほどに世界で知られた存在の監督が、ようやく日本で紹介された。東京国際映画祭にて。

7 スタンリーのお弁当箱(アモール・グプテ監督/インド)
 インド映画の躍進が目覚ましいけど、小粒ながらピリリと辛いこの作品を挙げたい。

8 Bunohan(ブノハン)(デイン・サイード監督/マレーシア)
  マレーシアのタイ国境にある架空の村ブノハンで繰り広げられる3兄弟の相続を巡る争い。ノワール映画の枠組みを借りたマレーシア版『カラマーゾフの兄弟』 といった趣き。ワヤン・クリの世界観と土着の記憶が重層的に紡がれる。「シネ・マレーシア」からは中華系のシャーロット・リム監督『理髪店の娘』も押したいが、ここではマレー系の作品を挙げることに。

9 熱波(ミゲル・ゴメス監督/ポルトガル+ドイツ+ブラジル+フランス)
 ある老女の半生を現代のリスボンを舞台にした第一部「楽園の喪失」と、植民地時代のアフリカを舞台にした第二部「楽園」の2部構成で描く。35ミリと16ミリで撮られたモノクロ・スタンダードサイズが面白い感触を醸し出している。思想的にペドロ・コスタに近い作品。

10 オン・ザ・ロード(ウォルター・サレス監督/ブラジル+フランス+イギリス+アメリカ)
 ビート文学の古典を映画化。決して謳い上げることなく、原作に忠実にさりげなく撮られているのが好感。流れていく旅の風景に、自分の旅の記憶が反響する。ビバップの音楽に痺れる。

次点…天使の分け前(ケン・ローチ監督/イギリス)


(日本映画)

1 夜の片鱗(1964年 中村登監督)
2 舟を編む(石井裕也監督)
3 そして父になる(是枝裕和監督)
4 蜂の巣の子供たち(1948年 清水宏監督)
5 中学生円山(宮藤官九郎監督)

 昨年は「シネ・マレーシア」 という映画祭をお手伝いして、今までになかった映画との関わりを経験した。映画製作も大変な作業だが、映画祭運営も大変で大切な仕事だということが改めて判った。代表者はじめ、関係者をねぎらいたい。そのほか「ジョアン・ペドロ・ロドリゲス特集」、「第4回アジアンクィア映画祭」、「生誕110年 映画監 督・清水宏」、恒例の「東京国際映画祭」「フィルメックス」、そして「第3回 中国インディペンデント映画祭」に通った。選に漏れたが『パリ、さまよう花』『豆満江』『春夢』『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』も甲乙つけがたく、『クラウド・アトラス』『ザ・マスター』『ライフ・オブ・パイ』 『ジャンゴ 繋がれざる者』などアメリカ映画がすごく東洋的というか内省的・精神的な内容だったのも印象的だった。アジアンクィア映画祭で観た 『GF★BF』(ヤン・ヤーチェ監督/台湾)、フィルメックス観た『ピクニック』(ツァイ・ミンリャン監督/台湾)、『ILO ILO』(アンソニー・チェン監督/シンガポール)もベストテン圏内だが、公開決まっているようなので今回は見送ることに。ラインナップが多くて入り切ら なかったので、新旧織り交ぜの日本映画のベスト5も別枠で挙げてみた。

初出「旅シネ」


2014年度映画ベストテン
2012年度映画ベストテン


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