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北(ノルテ)―歴史の終わり [フィリピン]


Norte, hangganan ng kasaysayan (2013), film by Lav Diaz


東京国際映画祭でラヴ・ディアス監督『北(ノルテ)—歴史の終わり』を観た。
ドストエフスキーの『罪と罰』の翻案ということで、またか、という思いだったが(最近なぜかドストエフススキー原作モノが多い)、主人公が狂気に落ち入っていく様が本当に凄まじく、圧倒されてしまった。主人公の変容と、主人公の代わりに冤罪で服役する男の対比、彼の出所を待つ家族の長い時間。それを表現するための4時間10分という長尺にも納得がいく。(他の作品はもっと長いらしいですが・・・)どこかでエドワード・ヤンと比較している文を読んだが、長回し、夜のシーン、その風格など、なるほど『クーリンチェ』を思い出すところも。「マルコス政権誕生とその後のファシズムを描いている」という監督の意外な発言に戸惑うも、フィルディナンド・マルコスがフィリピン大学の法学部生だったこと、殺人容疑で服役していたという事実を知ると、この映画がさらに立体的なものに立ち上がって行きそうだ。以下メモ。


                 **
法科大学院をドロップアウトした議論好きのファビアン。それでも教授や学生仲間と良好な関係を保っていた。家賃や書籍代に困っていたファビアンは近所の金貸しマグタの所へ質草を持って行く。

一方、ホアキンは事故で足の怪我を負い、収入もなく金に困っていた。食堂を開店する準備をしていたが、治療費の工面のため、妻エリーサは飼っていた豚や食堂用のフォークを同じく金貸しのマグタに売ってしまう。さらに父親の形見の大切な指輪までも手放す。

再三の借金をマグタに申し出たものの、断られるエリーサ。夜道で途方にくれ泣いていると、それを観ていたファビアンは、黙って彼女に金を渡す。

ホアキンは指輪だけでも返してもらおうと、質草にDVDを持っていくが、鼻で笑われ、ついカッとなって、マグタの首を絞めてしまうが、抵抗され、その場を逃げ帰る。
ファビアンは、質草を取り返しに金貸しマグダのところへ行くが、突然マクダをナイフでメッタ刺しにし、目撃された娘も殺してしまう・・・。

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検挙されたのは、ホアキンの方だった。無実の罪で投獄され終身刑を言い渡されたホアキンだったが、絶望的な中、真っ当な道徳観で、周囲の囚人たちを助けていく。フィリピンの刑務所のボス(ワクワク様)に恩赦目当てだろうと揶揄され、いたぶられていたが、彼が脳梗塞?で倒れると、献身的に看病する。ボスが彼に感謝の意を述べるシーンは感動的だ。

ファビアンは、友人の彼女と寝ていたことをみんなの前で暴露し、友人に殴られる。大学の仲間たちと縁を切り、マニラへ出てダイナーでアルバイトとして働くが、キリスト教徒のグループカウンセリングで、「神など何もできるわけがない!」と言いきる。次第に自責の念に駆られ、狂気に落ち入っていく。

                   *

事件から3年の月日が流れ、ホアキンの妻アテは、仕事を掛け持ちして、子供たちを育てている。そこへファビアンが突然現れ、大金を渡す。「あなたのお金です」と。
ファビアンは昔の仲間で弁護士になった友人を訪ね、金貸しのマグタの殺人事件の犯人は無実だ、再審すべきだと主張し、資料を渡す。

ファビアンは、自分が捕まる事を望みながらも、それが適わず、ますます、狂気の世界へ入っていく。(ヒゲ面で太った姿はまるで江川達也先生)実家に戻り、愛犬を殺し、実姉をレイプする。そして、その狂気は、次々と他の人々を傷つけていくことに。

ホアキンは寝たまま浮遊し、意識は家族のいる農村へ。(ほとんど聖人化している)

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