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26th TIFF [アジア総合]

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第26回東京国際映画祭。今年はデザインも一新、目玉だった「アジアの風」部門はなくなった。新たに「アジアの未来」部門が新設され、新鋭監督の作品(2作目まで)を対象としたコンペ形式になった。ワールド・フォーカス部門にはアジア映画もあり、「台湾電影ルネッサンス2013」の特集、「ディスカバー亜州電影」もあるので、ちょっとカテゴリー配置が変わっただけなのかとも思うが、その影響はいかに?以下はツイッターを元にしたメモ。


                    *

【10月18日(金)】
今日から六本木で開催中の東京国際映画祭に参戦。1本目は「アジアの未来」部門から『今日から明日へ』(中国)。その後グザヴィエ・ドラン監督『マイ・マザー』の試写を挟み、コンペ部門で『ある理髪店の物語』(フィリピン)。


●『今日から明日へ』楊惠龍監督(中国)

北京の郊外にある唐家嶺。保険会社に勤める王旭は、無職の友人小傑とその彼女で洋裁店で働く冉冉を同じアパートに引っ越してくるよう薦める。「蟻族」と呼ばれる『大学は出たけれど』な若者たちの性愛と夢と挫折を描く。
街全体が政府によって「折」+「、」の取り壊しマーク。アパートの家賃450元。暫住証明書。家賃以外に水代が必要。王旭は顧客をだましたくないと保険会社を辞める。(密かに馬雲というアリババ・グループの総裁を崇拝)小傑の誘いで怪しいねずみ講まがいの啓発セミナーへ。2人は冉冉の作ったドレスをデザイナーのところへ売り込みに行く。ガラス工場。天安門広場(赤いフィルター)。 左小祖咒の歌。掘り下げが浅いような気もしたけど、こういうときは飲んで騒ぐしかないというのも共感できる。解説の煽り文句の「ニュー・ウェイヴの予感」ってほど新しさは感じず。


●『ある理髪師の物語』ジュン・ロブレス・ラナ監督(フィリピン)

’75年マルコス政権戒厳令下、とある村の理髪店。夫ホセの急逝でマリルーがハサミを持つ事に。神父や村人に慕われる一方、反政府活動家も店に出入りするようになる。彼女が散髪を担当する市長は軍とともに反逆者の一掃に躍起になっており、ついに事件が起きる。
『浄化槽の貴婦人』のユージン・ドミンゴがコメディエンヌではなく、抑えた演技で見せる。市長の妻セシリアとの交流、娼婦、夫のセックスに悩む。虐げられる女たち。前半部分の間延び感は否めないけど、噂通りのストーリーテリングの巧みさで引き込まれる。クライマックスのシーンの畳み掛けが素晴らしい。

【10月19日(土)】
今日も東京国際映画祭で『マリー・イズ・ハッピー』(タイ)、『オルドス警察日記』(中国/コンペ)、『高雄ダンサー』(台湾)を観て来た。いやはや、なんと申しましょうか。今年はお気に入りの1本に出会えるのでしょうか?不安になってっきた。


●『マリー・イズ・ハッピー』ナワポン・タムロンラタナリット監督(タイ)

マリー・マロニーという実在の人物の410のツイートを元に脚本化し、映画にした作品。マリーと親友スリの学園生活(2人は卒業アルバム制作委員でもある)と男子学生エムへの恋が、ツイートの文章とともに、数多のシークエンスで描かれる。
中国製の携帯電話で感電、王家衛のパロディ、校長印の缶詰工場、テスト問題にに校長の身辺調査。シュールでゆるい笑いが満載。(ちとネタ古い)生徒たちはいつも体操着を着て、線路脇を行ったり来たりするシーンが印象的。教師役にプラプダー・ユンが出ていたと思うが、彼のポストモダン小説にも通じる世界観。マリーのツイートはアフォリズム(格言)のようなものが多い。「信条の持ち過ぎは持たないのと同じだ」「忘れるのと忘れないのどっちがマシ?」「妥協こそ最大の難関」「私の中の終着駅は、誰かの始発駅かもしれない」そういえば漫画家タムくんの作品にもこういったアフォリズム調多く出てくる。ツイッター特性が今イチ伝わってこなかったのが残念。マリーさんの生ツイッターを読んでいたら、また違った印象かもしれないが。


●『オルドス警察日記』寧瀛(ニン・イン)監督(中国)

内モンゴル自治区東勝市(現在はオルドス市東勝区)の公安刑事課に実在したハオ・ワンチョンという警察官の足跡を辿るある種の英雄伝。
1人のジャーナリストが彼の実績を検証する形で物語が展開する。そんな謹厳実直な人物はいないだろうという懐疑からはじまり、結局、彼は本当に英雄だった、という論理展開。政治家・役人に対して、こんな人物であってほしい、という思いも込められているのだろうが、一方で公安の宣伝映画にもなっているのが微妙だ。応亮(イン・リャン)監督『私には言いたい事がある』も思い出さないと。
(振り返ってみると、日本にもそういう映画・テレビドラマはたくさんあった)
未解決殺人事件への執念の取り組み、賃金未払いに怒った労働者のデモに仲裁に入り労働者側に着いたり、石炭輸送のためニンガルタ村への道路建設を企業に話しをつけるため、駆け引きで酒を10杯一気飲みする武骨漢。年越しの八宝菜を食べる暇もなく、遠征にでかける。トレーニング中、心臓発作で41歳で亡くなっている。警官役を演じた王景春(ワン・ジンチュン)は素晴らしかった。フランキー堺を思い出す。


●『高雄ダンサー』何文薫(台湾)ファン・ウチョル(韓国)共同監督。

コン、イー、チーは難破船から宝物を探して遊ぶ仲の良い幼なじみだったが、9年後、街を出ようと金策のため起こした事件が元で、3人は別々の道を歩く事に。コンは警察官になりイーと婚約。チーは闇社会に身を落としていた・・・・。
冒頭で夕景の港に『朝日のあたる家』の楽曲が被さるシーンにゾクゾクし、大きな期待感を持ったが、その後、空回りした展開にゲンナリ。時折、いいショットもあったけど。映画・芸術は何をやっても自由だし、どんどん冒険するべきだと思う反面、やっぱり映画的なセンスも必要だとも思ったり。


【10月20日(日)】
TIFFでインド映画『祈りの雨』観終わって休憩中。

●『祈りの雨』☆

84年にボパールで起きた化学工場事故を扱っていて(一夜にして周辺住人1万人が死亡)、かなり見応えがあった。福島の事故を思い出さずにはいられない。是非とも日本公開してほしい作品。事故収束の見通しもたたないまま、原発を海外に売り込もうとしている日本原子力ムラはユニオン・カーバイド社そのものだね。

●『愛を語るときに、語らないこと』モーリー・スルヤ監督(インドネシア)☆☆

寄宿制の盲学校を舞台に、盲目の少女たちの恋愛と夢が生々しくも斬新な語り口で紡がれる。去年に続き、インドネシア・ニュー・ウェイヴ、凄い。今年の1本はこれかもしれない。
(別枠で書ければ。でもメモがない・・・)


【10月21日(月)】
今日もTIFF@六本木で『北(ノルテ)—歴史の終わり』(フィリピン)と、急遽チケット頂くことになって予定になかった『馬々と人間たち』(アイスランド)を観て来た。

●『北(ノルテ)—歴史の終わり』ラヴ・ディアス監督(フィリピン)☆
別枠で書きました。

●『馬々と人間たち』(アイスランド)

馬と人間の関わり合いを、いくつかの特異なエピソードで見せていく。人間と馬それぞれの性欲、生と死、群れ(社会)などが並列して描かれ、ある種のブラックユーモアにもなっている。
白馬と黒馬が勝手に交尾したところ、プライドを傷つけられた牧場主は雌馬殺し、牡馬を去勢する。ウォッカ欲しさに馬に乗って海を渡っていく男の顛末。遭難した男が馬の腹を裂いて暖をとり生き延びる話など。美しく躍動感溢れる馬の姿は圧巻。周辺国からアイスランドの馬に魅せられて移住する人も多いらしい。

【10月23日(水)】
昨日と今日は、TIFFはお休みのはずだったが、コンペ部門限定の当日引換券を消化するため、急遽レハ・エルデム監督『歌う女たち』(トルコ)を観て来た。(本当は、明日の『レッド・ファミリー』で使いたかったんだけど、売り切れ)エルデム監督の作品は『時間と風』以来。

●『歌う女たち』レハ・エルデム監督(トルコ)

地震予知で住民退去命令が出た島に居残る人々。馬たちが伝染病で死んで行き、都会から帰って来た男が病気で弱って行く中、霊媒的な女たちは歌を歌い自然と一体化するという寓意的な作品。最後、発電機が爆発。正直、全く乗れなかったが、日本のことも暗喩してる?
馬の伝染病がひっっかる。ここ二週間の間に『祭の馬』や『馬々と人間たち』など、立て続けに馬映画を観てるが、何か関連めいて見えてしまう。人間と馬の独特のパートナーシップが崩れつつあることは、どういうことを意味するのか。山本嘉次郎監督の描いた馬の姿はもう日本にはないのか。


【10月24日(水)】
今日もTIFF&試写で六本木へ。鍾孟宏監督『失魂』(台湾)。マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』(試写)。ミクハエル・レッド監督『レコーダー目撃者』(フィリピン)。

●『失魂』鍾孟宏監督(台湾)☆

日本料理屋で突然意識を失った阿川(張孝全)は友人たちによって山奥に住む父親(王羽)のところへ送り届けられる。意識を回復した彼は別人格になり、身の回りの世話をする姉を殺めてしまう。父親は息子の犯罪を隠匿する一方で、息子にに何者かが取り憑いていると感じ、彼を山小屋に閉じ込める。さらに妻を探しに来た娘の夫を、父親は殺して車ごと埋めてしまう。
画に力があって、山中にひかれたトロッコのレールや景色がいい。サイコサスペンスというジャンルなのかもしれないが、深読みすれば、日本式作法・教育(日本料理屋)を身につけた台湾人が、魂が抜けて、野性とか蛮性みたいなものを呼び覚ました・・・のような内容にも見える。息子(台湾)を守るため戦い、罪を重ねる父親だったが、これで良かったのか。やりきれない結末が。


●『レコーダー目撃者』ミクハエル・レッド監督(フィリピン)



【10月24日(水)】
実は今日も余力あれば・・・と思っていたけど、私のTIFFは昨日で終了ということに。今回のラインナップで一番ビビッと来たのが『パラダイス』三部作だったので、後ろ髪ひかれる思いだけど、公開決まってるので。

TIFFの個人的ベストは1.『愛を語るときに、語らないこと』2.『北(ノルテ)ー歴史の終わり』3.『祈りの雨』『失魂』という感じ。セレクトが悪かったのかもしれないが、ちょっと今回は低調だったかな・・・。


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