キャピトル〜ヴァン・モリヴァン [カンボジア]
Capitol Cinema, designed by Vann Molyvann , Phnom Penh 1996
TIFFにて、カンボジア映画にまつわるドキュメンタリー『ゴールデン・スランバーズ』('11)を観ていたら、ちょっとした発見があった。
96年のこと。長い旅の途中で、僕はちょっとした病気にかかり、プノンペンで一週間ほど療養していた。旅先では、その土地にある映画館を覗いてみたいと常々思っていたので、体調を取り戻しつつあった頃合いをみて、世話になっていた知人にバイクで連れていってもらった。そこは、当時プノンペンで唯一の映画館だった。内戦の戦火にも、ポト派の粛正をもくぐり抜けてきた映画館。おそらく60年~70年代に建てられたと思われる古ぼけた館内。その頃住んでいた三軒茶屋の名画座によく似た趣きがあった。
しかし、上映していたのは、カラオケビデオと、洋物の「無修正」ポルノだった。プノンペンにはフランス文化センターなるものがあり、そこではフランスの芸術映画(一体誰が観るのか?というような)をやっているのは確認していた。なぜか、その中間(?)が、なかった。ポルノは嫌いじゃないが、老若男女、庶民が楽しめる、夢のある作品が上映されればいいのに、と、その時の若い僕ですら、強く思った。それほど、カンボジアの文化的状況は荒廃していた。
現在、プノンペンには、数件の映画館・シネコンもあるらしい。この『ゴールデン・スランバーズ』というドキュメンタリーの中で、'60-'70年代、かつて映画館だった場所が紹介されていた。僕が覗いた映画館が「キャピトル・シネマ」という名前の映画館だったことが、ネット検索においても確認できた。残念なことに、現在は映画館ではなく、レストラン&遊戯場になっているらしい。(プノンペンにはキャピトル・ゲストハウスという老舗のホテルがあって、階下にレストランもあるのでややこしい)
最近('10)の様子はこちら。外観はきれいに化粧されている。
http://piximinxtour.blogspot.jp/2010/03/photos-of-vann-molyvanns-capitol.html
で、副産物として、このユニークな形の映画館を設計したのがヴァン・モリヴァンという建築家だという事もわかった。60年代カンボジアの国立劇場や総合競技場(オリンピック・スタジアム)の設計をしたらしいので、丹下健三のような存在ではないかと思う。急ピッチで開発の進むカンボジアで、彼の作品を鑑賞できるのも時間の問題かもしれない。
http://www.vannmolyvannproject.org/IMAGES.html(ヴァン・モリヴァン・プロジェクト)
http://www.ka-tours.org/ (クメール・アーキテクチャー・ツアー)
http://en.wikipedia.org/wiki/Vann_Molyvann(ヴァン・モリヴァン・ウィキペディア)
2012-11-05 00:06
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