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Sintok 2012 [シンガポール]





 Sintok2012 シンガポール映画祭 @シネマート六本木
5/12(土)〜5/20(日) 終了
http://www.sintok.org/


【2012年05月14日(月)】

『インヴィジブル・シティ』(‘07) タン・ピンピン(陳彬彬)監督

『シンガポール・ガガ』(‘02)が音・言語についてのドキュだったのに対し、こちらは映像・記憶(歴史)について。冒頭、密林の発掘作業にはじまり、文字通り、忘れられ、隠匿されていた史実を掘り起こしていく。戦前の日本軍による暴行は周知としても、独立前のマラヤ共産党、華語学校の学生運動など、知られざる歴史の肉声に目から鱗。なかなかお目にかかれそうにない貴重な写真も。シンガ国民の記憶・映像アーカイヴのあり方に一石を投じる。「ブランク」に監督の憤りと焦りを感じた。


『Sandcastle』(’10)  ブー・ジュンフォン(巫俊鋒)監督

兵役を目前にした18歳の少年が、ジョホールバルで死んだ父親の人生の秘密を知る。表層は青春・家族のドラマを装ってるけど、国家について、あるいは、ユートピアの両義性について語っている深い作品だと思う。タン監督の『インヴィジブル・シティ』とも連動感あり(タン監督自身も医者役で出演していた)。ただ、主人公のキャスティングが今ひとつ。ブー監督の短編によく出てきたような粗野な感じの男の子の方が良かったと思う。劇中には、Dick Lee作曲の歌が2曲、それから好きなバンドSerenaideの『The girl from Katong』が重要なシーンでかかっていた。


『Singapore Showcase』近作短編集傑作選(8作品)

息子のカミングアウトを受入れる母親の声で構成された『オートプシー』、日本軍に協力せざるをえなかったマレー系の証言をモノクロ・無音で見せる『シンガポール・モノガタリ』、レンズなしで撮影したという不思議で繊細な映像『ワン・デイ〜』、『Mr・カウボーイ』のトニー谷さんがトボケた感じで良かった。



【2012年05月17日(木)】

『15:The Movie』(’03) ロイストン・タン(陳子謙)監督

主に5人の不良少年たちの行動をヒップホップな味付けで描く。抗争・刺青・ピアス・自傷・自殺願望・ドラッグ。監督は1年近く彼らに密着したというセミドキュメントな作品。15才の少年が見せる幼い表情。友情に涙する姿。生々しい映像に圧倒された。投身自殺の場所を探す場面で、エスプラネード・シアターほかシンガポールの様々な場所を巡る。密輸のためコンドームにドラッグの錠剤を詰めて呑みこむシーンが強烈。この作品を観て、作風の違う『4:30』と『881』のミッシングリンクを解消できた気がする。


『12Lotus』(’08) ロイストン・タン監督

歌台のスターを目指した少女の夢と挫折を、福建歌謡『12蓮花』になぞらえたミュージカル作品。前半、展開が遅いと思ったけど、後半の精神の病んでしまった蓮花を演じる劉玲玲が素晴らしく、ぐいぐい引き込まれた。福建歌謡の真髄に触れられたような作品だった。



【2012年05月18日(金)】

『Short Lah! ロイストン・タン短編集』

僕にしか聞こえない歌を唄う『Careless Whisper』、自身の映画『15』が検閲で27カ所カットさせられたことに抗議する『Cut』に大爆笑。ネガをポジにする熱量。一方、分かり合えない父子を描く『息子たち』は沁み入る作品。


『素晴らしい大世界』(’10)ケルビン・トン(唐永健)監督

閉館寸前の写真館の娘が、古い写真を手がかりに皆に親しまれた娯楽施設「大世界」の記憶(40~70年代)をたどっていく。葛蘭の歌満載の落ちぶれた歌手・玫瑰のパート、日本軍侵攻の日の結婚披露宴のパートが印象的だった。各地の方言が飛び交う。



【2012年05月19日(土)】

『アーミー・デイズ』(’96)オン・ケンセン(王景生)監督

華人のマルコムの目線で、入隊から除隊までの兵役の全貌をコメディタッチで見せる。インド系、マレー系、福建系が、中隊を組んでワイワイやってるのが愉快。これなら入隊してみたい、と思わせる。だが、大きな事件も起きず掘り下げが足りない感じもする。
王景生監督は間文化主義の人らしいし、時代背景もあるかとは思うけど、今映画祭で色々観て来ると、この辺の骨抜き感は、当局のコントロールが効いてるのでは?と勘ぐってしまう。短編集でみた『ブランク・ラウンズ』は兵役でのいじめで精神を病んでしまった青年を描いていた。


『Singapor Short Cuts』シンガポール短編映画の十年(10作品)

ニートの青年と母親のけたたましい潮州語の罵声が飛び交う『イエスタデイズ・プレイ』、映画監督になることを夢見るリーマンのぼやき芸が光る『ゴー・ワーク』、インド系青年が語る邵氏経営の「新世界」の思い出『ザ・ニュー・ワールド』が印象的だった。


『エリック・クー・セレクション』より

『Pain』(’94)  エリック・クー(邱金海)監督

無職・求職中の華人の男が部屋にこもって自傷行為をくり返している。それは次第にエスカレートし、インド系の男を監禁し殺害するまでに至る。一方、一人の警察官が辺りを捜索している。ラストで警察官の顔がアップになるが、それは意外な人物だった。

『ゾンビ・ドッグス』(04)  エリック・クー製作、トー・ハイリョン監督

シンガ人は生きる屍だ!ゾンビ・ドッグだ!という映画批評家トーの、狂気の映画製作を捉えるドキュメント。『ゆきゆきて神軍』の奥崎を思わせるような、トー氏の執念に圧倒される。『ミー・ポック・マン』も思い起こす。



『Here』(09)ホー・ツーニェン(何子彦)監督

「アイランド精神病院」に入所する患者たち。’65年以来、死んだ英国人院長の考案で施されているビデオ治療。その治療に成功して茶会という試験にパスすれば元の社会に戻れる。患者・職員を含め、契約書にサインするショットが繰り返される。
引用されるのはゴーギャンの人生か。壁に描かれたオレンジ、ゴッホの『星月夜』、エンディングで「わたちは一体どこへ向かえば本当の自分に会えるのだろう?」と唄う古めの華語曲が流れる。シンガ国の管理・矯正社会を風刺、表象している作品のようだ。武田泰淳の小説『富士』を思い出す。




sintok2012.jpg
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