アイヌ影絵 [日本]
浅草アートスクエアで『アイヌ影絵プロジェクト ポロ・オイナ〜超人アイヌラックル伝』を観た。
新作歌舞伎ならぬ新作影絵で、ラーマーヤナではなく、アイヌカムイの超人伝説を題材にした大掛かりな作品だ。
場内は満席で、桟敷席もギュウギュウ詰め。その期待の高さが伺い知れる。インドネシアの「ワヤン・クリ」はじめ東南アジアではポピュラーなスタイルが、黒潮に乗って、北海道や東北の北方に行き着き、アイヌ民族の神様の物語を映し出す試みは、全く新しいように見えて、とても自然な流れのようにも思える。
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半神半人の超人のアイヌラックルは、日高山脈の麓にある聖なる沼カイカイウントのほとりで、宝刀の鞘に彫刻をしながら暮らしている。ある日、太陽の女神が地平線から昇るところを魔神に捉えられてしまい、助けに向かったカムイたちも全て赤ん坊に姿を変えられ、捕われてしまった。困ったカムイたちはアイヌラックルに助けを求める。アイヌラックルは、神の乗り物カムイシンタに乗り込み、魔人の城に乗り込むのだった。
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ユーモアをまぜた演出に笑いがおきる。白い大きな布に映し出された絵が拡大・縮小されたり、レイヤード(重ねる)されたり、フェイド・イン、アウトされたり、影絵とはこんなにも豊かで多彩な表現ができるのか、と驚かされる。OKIとマレウレウの音楽も素晴らしい。ただ初演というプレミアム感もあるから仕方ないのかもしれないが、35分の上演はちょっと物足りなかった。今後各地を回る時は一時間に延ばすとは言っていたけれど。
第二部ではOKIとマレウレウのライブ演奏。OKIはダブルネックのトンコリだった。CDでは聴いたことがあったが、初めてのトンコリの生音。そして、マレウレウの透き通る声。輪唱のトランス感がたまらない。
第三部はバリ島で影絵を学んだという演出家のラリー・リード、古谷野哲郎の二人を交えてのトークショー。製作過程や、裏の仕掛けを説明してくれた。
台本ではなくビジュアルから先に始まった。影絵のデザインはOKIによるもの。舞台での語りはほとんど古谷野氏によるもの。「脚本・・・というより自分が全て喋ってるから」の言葉に場内笑いが起きる。旭川のホームセンターで材料を求め、公民館の体育館でリハーサルをしたという。製作期間はおよそ一ヶ月。光源は小さいほど良く、ハロゲンライトを使っているそうだ。
観客には子供たちの姿も多く、和気あいあいとした雰囲気が漂っていた。村の祭りのような雰囲気。観客の中にアイヌの人がどのくらいいるのかわからないが、もしその血を分けた人々がこの催しに参加してるのであれば、それはそれでいい風景だなと思う。『TOKYOアイヌ』('10)という映画では、首都圏には5000人以上のアイヌ系が住んでいると言っていた。インビジブルな存在のアイヌだが、実は身近に存在し、脈々と生き続けていることを想像する。室内ではなく、夏の屋外でも観てみたい作品だった。
Kamuy Kor Nupurpe(カムイ コル ヌプルペ)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: インディペンデントレーベル
- 発売日: 2001/05/27
- メディア: CD
2011-12-21 02:22
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