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2010年度映画ベストテン [映画ベストテン]

「旅シネ」に寄稿した2010年度映画ベストテンです。





1 ブンミおじさんの森(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督/タイ)
去年一番のニュースといえば、この作品のカンヌ・パルムドール受賞だった。タイ東北部で農園を営む余命幾ばくもない男が、死を前にして前世を思い出す。土地の歴史、魂の有機的なつながりを描きつつ、映画の本質にまで迫った野心作。今年公開が決まっているので、来年のラインナップに入れるべきなのですが、あまりの映画的興奮にフライングすることをお許しください。東京フィルメックスにて。

2 溝(王兵監督/中国)
1960年、反右派闘争で粛正に合った人々の息の詰まるような穴蔵での生活。他人のゲロ(吐瀉物)を食べるほどの飢えとは。『鉄西区』の王兵監督による初の長編劇映画。テン年代の中国映画はまちがいなくこの人が牽引していくはず。フィルメックスにて。

3 白いリボン(ミヒャエル・ハネケ/オーストリア)
モノクロ、厳格で精緻な描写はカール・ドライヤーを思わせる。ファシズムの萌芽を描いている点でベルトルッチ『1900年』あたりと比較されるべき作品かも。この映画が今撮られたことに、現在のヨーロッパの雰囲気を感じ取ることは可能だろうか。

4 フローズン・リバー(コートニー・ハント監督/アメリカ)
カナダ国境を舞台に、生活苦の主婦が密入国の仕事に手を染めて行く。モホーク族の実態、密航者として中国人、パキスタン人も出てきて興味深い。なんといっても女性同士の共感を描いたドラマが素晴らしい。

5 稲作ユートピア(ウルポン・ラクササド監督/タイ)
タイ東北部の小作農の家族に「彼ら自身」を演じてもらい稲作の過程を一年かけて撮った虚実ないまぜのドキュメンタリー。計算された絵柄がすばらしく、タイ農民の過酷な現実を描く一方で、有機農法の理想、自然の恵みや美しさなどが重層的に語られているところが秀逸。ぜひ劇場公開してほしい。「ドキュメンタリー山形in 東京2010」にて。

6 息もできない(ヤン・イクチュン監督/韓国)

7 タイガー・ファクトリー(ウー・ミンジン監督/マレーシア)
養豚場で働く中華系の少女が日本への渡航費用を稼ぐために「代理母」という闇仕事をする。豚の種付けと人間の種付けが並列されたり、登場人物たちの行動が全て金で動いているのが何ともグロテスク。少女の後ろ姿はタルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』を思わせる。東京国際映画祭にて。

8 シルビアのいる街で(ホセ・ルイス・ゲリン監督/スペイン)
「映画」が出来上がる瞬間をとらえたような映画。

9 エッセンシャル・キリング(イエジー・スコリモフスキー監督/ポーランド)
米軍に捕虜になっていたアフガン兵が脱走し、見知らぬ国の雪の山野をサバイブしていく。その極限状態にある人間の姿が時に滑稽で時に神々しく見える。主演のヴィンセント・ギャロは一言も話さない。東京国際映画祭にて。

10 ぼくのエリ 200歳の少女(トーマス・アルフレッドソン監督/スウエーデン)
凛とした絵がすばらしく(CGのシーンはご愛嬌だけど)、ウイリアム・フリードキンが『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』を撮ったような感じで新鮮だった。全く前知識なく見たので、実はヴァンパイア物だと知ってのけ反ってしまったのだけれど。

そのほか印象に残ったもの。
『ビラル』(ソーラヴ・サーランギ監督/インド)
『カビールを巡る旅』(シャブナム・ヴィルマニ監督/インド)
『ラーヴァン』(マニ・ラトナム監督/インド)
『4枚目の似顔絵』(鍾孟宏監督/台湾)
『風に吹かれて キャメラマン李屏賓の肖像』(姜秀瓊&関本良監督/台湾)


2010年はここ最近では最も映画を見なかった年で、試写会にもあまり行けなかった。これといった特集上映もなく、『山形ドキュメンタリー映画祭 in 東京』『NHKアジアフィルムフェスティバル』『東京国際映画祭』『フィルメックス』で集中的にアジア映画を見るだけだったが、バラエティに富んでいて十分堪能することができた。フィルメックスでみたイ・チャンドン監督の『詩』はまたもや大傑作だったけど、今年公開が決まってるので今回は見送り。

 
2011年度映画ベストテン
2009年度映画ベストテン


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