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カビールを巡る旅 [インド・南アジア]


Sung by Shabnam Virmani

http://www.kabirproject.org/

今年のDDSはインドの作品を中心に観た。
コルカタの路地裏を舞台に盲目の両親が子育てに奮闘する姿を追った、ソーラヴ・サーランギ監督の心揺さぶられるドキュメンタリー『ビラル』、不条理な国家権力に異議を唱えるアマル・カンワル監督の作品群は別の機会に書く事にして、今回は音楽家でもあるシャブナム・ビルマニ監督の力作『カビールを巡る旅』全4部作について。(上の動画は監督の歌)

              *

カビールについては何も知らなかったのですが、映画全編に流れる彼の言葉には力強さがあり、説法や問答を聞いているような感覚になった。それに添えられた音楽、かつての道行きを思い出させる旅の風景に魅了された。

『自分の家を焼いてしまえ!私について来なさい 市場へいこう・・・』『ハンサ鳥は孤りでとび立つ この世間は喧噪 それは祭りだ 人は地面に落ちた木の葉 吹き飛ばされていづこへ 風に舞う木の葉の行方を誰が知ろうか・・・』カビールは様々に解釈され、人々に歌い継がれている。

批判覚悟でこの映画を要約するならば、「ヒンドゥとムスリムの宗教対立の融和には、カビールとブッダがヒントになるのではないか」というものだ。カビールの思想がブッダに親近性をもつという下りは知的興奮を覚えた。そのうち『ビージャク』でも読んでみたい。
以下はツイッターに書いたメモをまとめたもの。

               **

『カビールを巡る旅〜1.境界ー無限』

ヒンドゥ対イスラムの宗教対立の融和を考える監督が、両信者に広く知られる15世紀の聖人・詩人であるカビールの思想を巡る旅に出る。両信者のカビール観。その生い立ち。偶像崇拝否定(グルマニ)、カーストを否定する宗教改革者としての側面。クルーはついにワガ国境からパキスタン・カラチへ、カッワリー歌手と共鳴。流れる風景、パワフルな音楽。

*冒頭、アヨーディアの聖地についての対立が描かれていたが、その係争をめぐる判決が最近出た。
http://www.asahi.com/international/update/1001/TKY201009300546.html

『2. 誰かが聞いている』

カビールの詩は70年代に古典音楽の歌手クマール・ガンダルヴァ(1924-1992)が取り上げた事から広く知られるようになった。今回はクマールがいかにして音楽の中のカビールを受容したかを探る。クマールは11歳の頃、大ヒット映画『デーヴダース』(1935)の主題歌を歌った事で有名になった。23歳の時、結核にかかり絶望を味わう。その療養中、通りかかった乞食が歌うカビールの歌を聴く。1952年に結核の治療薬が見つかり、復活。その後、独自の哲学で音楽活動。


『3. 私の国へ』

それまで監督と旅をして来た友人たちにスポットを当てる。一人はカビールを歌う人気宗教歌手プラハラード・テンパヤ。もう一人はアメリカ出身のユダヤ系で『ビージャク』を翻訳した学者リンダ・ヘス。一行はカビールの生まれ育ったバラナシへ。
各地で歌われているカビールの詩を700編集めたというカビール教団の人物に面会。彼は監督とリンダの素性を聴き、差別的な態度をとる。お前らには何もわからんだろう、というような。カビールの思想にほど遠い態度。これが4部への伏線になっている。監督はパンジャブのアーリア・サマージだと告白。
「内」のプラハラードのエピソード。「外」からのリンダの視点。彼女はユダヤ的な価値観を嫌ってインドへ。バラナシで3年かけて『ビージャク』を英訳した。カビール解釈は幅広くある。リンダは『禅』との親近性を指摘。一行はリンダの意向でアメリカ公演へ。

『4. バザールに立つカビール』

カビールを信仰する教団にはいくつか派閥がある。教団はどうみてもカビールの思想に会わないような、ヒンドゥー儀式的なチョウカ・アルティなどをやっている。信じがたい事に、歌手のプラハラードがその教団の祭司になると言い出す。監督は懐疑と批判を向ける。
プラハラードには借金の噂もあったが、彼は教団の中入って信奉者たちを改革するのだという。監督は、外で独立して歌うのがあなたの役目では?と問う。リンダは彼の考えに一定の理解を示す。結局、一年後、彼は祭司を教団側から解雇され、元の歌い手に戻る。

仏教復興運動のアンベードガルはカビールを信奉していた可能性がある。カビールの思想は仏陀のそれと変わりないという発言する人も。ヒンドゥ教団に軍隊は必要ない・・・・最後はヒンドゥナショナリズム批判へ。


http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/10/19/fighting-buddhism/
写真、すばらしいです。
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