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SINTOK [シンガポール]

kayajam.JPG
Kaya jam, made in Singapore.



「Sintok シンガポール映画祭」開催中。(9/5~13@シネマート六本木)
公式サイト:http://www.sintok.org/



かつてシンガポールは映画の都だった。
1937年、邵仁枚と邵逸夫が「邵氏兄弟(ショウ・ブラザーズ)」を設立し、上海やインドから映画監督を招き、マレー語映画の製作・配給をはじめた。途中、日本占領期をはさみ、65年のシンガポール独立あたりまで、たくさんの映画が作られた。ライバル会社のキャセイと競合して、50〜60年代に、マレー語映画は黄金期を迎えたのだった。(59年に邵氏兄弟は本拠地を香港に移す)その辺りのことは、松岡環さんの名著であり、アジア映画の定番本である『アジア・映画の都 香港〜インド・ムービーロード』(めこん)を参照されたい。



シンガポール独立後、一時はまったく制作されなかったシンガポール映画が、近年、盛り上がりをみせているという。僕にとって、シンガポール映画は優先順位からするとどうしても後回しになってしまい、結構見逃している作品が多いので、こういう企画は本当にありがたい。東京国際映画祭のティーチ・インでおなじみの松下由美さんが企画しているので、会場の雰囲気、ホスピタリティーは折り紙付きである。

今のところ、 2/3ほど観ていますが、作品の大半が国民の8割が住むという公共住宅「HDBフラット」を舞台にしている。(公共住宅に8割が住むんなて、社会主義国みたいだ)華人特有の濃厚な家族関係、現代人の孤独、また、グローバル経済の最前線に立つシンガポール国民の凄まじいまでの競争意識、絶望的な閉塞感も皆間観られる。あの美しく刈り込まれた芝生とゴミ一つ落ちていない道路の裏側に、マーライオンやラッフルズホテルの白さとは対照的な闇があるのですね。





『私のマジック』『一緒にいて』など、評価の高いエリック・クー監督作品については別枠で書くとして、エリック・クーがプロデュースした若手三羽烏(古い言い方だ)、ロイストン・タン、ブライアン・ゴソン・タン、ブー・ジュンフェンが、今後シンガポール映画をリードしていきそうですが、中でも異彩を放っていたのがブー・ジュンフェンの短編集だった。

実は、彼の作品は、去年の東京L&G国際映画祭の「アジア短編集」というプログラムで見ていた。スペイン人の青年の性の関心事を描いた『家族の肖像』(2004)、息子の秘密を知った母親とのやりとりをバッハのフーガにのせて描いた『カトーン・フーガ(加东赋格曲)』(2007)の完成度の高さには驚かされた。アジア短編集なのになぜオール・スペイン人キャストなのだ?という疑問は、後で彼がバルセロナに留学していた時の作品だということで納得したのですが、学生の処女作が老練な監督が作るような風格を漂わせているのは不思議だった。今回、会場に現れた監督は繊細そうな話し方をする20代の今風なイケメンで、カメラの前に立つ俳優でもおかしくない風貌だった。(実際、『愛を探す子供たち』のちょい役で出ている)

高校生が一年前のデートをパソコンのチャットで回想する『Bedok jetty(勿洛码头)』(2008)、スペイン留学から帰国し、二日後に軍隊に入隊する状況の青年の心象を綴った『Keluar Baris (homecoming 散)』(2008)。華人の若者がインド人街へ友人と行ったときのことを回想する『过客(stranger)』(2008)は流れるような映像とモノローグがカーワイ映画のようだ。『Tanjong Rhu( 丛林湾)』(2008)は1993年に起きた、警察の囮捜査によって逮捕された同性愛者の事件を扱った作品。大英帝国植民地時代に持ち込まれたいわゆるソドミー法が、本国イギリスでは廃止されているというのに、シンガポールでは未だに存続しているようで、2007年にゲイコミュニティーから撤廃の動きがあったが、保守派によって廃案にされてしまったらしい。監督曰く、しかし、ここ最近はソドミー法で逮捕されることはほとんどなく、この事件も別件で逮捕されたとの事。

一つ疑問に思ったのは、『The Changi Murals』(2006)が上映されなかったこと。日帝占領下、チャンギ刑務所に収容されていたイギリス人爆撃兵スタンレー・ウォーレンが、過酷な状況の中で描いたという壁画があるらしいのですが、それを扱った作品のようだ。日本側への配慮が働いたとすれば、いらぬおせっかい、観客にとっては残念なことだ。
現在、『sandcasttle』という初の長編を製作中とのことで、楽しみではありますが、この監督は根っからの短編作家なのではないか、とも思ったりもする。


Boo junfeng blog:
http://boojunfeng.wordpress.com/





上のカヤ・ジャムは、のロイストン・タン監督作品『881 歌え!ババイヤ』ロードショウ公開の際に劇場でいただいたもの。ココナッツと玉子にバンタンリーブが加わったペースト状のもので、パンにつけて食べる。タマゴボーロを水でといだような味がする。


ロイストン・タン関連記事:http://e-train.blog.so-net.ne.jp/2007-08-13 (881)
             http://e-train.blog.so-net.ne.jp/2005-12-10-1 (4:30)




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