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世界の現状 [アジア総合]


THE STATE OF THE WORLD ロイター写真集 揺れ動く世界

THE STATE OF THE WORLD ロイター写真集 揺れ動く世界

  • 作者: ロイター・グループPLC
  • 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
  • 発売日: 2007/12/04
  • メディア: 大型本




世界の映画をリードする6人の映画作家によるオムニバス映画、『世界の現状』the state of the world (2007年)を観る。

今年のTIFF『アジアの風』部門はパレスチナのマシャラーウィ監督の特集や、この『世界の現状』があったりするせいか、「マイノリティ」「周縁」「越境者」「ディアスポラ」などを扱った作品に目がいく。コンペのガリン・ヌグロホ監督の新作はヒンドゥーのバリ島を舞台にしていたし、シンガポールのエリック・クー監督の『私のマジシャン』は中華系監督がインド・タミル系マジシャンを扱う。マレーシア映画の二つは言わずもがな。タイ映画『ワンダフル・タウン』はインド洋大津波の被害から復興をとげつつある南部の村を取り上げ、中央と南部の異質性を描いていた。香港返還後の十年を描くオムニバス『愛の十年』では、広東語と北京語が並列つながりしたり、直列つながりしていた。(ビクトリア・ピークと獅子山の対比もあった)



『聡明な人々』アピチャッポン・ウィラーセタクン監督

遺灰を河に流すためにスピードボートに乗っている遺族たち。かなり粗い粒子の画像。「昨日、夢の中で死んだ父親にあった」「(犬が近づいてくる)ナーガ神がきたよ」「あいつはラオスで有名な歌手、ラッパーなんだ」「向こう岸は暗い」など誰がしゃべっているのかわからないが、無作為な感じで音声が被る。居眠りをしている遺族にヤー・ドム(?)の気付薬を匂わせるシーンは笑っていいのか迷う。(その場面を観て、この映画は弔われている死者側から観ている風景なのでは?という考えがよぎる。ヤー・ドムをかがせているのも死者?)舞台はチベットを源泉として6カ国に渡って流れるメコン川。タイ=ラオス友好橋が見える。

『片道』アイーシャ・アブラハム監督

インド・バンガロールに住むネパール移民。35年間、警備員として暮らして来た。5回しか故郷に帰っていない。バンガロールの著しい経済発展の風景と、アジア最貧国のネーパル王国の政変のTV画像。「王族は権力争いで殺し合いをした。国王でも共産党でも国がよくなるならどっちでもいい。」というようなコメント。旅先のインドの安ホテルやレストランで下働きをするネパール人によく出会う。経営者からは、まじめで勤勉だからと聞くが、一番の理由は安い賃金で雇えるからだ。

『ゲルマノ』ビセンテ・フェラス監督

ブラジルはリオ・デ・ジャネイロに面するグアナバラ湾。ゲルマノと二人の乗り組員は小さな漁船で漁業を営むが、精油所の垂れ流しによって汚染されてしまった海では全く魚が獲れない。(日本、台湾、シンガポールの船がこの湾を汚しにやってくる・・・というセリフ)廃業しようと提案するクルーにゲルマノは耳を貸さない。ある日、船はエンジンの故障で漂流するはめに。するといつのまにか、目の前にソ連時代の世界最大級の石油タンカーが現れ、ゲルマノの漁船と衝突しそうになる。だがそれは亡霊のように消え、美しいグアナバラ湾と遠くのリオの町並みが見える。「1975年、石油タンカーが廃油を流してから闘争が始まった・・・」の文字。(正確な文章じゃ無いと思う)

『暴虐工廠』王兵監督

舞台の風景は「鉄西区」だろうか?工場の錆び付いた階段を上ってドアをあけると、部屋で一人の女が拷問されている。反革命分子の夫の情報を吐かせるためだ。(王兵監督がドキュではなく初めてドラマを撮っている)そこは1967年。王兵監督の生まれた年であり、文化大革命の時期だ。口をわらない女は工場へ移され生きたまま焼かれてしまう。そのそばでは死体を洗っている。カメラが外に出ると、現在の廃工場を解体する人夫の姿。「暴虐工場」は過去のものなのか?現在も存在するのか?

『タラファル』ペドロ・コスタ監督

草むらのバラックの中で会話する親子。(カーボヴェルデ出身の)母親は先祖から伝わる手紙と死にまつわる話をとうとうと話している。「タラファル」とは、カーボヴェルデ共和国のサンチアゴ島にある地名であり、ポルトガル植民地時代に反政府活動家たちが投獄され殺された「タラファル刑務所」の通称でもある。息子は外へ出て、一人の男と歓談し、遠くに見える白い共同住宅をみつめる。バラックの壁には、不法滞在につき出頭せよ、と書かれた書類が貼ってある。ポルトガルで生まれ育った息子でさえ、国外退去命令が出てしまう現実。これはヨーロッパじゅうで今起きていることだ。

『上海の夜は落ちて』シャンタル・アケルマン監督

上海は外灘あたりの風景。その風景に、カフェに流れる洒落た多国籍な音楽が重なる。水辺、摩天楼。最後のカットではウォーホールの『エンパイア』みたいにカメラはひとつのビルを凝視。ビルの電光パネルには「与文明同行,做个可愛的上海人」(文明とともに歩み、可愛い上海人になろう)の文字が何度も表示される。このスローガンは2004年から始まったキャンペーンらしい。

(追記)すいません。デタラメ書いてしました。最後の文章で判断してしまいました。ビルの画面に映し出されたスローガンはこちらの方が正しいと思います。
http://d.hatena.ne.jp/baatmui/20081025



今年のはTIFFは開けてみたら、けっこう秀作揃いだったような気がする。上記の映画のほか、『九月の風』は青春映画=台湾映画の期待を裏切らない手堅い感じがしたし、時代設定を96年にしたのが成功していた。オムニバス映画の『些細な事』は相当笑わせてもらった。実はパン・ホーチョン監督の映画を観るのは今回が初めて。(中華ファンがいつも買い占めてしまうのだ)知らない間に世代交代は進んでいたわけだ。一方、過去に何本か観ているがあまり食指の動かないアン・ホイ監督作品ですが、新作『生きていく日々』がとても評判よいので当日券を手に入れたものの、なぜか時間を勘違いして、ダブルブッキング。キム・ギヨンの『虫女』を観てしまった。キム・ギヨンの中では『虫女』が一番ブっとんでいたと思う。『水女』は冒頭に「1979年国際児童年」(ビューティフル・ネームですね)と冠がついていたのですが、ストーリーがいつものドロドロした「女シリーズ」なのに、ラストで吃音を克服した子供が「児童憲章」をすらすらと諳んじるシーンがあり、とって付けたような展開がむしろ衝撃的だった。国際児童年のためにキム・ギヨンに制作を依頼する見識を疑う。(セマウル運動のプロパガンダ映画と聞いてさらに驚く)



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