愛のジハード [インド・南アジア]
東京国際L&G映画祭に行くのは随分久しぶりだ。たぶん、スタンリー・クワンの『藍宇』(2001)以来、いや、もっと最近、韓国の映画を観たような気がするが、ちょっとタイトルを失念してしまった。今年はアジア映画が充実してそうなのでいくつか観ることにした。
http://www.tokyo-lgff.org/2008/index.html
(そういえば去年僕がインドに行って不在の間、「アジア・クイア映画祭」(4/14-20、2007@下北沢)というのがあったみたいだ。今回はその上映作品とダブるものもあるようだ)
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『愛のジハード』は戒律の厳しいモスリムの同性愛者たちを追ったドキュメンタリー。監督はインド出身で自身もゲイでイスラム教徒のパーヴェズ・シャルマ。またプロデューサーはユダヤ教徒の同性愛を追ったドキュメンタリー『Trembling before god』で知られるユダヤ系米国人 サンディ・ S・ドゥボウスキ。(この異教徒の組み合わせもすごい)会場では二人を交えてのトークセッションがあった。映画は、南アフリカ、エジプト、サウジアラビア、イラン、イラク、トルコ、パキスタン、インド、バングラディシュ、アメリカ、イギリス、と多方面にまたがって取材されており、6年の歳月を費やしているという。途中、やはり私は映画に出たくない、という被写体もあったりで、編集にも1年を費やしたそうだ。制作のきっかけは、9.11が発端であったという。
戒律の厳しさも国、地域、個人によって随分差があるのだが、やはり特に厳しいのはシーア派でシャリーア(イスラム法)を遵守するイランのようで、これまで多数の同性愛者が死刑、またはむち打ち100回などの刑を受けており、2005年の二人の十代の少年が死刑になったニュースは記憶に新しい。
(→http://gayjapannews.com/news/news161.htm)
また、日本でも16年の歳月をかけてもついぞ難民認定を受けることができなかったシェイダさんも、そういった迫害から逃げて来た人物の一人。結局、第三国へ出国という不甲斐ない結果に終わったのだった。いったい彼は今どこに?
(→http://www.sukotan.com/shayda/shayda_top.html)
劇中にも、イランを離れ、トルコで受け入れ先を待つ4人のイラン青年たちを捉えたパートがあった。いつ本国に強制送還されるかわからない不安と、家族、そして故郷、自分の育ったコミュニティーを捨ててしまう悲しみを描いていた。現在、4人はカナダに無事いるそうだ。
トルコにはスーフィズム(イスラム神秘主義)の伝統があって、モスリム国でも同性愛に寛容であること、またそのスーフィズムは(イスラム教浸透の要因にもなるのだが)、パキスタンやインド(そして東南アジア)へ伝播しており、16世紀のスーフィー詩人のマードー・ラール・フサインの逸話が紹介されていた。この詩人の聖者廟(タルガー)はパキスタンのラホール北東のバーグバーンプーラという所にあり、マードーはヒンドゥーの男性の名前で、フサインはムスリムの男性の名前。つまり二人の親密な「異教徒」の男二人が廟に眠っているのだとか。今も信仰者の来訪が絶えないようだ。
参考→http://indo.to/log/kahkashaan/?itemid=448
→http://koidelahor.exblog.jp/3393992/
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