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てだのふぁ [日本]

近所にある川崎市民ミュージアムで『オキナワ/カワサキ〜二つの地をつなぐ人と文化』展を見た。
http://okinawa-kawasaki.com/

長年住んでいるのに、川崎市には戦前から沖縄出身者が多く住んでいるという事実を知らなかった。(おとなりの横浜・鶴見区に通称”沖縄ストリート”なるものが存在するのは知っていたけれども)
大正4年、富士瓦斯紡績工場の発足で、沖縄から女工がたくさん集められたのがはじまりで大正13年には沖縄県人会が発足。以来、沖縄とは深い関わりをもち、現在400人ほどの会員がいるという。
綺麗な色の染織物、壷屋焼き、螺鈿の入った漆器、宮古台風被害の支援のお礼として送られた石敢當、新井白石の『南島志』、沖縄の歌を集めた『おもろさうし』などの展示があった。また沖縄に影響された川崎市在住の芸術家たち、濱田庄司、佐藤惣之助、岡本太郎などのコーナーもあった。


太陽の子 (角川文庫)

太陽の子 (角川文庫)

  • 作者: 灰谷 健次郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/06
  • メディア: 文庫



その関連イベントで沖縄映画の上映があった。『ウンタマギルー』『ホテル・ハイビスカス』は既に見た事があるので、灰谷健次郎原作の映画『太陽の子〜てだのふぁ』(1980年/浦山桐郎監督)を観る事にした。児童映画と思って軽い気持ちで観ていたのだが、内容の詰まった2時間20分の大作だった。

神戸で沖縄料理屋「てだのふぁ」を経営する両親の一人娘ふうちゃんは明るく元気な12歳の女の子。(計算してみると、ふうちゃんは自分とほぼ同世代だった)ふうちゃんのお父さん(河原崎長一郎)は心の病気を持っていて、時々発作が起きる。お母さん(大空真弓)は気だての優しい人で、お店を切り盛りしている。二人は昭和38年、駆け落ち同然でアメリカ占領中の沖縄から神戸にやってきて店を開く。物語はそこに集う沖縄出身者たちの半生を語ることで、沖縄を表象していく。

昭和の初期まで、アパートを借りるときは「朝鮮人と琉球人はお断り」だったという話、不良少年のキヨシがオキナワモノという言葉で差別される現状など、島津藩の侵攻、琉球処分から、沖縄決戦、コザ騒動、本土復帰、現代(1980年)までの歴史がわかりやすく(というか詰め込みすぎという感もあるが)描かれている。三線を弾くゴローという役で髭をはやした若い知名定男が出演していた。安里屋ユンタ、猫ユンタ、だんじゅかりゆし、などが劇中に演奏されていた。スタッフの中にに原一男、谷口豁の名前もあった。


沖縄映画論

沖縄映画論

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2008/02/26
  • メディア: 単行本



少し前に読んだ本、『沖縄映画論』(作品社)の中で、四方田犬彦が森崎東の映画に触れながら、内地の沖縄人出身者のことを「沖縄人ディアスポラ」という言葉で表現していて、ギョっとした。沖縄の歴史はそれなりに知っていたつもりだったが、今や単なる地方出身者という感覚でいたので、この言い回しは意外だった。今、彼らを特別視する人はいないと思うが、それは沖縄問題の不可視につながっているのかもしれない。森崎東監督版『野良犬』(1973年/松竹)をレンタルで借りてみると、返還前の在日沖縄人たちの日本への呪詛にも似た言葉が繰り返されていた。(カットされた部分もあるらしいが、いまひとつ沖縄少年たちの個性が見えないのが残念だった)



ふうちゃんの父親は過去の戦争のフラッシュバックに悩まされ、とうとう自らの命をたってしまう。父親の故郷の波照間島に帰り、葬式をすませたふうちゃんは、道で父親が歩く幻影を観る。そして日の丸がたなびく「日本最南端」の石碑の前で佇み、こう問いかける。「お父さん、本当の事を言うてほしい・・・」

てだのふあとは「太陽の子」の沖縄語。「太陽の子」の意味は神戸生まれの沖縄人二世のふうちゃんのことでもあるし、日本人のことでもある。父親が行方不明の時に、街の電気屋のTVの中に流れてくる昭和天皇の映像は児童映画にしては相当にラディカルだ。日本人は沖縄に何をしてきたか?未だに70%の基地を委ね、全く改善の余地もない現状。米軍による数々の事件。旧日本軍による集団自決の指示を曖昧にする最近の教科書検定。一昨年、初めて八重山を訪れたのだが、僕が学生の頃問題になっていた石垣島の白保新空港は着工し、13年にはジャンボ機が着陸できる大型空港が完成する。八重山は激変するだろう。

沖縄は日本なのか?
中国人留学生が何のてらいもなく主張する「チベットは中国」という言葉に、ここ最近、自問する日々である。旅先で知り合ったおじいに聴いたことだが、今の若者はウチナーグチ(沖縄語)が話せなくなっているという。彼らに「本当の事を言うてほしい」と言っても、もう何も返ってこないかもしれない。




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