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映像をめぐる7夜 [アジア総合]

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K君に誘われて、東京都写真美術館で開催された『映像をめぐる7夜』〜第5夜「theVoice -over 内なる映像」というイベントに行く。
あの、AlayaVijana(アラヤヴィジャナ)でホーメイを担当している山川冬樹による「インスタレーション+パフォーマンス」と聞いて、興味を引かれたのだ。

インスタレーションはスクリーンと小さなモニターTVを使ったもので、1972年から88年までの間のテレビ・キャスターの公私にわたるコメントが、サウンド・コラージュされている。スクリーンの映像は断片的なものでしかなく、時々、年代と場所を記す文字が入る。高い位置に設置されたもうひとつのモニターは砂嵐を写しているが,見かけ通り「テレビ」を象徴している。ビデオ云々というよりは立体音響によるサウンド・インスタレーションと言った方がいいかもしれない。

キャスターの声は、聞き覚えがあった。(昔、アナウンサーの声はこんな風におおむね低音で渋かったものだ。)ただ顔は出てこないので、どんな顔をしていたのか曖昧だ。
およげたいやきくん、オレたちひょうきん族、プロ野球ニュース、フィリピン・アキノ大統領へのインタビューなど、その時代を思い出させる声や音が聴こえてくる。キャスターのプライベート、実子との会話からは非常に幸せそうな家庭像が浮かぶ。だが,88年頃の広島でのとあるイベントで司会するキャスターの声は激変している。それは食道癌のためだった。サウンドは、死後数年たって見つかった膨大なカセットテープから編まれたものらしい。
80年代中盤から後半、バラエティといえばほとんどフジテレビの独壇場で、世相を反映しているようなテレビ局だった。だから「山川千秋」の名を知っている人は多いと思う。(そういえば、逸見政孝氏とバトンタッチする場面もあった。)山川冬樹氏は彼の長男だったのだ。

第二部のパフォーマンスは、そんな父親とのコラボレーションともいうべきもの。
山川冬樹は地面に届きそうな長髪と,半裸姿で登場した。電気聴診機(?)を胸に当て、自らの心音をスピーカーで増幅させる。その鼓動は自らコントロールされ、リズムを成したり、時に変拍子とも停止ともとれる信号を出す。さらに心音は裸電球に連動しており、その点滅は見る物を眩惑させる。
琵琶のように奏でられるエレキギター、全身から絞り出されるような声〜ホーメイ、そして自らの心音によるリズムトラック。そこへ、温度差のある、あの低音で渋い父親の声がサンプリングされる。表層では違和感のあるアンサンブルが、山川の肉体が高揚するにつれ、徐々に近づき、深層下で一体化する。同じDNAを受け継いだ物たちの共鳴にも聞こえたし、父親に対する抵抗、叫びにも聴こえ、一方でフロイト的な“夢”を観ているようでもあった。

そういえば、氏はアラヤヴィジャナの演奏でロボットボイスのように聴こえる、声帯を失った人が話すための「電気式人工喉頭」という道具を使っていたが、それが父親の病気に由来しているのではないかと察した。


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